第二次南京事件6蘇州3
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2011/12/13 18:52 投稿番号: [1316 / 2250]
『もう一つの南京事件・日本人遭難者の記録』
田中秀雄編集・解説
芙蓉書房
57〜58p
《 一同の手荷物はとっくに船着場に運び出してある。
船は十日の午前二時に租界に戻る手筈である。
それが十分たち二十分たち一時間たっても来ない。
小雨はシトシトと降り出す。東の空は明るくなるような気がする、皆気が気でない。
或いは職工らに感づかれはしまいかと思うと闇に響く靴音にも聞き耳を立てる。
万一見つかったらピストルに見舞われるは必定だ。一同の緊張は絶頂に達した。
そこにあわただしく駆け込んだのは領事館雇いの前川氏だ。
そして今領事館では領事館の巡捕のために武器も何も取り上げられ、
皆は一室に監禁されたので、自分はかねて勝手を心得ているので
窓の錠を外し脱出して注進に及んだという話。
一同はただ呆然として途方に暮れてしまった。
しかしこのままでは一刻もおれぬので互いに相励まし、
荷物の一部は廠内に入れ一部は近くの岡田氏の所に運び込んだ。
それが三時過ぎであった。
そして密かに様子を見ていると同氏邸前に最初二三人の男工だけだったが、
漸次に女工も加わって四五十人となり、日本人を叩き殺せと喚きながら
ガラス窓を開け、火をつけた蝋燭を突っ込んで見回している。
その中に一同のいるのを認めたのか戸を押し破って入ろうとする。
一同はそこを退いて奥の糀
(こうじ)
室に隠れた。
すると遂に扉を破って闖入した彼らは家宅捜索を始め、
糀室の前まで迫って来て一尺平方位の明り窓を打ち破って火を突っ込んだ。
同時にピストルが閃く。覚えず顔見合した一同は一語を発する者もない。
やがてピストルも火も引っ込ませたが、今度は外の戸を釘付けにしている。
これはたまらぬ、釘付けにした上に火を放けられたら大変だというので、
どうせ殺されるようならその覚悟でここを突破しようと言うことに一決し、
まずその前に嘆願的に救出の事を頼んで見ることにした。
そこに思いがけなくも救いの手が現われた。それは租界外の居住者政次氏である。
同氏は領事館差し回しの曳船に荷物を積み込み、
午前二時までに租界の船着場に集合するはずのところ、
小蒸気船の機関は何者のためにか破壊され動かなくなり、
やむなく自分で艪
(ろ)
を押して来たとのこと。
これで小蒸気船が待てども待てども来なかった理由もハッキリしたと同時に、
同氏から支那人を説得してもらって無事に出ることができた。
ところが一難去ってまた一難、当日から瑞豊工廠内の日本人は
皆糾察隊のために監禁されてしまった。》
つづく
これは メッセージ 1315 (kireigotowadame さん)への返信です.
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