カント的抑制>nita2さん
投稿者: silverlining430 投稿日時: 2005/06/15 20:18 投稿番号: [10564 / 17759]
問題はカントが世界連邦を志向する思想の持ち主であったかどうかということですが、そうではなかったでしょうということです。
>そして、カントの世界共和国の消極的な代替としての
>「自由な諸国の連合」が国際連盟となり、カントの懸念を
>払拭することで緩やかな連合をより強固し、
>世界連邦に発展させようってのが世界連邦思想だと思うのですが?
ジャン・ジャック・ルソーは現実的な観点から世界連邦を否定する一方、理念としての世界連邦自体は否定していませんでした。
他方でカントはどうだったかというと、理念として世界連邦は認めるが現実として国際連盟(連合)のような形態にとどめておくべきであるという立場なのではなく、現実としても理念としても世界連邦の構想を拒否しているという点が重要です。
こうしたカントの世界国家創設拒否の姿勢は、「カント的抑制」ないしは「カント的禁欲」とも呼ばれていますが、カントもルソー同様、理念としての世界連邦構想は否定していないのでは?――とよく勘違いされがちな部分でもありますね。
カントは「自由な諸国連合」の前提として各国に共和制の採用を求めていますが、このことはつまり、まずは各国がそれぞれ道徳的な文明化を果たすことが重要であり、各諸国が道徳的文明化を達成した後は、世界連邦の基礎となる世界政府を創設し、世界の集権化をめざすよりも、各諸国がそれぞれの国家に根ざした道徳的(法)規範に基づき、自由な行動が担保される形での緩やかな連帯形態による組織化がいいだろうと考えていたためです。
いみじくもパーキンソンがカントの構想を「立憲的自由主義体制」と呼んでいますが。
カントが世界政府創設を拒否したのは、創設された世界政府の専制化を恐れてのことでした。カントは世界の政治的集権化を遂げることだけが近代化を意味しないだろうという考えの持ち主であったわけです。
nita2さんが依拠している世界連邦思想はおそらく、カントではなく、nita2さんもご紹介されていたヤスパースの方ではないでしょうか?
ヤスパースはカントが懸念し拒否した世界政府創設による中央集権化された世界体制の専制化という問題を意識しつつも、世界政府による専制化を避けつつ世界連邦を実現するにはどうしたらいいのか考えた方だと記憶しておりますので。
突然指摘して申し訳ありませんでしたが、丁寧なレスをいただき、ありがとうございました。
これは メッセージ 10560 (nita2 さん)への返信です.
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