紫陽花亭日乗

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Re: 「血の快楽」  張献忠殺人鬼伝説

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/09/17 00:58 投稿番号: [521 / 735]
可愛いから殺す

  張献忠には、ふつうの人間とは逆に、「酒に酔っている時はおとなしいが、
醒めると凶暴になり、一日でも目の前に血があふれ流れるのを見ないと、
気持ちがふさいでくる」(『蜀碧』第三巻)という、奇癖がった。
このふさぎの虫にとりつかれると、委細かまわず、身内の者でも殺してしまう。

  ある夜など、静かで何もすることがなかったところ、突然、
「今日は誰も殺す者がおらんのか」と怒鳴りだし、側近の者に命じて
妻および愛妾十数人、さらには一人息子まで殺させてしまった。
翌日、このことをケロリと忘れて、妻や愛妾を呼んだが、
もちろん誰もやってこない。
そこで側近の者が、昨夜、ご命令により殺害しましたと報告すると、
張献忠はなぜ止めてくれなかったのかと怒り出し、
こんどは側近の者から奴隷に至るまで数百人をみな殺しにしてしまった。
殺人癖ここにきわまれり、というところである。

  張献忠の意思表現および感情表現は、すべて殺すことに尽きていたから、
憎いから殺すのみならず、可愛くてもまた殺した。
ある時、頭脳明晰のうえ風采抜群の科挙トップ合格者があらわれ、
すっかり気に入った張献忠は、あれこれ引き出物をあたえるなど、
めずらしく親切にしたことがあった。

  そのあげく、彼はふと眉をひそめたかと思うと、
「わしはあいつがひどく可愛い。一目見ただけで、可愛くてたまらなくなる。
わしはあいつに会うのが怖い。おまえたちサッサとわしのためにあいつを
『収拾(ショーシ)』してくれ」
といい、部下に命じて『収拾(ショーシ)』させてしまった。
ちなみに「収拾(ショーシ)」とは、
一家眷属みな殺しをさす隠語にほかならない。

  愛されて災難にあったのは、この秀才ばかりではない。
張献忠は友だちとつきあうのが大好きで、知り合いと出会うと
夜を徹して飲みあかし、山ほど土産物をもたせて帰すのが常だった。
それはいいのだが、あとが凄かった。
お客の帰り道に部下を差し向けて待ち伏せさせ、
首を斬りとってもってこさせるのである。

  張献忠はこれらの首を長持に入れ、軍が移動するたびに車に載せて運搬した。
なぜこんなことをしたかというと、陣中で酒の相手がなくて淋しい時に、
長持から首を取り出してズラリと並べ、盃をもって酌をしてまわり、
さあさあ飲んでおくれと、
生きている者に対するように呼びかけて楽しんだのである。

  この首を相手のママゴト宴会を名づけて、
「聚首歓宴(しゅうしゅかんえん)(首たちの宴)」という。これはもう
残酷な味付けが売り物の大バーレスクという感じの話ではある。


つづく

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