「ロシアの旅」(5) 朝靄の街
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/08 19:51 投稿番号: [48943 / 73791]
「ロシアの旅」(5) 朝靄の街
バーを後にしてから、ゴーンゴーンと音がするエレベーターの中で、もし高校生の私が日本であのようなお店に入ったら即退学かな、と思って思わず冷や汗が出ました。私には初めての経験でした。横に立っている邦夫さんを見ました。でも、ビールを二杯も飲んだ邦夫さんは、気分よさそうにただ前を見ています。やがてそんな私に気付いたらしく、私をチラッと見ると、
「ん、どうした?」
私は、おもわず視線を邦夫さんからふせ、下を向いてしまいました。そして「男の人は、どうしてああいうお店に行くのかしら、平気なのかしら...」と考えると、何とも言えない、嫉妬心にも似た気持ちが全身からわき上がるのを覚えました。邦夫さんの結婚式のときもそうでした。邦夫さんは、私の初恋の人でした。だから...。
このとき、邦夫さんが私の叔父さんにあたる人だとは夢にも思いませんでした。私には、やさしく素敵な剣道の大先輩、爺の息子さん、たとえ結婚していても、10何歳年上でも、それでも私の星の王子様でした。ロシア語が話せることも知りませんでした。
部屋に帰ると、爺はお風呂に入っておりました。ホテルの部屋の窓に額をくっつけるようにして外を見ても、暗い人気のない通りと、黒く流れる河に写るまばらな明かりしか見えません。パジャマに着替えてベッドに入ってもなかなか眠れません。空調機の音がカタカタ音をたて、コツコツという時計の音ばかりが耳に響きます。そのうち爺のいびきまで聞こえてきて、「これからどうなるのかしら?」という不安が襲ってきました。
でも、いつのまにか眠ってしまいました。ひどい胸苦しさで目がさめると、窓の大きなカーテン越しに薄明かりが差し込んでおります。朝でした。一瞬、ここが何処なのかとまどいましたが、「ああ、ロシアなんだ、イルクーツクに来てるんだ」と思い直し、ベッドから飛び起きると、カーテンの向こう、窓ガラス越しのイルクーツクを眺めました。うっすらと朝靄が立ちこめている大きな河の対岸から遠くの小高い丘にかけて、まるでへばりつくようにして、映画でも見ているような町、中世のような町がびっしりと連なっております。
爺は、まだ眠ております。早く外に出たい、そんな気持ちでシャワーを浴びようと浴室に入りました。浴槽もシャワーもまるで巨人が使うような大きさです。戸惑いましたが、髪も洗って、裸にバスタオルを巻いてヘアドライヤーをスーツケースから出しているとき、爺が目を覚ましました。「あっ!」と思って身を隠そうとしましたが、爺はそんな私を見て
「何だもう起きたのか?」
そう言って枕元のスタンドの時計を見るなり、何事もなかったかのようにまた寝てしまいました。
私は急いでバスルームに戻り、ヘアドライヤーのプラグをコンセントに差し込もうとしましたが、入りません。プラグが合わないのです。「バカやっちゃった」と思いました。しかたなく濡れた髪を後に束ね、ジーンズを履いて、寝ている爺に「下へ行ってくる」と言って部屋を飛び出しました。
<後日へ続きます>
直子
バーを後にしてから、ゴーンゴーンと音がするエレベーターの中で、もし高校生の私が日本であのようなお店に入ったら即退学かな、と思って思わず冷や汗が出ました。私には初めての経験でした。横に立っている邦夫さんを見ました。でも、ビールを二杯も飲んだ邦夫さんは、気分よさそうにただ前を見ています。やがてそんな私に気付いたらしく、私をチラッと見ると、
「ん、どうした?」
私は、おもわず視線を邦夫さんからふせ、下を向いてしまいました。そして「男の人は、どうしてああいうお店に行くのかしら、平気なのかしら...」と考えると、何とも言えない、嫉妬心にも似た気持ちが全身からわき上がるのを覚えました。邦夫さんの結婚式のときもそうでした。邦夫さんは、私の初恋の人でした。だから...。
このとき、邦夫さんが私の叔父さんにあたる人だとは夢にも思いませんでした。私には、やさしく素敵な剣道の大先輩、爺の息子さん、たとえ結婚していても、10何歳年上でも、それでも私の星の王子様でした。ロシア語が話せることも知りませんでした。
部屋に帰ると、爺はお風呂に入っておりました。ホテルの部屋の窓に額をくっつけるようにして外を見ても、暗い人気のない通りと、黒く流れる河に写るまばらな明かりしか見えません。パジャマに着替えてベッドに入ってもなかなか眠れません。空調機の音がカタカタ音をたて、コツコツという時計の音ばかりが耳に響きます。そのうち爺のいびきまで聞こえてきて、「これからどうなるのかしら?」という不安が襲ってきました。
でも、いつのまにか眠ってしまいました。ひどい胸苦しさで目がさめると、窓の大きなカーテン越しに薄明かりが差し込んでおります。朝でした。一瞬、ここが何処なのかとまどいましたが、「ああ、ロシアなんだ、イルクーツクに来てるんだ」と思い直し、ベッドから飛び起きると、カーテンの向こう、窓ガラス越しのイルクーツクを眺めました。うっすらと朝靄が立ちこめている大きな河の対岸から遠くの小高い丘にかけて、まるでへばりつくようにして、映画でも見ているような町、中世のような町がびっしりと連なっております。
爺は、まだ眠ております。早く外に出たい、そんな気持ちでシャワーを浴びようと浴室に入りました。浴槽もシャワーもまるで巨人が使うような大きさです。戸惑いましたが、髪も洗って、裸にバスタオルを巻いてヘアドライヤーをスーツケースから出しているとき、爺が目を覚ましました。「あっ!」と思って身を隠そうとしましたが、爺はそんな私を見て
「何だもう起きたのか?」
そう言って枕元のスタンドの時計を見るなり、何事もなかったかのようにまた寝てしまいました。
私は急いでバスルームに戻り、ヘアドライヤーのプラグをコンセントに差し込もうとしましたが、入りません。プラグが合わないのです。「バカやっちゃった」と思いました。しかたなく濡れた髪を後に束ね、ジーンズを履いて、寝ている爺に「下へ行ってくる」と言って部屋を飛び出しました。
<後日へ続きます>
直子
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.