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ズレ:分離壁とイスラエルの防衛心理

投稿者: silverlining430 投稿日時: 2004/07/18 01:07 投稿番号: [1064 / 1982]
国際司法裁判所(ICJ)が先日   、イスラエルがヨルダン川西岸に建設中の分離壁を「国際法違反」とする勧告的意見を出しました。これとの関連で現在出張中。国連ニューヨーク本部のビルは、相変わらずヘボい。勧告的意見を踏まえ、国連緊急総会開催中でございます。

しかし今回の勧告的意見は、司法判断にしては議論がし尽くされていない感があり、ちょっと雑だなぁ。

まず、イスラエル側は、分離フェンスの建設を国連憲章第51条に基づく自衛権の行使として説明しているけれど…。

憲章51条が想定している自衛権の行使は、「外国」による「領域外」から攻撃に対応することを目指したものなので、案の定、ICJは、攻撃しているのは非国家主体であるテロ組織であって「国」じゃないし、攻撃が発生している場所もイスラエルの「占領地域内」だから、憲章51条の想定外の出来事であり同規定を援用することはできないという、こてこての古典的解釈を貫き、イスラエル側の主張を覆している。

が、イスラエル側は、米国のアフガン攻撃を憲章51条の自衛権の行使として正当化した安保理決議1368と1373を同時に援用しているのだけれど、非国家主体によるテロ攻撃にも自衛権の行使を認めたこれらの決議が、今回のイスラエルの主張にとっても有効であるかどうかについては、ICJは特に考察しなかった。まぁ単純に、国連決議は個別事例に対応するためのものであって、一般適用性はないという判断からなのだろうけれど…。

しかし、非国家性・非領域性が特徴のテロ攻撃がいざ発生した際、国家性・領域性を前提とした国連憲章の自衛法理で対応できるのか?――決議1368と1373が国際社会に与えたインパクトについては、僕個人としては考察すべきだったと思う。確かに決議に一般適用性がないと形式論として結論付けることはできるかもしれないけれど、実体論としては、イスラエルが両決議で認められた「テロ攻撃に対する憲章51条の自衛権の行使」の論理に基づいて行動してしまっているわけだし。

今回判事の一人を務めたロザリン・ヒギンス女史が分離意見で、「自衛権についてのICJの主張は、まったく説得力を欠いている」と述べている。彼女は勧告的意見総体に賛成票を投じているけれど、自衛権に関する判断については別個に異を唱えたわけで。「占領地域内で発生した攻撃であった場合は、その領域内で生活する市民を防衛する権利は失われると言っているに等しい裁判所の理屈は理解不能」というかなり強い語調で。マクドゥーガルの「法の政策志向アプローチ」に影響を受けている彼女らしい発想かな。

彼女は、非国家的主体の攻撃に対する法的防御対応の論理的喪失は、テロリストのような非国家的主体であれば人道法なんてクソ食らえで、黙って攻撃くらいやがれ状態が許されることになってしまうことを危惧しているわけで。非国家的主体であっても無関係の民間人への無差別攻撃などを禁じる人道法が適用されるべきで、頑固な法実証主義による不毛な形式論が、テロリストの無法攻撃を結果的に黙認することになることをICJに警告するという趣旨のようです。

同時に彼女は、ICJとは別の、①分離壁の建設はそもそも非軍事的な措置であって武力の行使を意味する自衛権ではない ②自衛権と言うからには措置の必要性と措置により生じる被害の程度を最低限に抑える均衡性のバランスがとることが要件となっている――という2つの理由で、イスラエル側の自衛権の理屈を拒絶しています。

特に②について、分離壁の建設がグリーンラインに食い込み、パレスチナ人の生活園を寸断したため、パレスチナ人の土地が収用されたり、農地が破壊されたり、移動も阻害され、パレスチナ人患者を病院に通院させたりすることが困難になってしまった。彼女は、分離壁の建設ルートが、テロリストの侵入の防止という目的からも、パレスチナ人への被害の最小化という目的からも、妥当であったかどうか疑わしいとし、イスラエル側の主張を退けているようです。

このヒギンスの分離意見は、イスラエル最高裁の判決における論理構成と同じであり、実際イスラエルは建設ルートの変更を検討していますね。

続く。
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