理不尽について 3
投稿者: hiro1973may 投稿日時: 2005/08/08 08:11 投稿番号: [14940 / 85019]
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-これは物語ではない。
原爆の犠牲になられた旧朝鮮王族のお名前は李
(金へん+偶のつくり)殿下といい、
自決したお付武官は吉成弘中佐という。
多少の想像を加えてはいるが、まぎれもない事実である。
想像を加えなければならなかった理由は、それぐらいこの出来事が歴史の中に
埋もれてしまっているからである。
私の蔵書のうち、ほぼ三分の一は戦史と軍事関係の書物であるにも拘わらず、
思い立ってこのことを書こうと思ったら、記述はわずかに一冊しか発見できなかった。
だからたいへん不謹慎な話ではあるが、「李
(金へん+偶のつくり)」というお名前に
どういうふりがなを振っていいかもわからない。
日本の政治家は、誰ひとりとしてこの李王朝の殿下の理不尽な死を知らない。
原爆投下を正当な行為であったと主張し続けるアメリカ人も、その死を知らない。
そして、もちろん一方的な被害者である韓国国民には、
理不尽に殉じた日本軍人がいたことを、知って欲しいと思う。
爆心地の橋脚の下でじっと蹲っていたという異国の王子は、そのときいったい何を
考えていたのであろうか。
そよの国の軍服を着、よその国の落した爆弾の熱にその背中を焼きながら。
李殿下の遺骸はただちに妃殿下の待つ京城の自邸に空輸されたという。
だがおそらく、その魂魄(こんぱく)は祖国に帰ってはおるまい。
人類が核兵器の愚かしさを知り、真の不戦を誓うその日まで、彼はたぶん相生橋の橋脚の下で
理不尽の炎に背を焼きながら、今もじっと蹲っているにちがいない。
☆浅田次郎著「勇気凛々
ルリの色」より抜粋
これは メッセージ 1 (topics_editor さん)への返信です.
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