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イスラームの分派のついての参考資料(1)

投稿者: nezu_nezukou 投稿日時: 2004/11/12 14:41 投稿番号: [2110 / 5091]
■ 分派と指導者

イスラーム初期には、いくつもの分派が生じました。宗教にはなぜ、分派が生じるのでしょうか。

この問に対して、正統派の神学者であれば、ただちに「誤った野心が原因」と答えるかもしれない。
「人の持つ野心、支配欲、権勢欲が、それに都合のよいあら待った信条と結びつくと分派がうまれるの
だ」と。

さらに、「預言者時代の多神教にしても同じことだった」と付け加えるかもしれない。これをイスラー
ム的に言えば、――「マッカの指導者アブー・スフヤーン(後にウマイヤ朝を築いたアーウィヤの父)
は、なぜ誤った宗教にこだわってムハンマドに反対し続けたのか。それは多神教を信じていたからでは
なく、そのほうが自分の覇権を維持するのに都合がよかったからである」。

これは、政治的な野心家が宗教を利用する、という点で、マキャべリ的名人間観に近いものといえます。
しかし、単なる野心だけでは人々をひきつけることは出来ないであるが故に、人々の心情をとらえる思
想の力も、決して軽視できません。

また、宗教思想を研究していた、故:中村元東京大学名誉教授であれば、それを「煩悩と執着が原因」
と答えるかもしれない。「その心の内に煩悩と執着があるからこそ、人の持つ野心、支配欲、権勢欲が、
それに都合のよいあら待った信条と結びつく。更に己が正しい、と、自己顕示欲が強いだけに、それに
都合のよいあら待った信条と結びつくと分派がうまれるのだ」と。そして、更に、「宗教においてはそ
れが付き物だ」と付け加えるかもしれない。――何故なら、「仏教のブッダでもそうであったが、始祖
が生存していた間でも、集団内で争いが起こっていた。また、現存の聖典では始祖の教えが残っておら
ず、始祖がいた当初からしばらくまで、その教えが口誦されていたために、本来の始祖の教えが見えな
くなっている。それはキリスト教も、イスラームも同じことである」。

つまり、本来の教えがそれぞれに都合のよいように解釈され、その理が捻じ曲げられたまま口誦され、
聖典となり、人々は自分に都合のよい教えを信じ込んでいる、盲信しているというわけです。

古いところでは、一一世紀末から一二世紀に生きたシャフラスターニーという学者が、『諸宗教と諸分
派の書』を著していますが、これを今風に言えば、比較宗教学の書と言えます。実際、各宗教・宗派の
教養の記述は客観的で、それによって当時の宗教状況がよくわかるものとなっています。ただし、彼の
分類では、「諸宗教」とは天からの啓示に発する諸宗教およびその諸派であり、「諸分派」とは人間の
考えに基づく宗教を指します。イスラームのほか、ユダヤ教、キリスト教、ゾロアスター教の諸派は前
者に入りますが、古代ギリシャ思想などは後者に含まれます。この分類には、イスラーム的な宗教観が
反映しています(ちなみに、イスラームは後にインドに王朝を建て、仏教を啓典を持つ諸宗教の一つに
数えるといったおかしな見解になっている。イスラーム的見解であるために、それをヒンドゥーと解せ
ず、仏教、儒教、道教、密教までは知見が及んでいない)。

この書には、いろいろなイスラームの分派が登場しますが、ほとんどの分派名に指導者の名が冠されて
いる点が興味深い。これはイスラーム思想から来るものでありますが、それは「神」と、指導者となる
「預言者」を(預言者が神のパイプラインになるため)、ほぼ同一視してあるところにあります。

いずれの宗教においても、優れた指導者(と思われた人材)なしに新しい宗派や教団が成立することは
ありません。イスラームの場合も、そもそも指導者の認知をめぐる問題が、分派の発生の原因となって
います。

元はと言えば、ムハンマドの後継者に誰がなるべきか、という問題点でありました。
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