河童19
投稿者: peekaboofrom8jo 投稿日時: 2004/10/07 01:05 投稿番号: [182 / 3394]
もちろんこういう工業上の奇蹟は書籍製造会社にばかり起こっているわけではありません。絵画製造会社にも、音楽製造会社にも、同じように起こっているのです。実際またゲエルの話によれば、この国では平均一か月に七八百種の機械が新案され、なんでもずんずん人手を待たずに大量生産が行なわれるそうです。従ってまた職工の解雇(かいこ)されるのも四五万匹を下らないそうです。そのくせまだこの国では毎朝新聞を読んでいても、一度も罷業(ひぎょう)という字に出会いません。僕はこれを妙に思いましたから、ある時またペップやチャックとゲエル家の晩餐に招かれた機会にこのことをなぜかと尋ねてみました。
「それはみんな食ってしまうのですよ。」
食後の葉巻をくわえたゲエルはいかにも無造作(むぞうさ)にこう言いました。しかし「食ってしまう」というのはなんのことだかわかりません。すると鼻目金(はなめがね)をかけたチャックは僕の不審を察したとみえ、横あいから説明を加えてくれました。
「その職工をみんな殺してしまって、肉を食料に使うのです。ここにある新聞をごらんなさい。今月はちょうど六万四千七百六十九匹の職工が解雇(かいこ)されましたから、それだけ肉の値段も下がったわけですよ。」
「職工は黙って殺されるのですか?」
「それは騒いでもしかたはありません。職工屠殺法(しょっこうとさつほう)があるのですから。」
これは山桃(やまもも)の鉢植(はちう)えを後ろに苦い顔をしていたペップの言葉です。僕はもちろん不快を感じました。しかし主人公のゲエルはもちろん、ペップやチャックもそんなことは当然と思っているらしいのです。現にチャックは笑いながら、あざけるように僕に話しかけました。
これは メッセージ 181 (peekaboofrom8jo さん)への返信です.
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