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河童17

投稿者: peekaboofrom8jo 投稿日時: 2004/10/07 00:41 投稿番号: [180 / 3394]
  それから先は大混乱です。「警官横暴!」「クラバック、弾け!   弾け!」「莫迦(ばか)!」「畜生!」「ひっこめ!」「負けるな!」――こういう声のわき上がった中に椅子(いす)は倒れる、プログラムは飛ぶ、おまけにだれが投げるのか、サイダアの空罎(あきびん)や石ころやかじりかけの胡瓜(きゅうり)さえ降ってくるのです。僕は呆(あ)っ気(け)にとられましたから、トックにその理由を尋ねようとしました。が、トックも興奮したとみえ、椅子の上に突っ立ちながら、「クラバック、弾け!   弾け!」とわめきつづけています。のみならずトックの雌の河童もいつの間(ま)に敵意を忘れたのか、「警官横暴」と叫んでいることは少しもトックに変わりません。僕はやむを得ずマッグに向かい、「どうしたのです?」と尋ねてみました。
「これですか?   これはこの国ではよくあることですよ。元来画(え)だの文芸だのは……」
  マッグは何か飛んでくるたびにちょっと頸(くび)を縮めながら、相変わらず静かに説明しました。
「元来画だの文芸だのはだれの目にも何を表わしているかはとにかくちゃんとわかるはずですから、この国では決して発売禁止や展覧禁止は行なわれません。その代わりにあるのが演奏禁止です。なにしろ音楽というものだけはどんなに風俗を壊乱する曲でも、耳のない河童にはわかりませんからね。」
「しかしあの巡査は耳があるのですか?」
「さあ、それは疑問ですね。たぶん今の旋律を聞いているうちに細君といっしょに寝ている時の心臓の鼓動でも思い出したのでしょう。」
  こういう間にも大騒ぎはいよいよ盛んになるばかりです。クラバックはピアノに向かったまま、傲然(ごうぜん)と我々をふり返っていました。が、いくら傲然としていても、いろいろのものの飛んでくるのはよけないわけにゆきません。従ってつまり二三秒置きにせっかくの態度も変わったわけです。しかしとにかくだいたいとしては大音楽家の威厳を保ちながら、細い目をすさまじくかがやかせていました。僕は――僕ももちろん危険を避けるためにトックを小楯(こだて)にとっていたものです。が、やはり好奇心に駆られ、熱心にマッグと話しつづけました。
「そんな検閲は乱暴じゃありませんか?」
「なに、どの国の検閲よりもかえって進歩しているくらいですよ。たとえば××をごらんなさい。現につい一月(ひとつき)ばかり前にも、……」
  ちょうどこう言いかけたとたんです。マッグはあいにく脳天に空罎が落ちたものですから、quack(これはただ間投詞(かんとうし)です)と一声叫んだぎり、とうとう気を失ってしまいました。
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