チャングムの戦い 大江戸捜査網⑨
投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/01/14 00:36 投稿番号: [1631 / 6952]
翌朝、チャングム一行は月島の浜辺へ出て聞き込みを開始しました。
砂浜では一人の男が釣り糸を垂れております。チャングムが話しかけます。
「すいません。このあたりで絵を描いている人がいると聞いたのですが」
「おれっちはしがねぇ遊び人の金さんっていいまさぁ。世界を釣ってるんでやす」
なにやら微妙にわけのわからないことを言っておりますが、時代が違いますのでお引取り願いましょう。(いまさら何を言うねん)
「ちょ、ちょっと待っておくんなせぇ。旦那方がお探しの絵描きなら、いつもあちらの浜で絵を描いておりやす。ほら、やってきた」
金さんとやらの指差す方向を見ると、編み笠を深くかぶった男が浜に腰を下ろして絵を描き始めています。
「やはり、金檀園先生なの?」
走り出すチャングム。
「すいません!あなたは金檀園先生ニカ?」
一心不乱に絵を描いていた男は、筆を止め、チャングムを見上げます。
「・・・私は宗理というものですが・・・」
「え?」
違ったようです。しかしここでめげてはいけません。絵描きなら何か知っているかもしれません。気を取り直して訊ねます。
「あなたの知っている方で、朝鮮の絵描きはいらっしゃらないでしょうか?」
宗理は少し考えてから答えました。
「一昨日まで、この浜で絵を描いていた人かもしれん。かわった笠をかぶって言葉に訛りがあったなぁ」
「どんな訛りですか?」
「四谷をヨスヤと言っていたのが印象的でしたなぁ。あと茶店で十五銭、五十銭をうまく言えなかったです・・・たしか大久保の家に帰ると言っておられました」
その人が金弘道であるかどうかはともかく、朝鮮人の画家なのは間違いありません。
ようやく秋山親子と三冬が追いついてきました。
「どうでしたか、チャングムさん」
三冬の問いに首を横に振るチャングム。
「そうでしたか・・・」
「けれども、いい手がかりが得られました。大久保にそれらしき人が住んでいるそうです」
「それはよかったですね」
秋山小兵衛はじっと宗理の絵を見ていましたが、不意に訊きました。
「どこかで見たような絵だと思っていたら、お前さん、春朗って名前じゃなかったかい?」
「はい。よくご存知ですね。新しい絵と自分を発見するため、筆名も師匠も自宅も度々変えるんです」
照れながら答える宗理に、こんどは大治郎が訊ねました。
「それにしても、今描いてらっしゃる絵は狩野派の模写に見えますが」
「はい。なぜか月島に来ると模写をしたくなるんです。ときにはふざけた模写や春画も描きたくなります」
200年ののち、月島の近く有明で同じようなことが盛大に行なわれるとは、この宗理――そう、のちの葛飾北斎――でさえ予想しなかったでしょう。(できるかい!)
(金さんに冷たいのは、たんに作者が松方弘樹の金さんを大根だとおもっているせいです)
砂浜では一人の男が釣り糸を垂れております。チャングムが話しかけます。
「すいません。このあたりで絵を描いている人がいると聞いたのですが」
「おれっちはしがねぇ遊び人の金さんっていいまさぁ。世界を釣ってるんでやす」
なにやら微妙にわけのわからないことを言っておりますが、時代が違いますのでお引取り願いましょう。(いまさら何を言うねん)
「ちょ、ちょっと待っておくんなせぇ。旦那方がお探しの絵描きなら、いつもあちらの浜で絵を描いておりやす。ほら、やってきた」
金さんとやらの指差す方向を見ると、編み笠を深くかぶった男が浜に腰を下ろして絵を描き始めています。
「やはり、金檀園先生なの?」
走り出すチャングム。
「すいません!あなたは金檀園先生ニカ?」
一心不乱に絵を描いていた男は、筆を止め、チャングムを見上げます。
「・・・私は宗理というものですが・・・」
「え?」
違ったようです。しかしここでめげてはいけません。絵描きなら何か知っているかもしれません。気を取り直して訊ねます。
「あなたの知っている方で、朝鮮の絵描きはいらっしゃらないでしょうか?」
宗理は少し考えてから答えました。
「一昨日まで、この浜で絵を描いていた人かもしれん。かわった笠をかぶって言葉に訛りがあったなぁ」
「どんな訛りですか?」
「四谷をヨスヤと言っていたのが印象的でしたなぁ。あと茶店で十五銭、五十銭をうまく言えなかったです・・・たしか大久保の家に帰ると言っておられました」
その人が金弘道であるかどうかはともかく、朝鮮人の画家なのは間違いありません。
ようやく秋山親子と三冬が追いついてきました。
「どうでしたか、チャングムさん」
三冬の問いに首を横に振るチャングム。
「そうでしたか・・・」
「けれども、いい手がかりが得られました。大久保にそれらしき人が住んでいるそうです」
「それはよかったですね」
秋山小兵衛はじっと宗理の絵を見ていましたが、不意に訊きました。
「どこかで見たような絵だと思っていたら、お前さん、春朗って名前じゃなかったかい?」
「はい。よくご存知ですね。新しい絵と自分を発見するため、筆名も師匠も自宅も度々変えるんです」
照れながら答える宗理に、こんどは大治郎が訊ねました。
「それにしても、今描いてらっしゃる絵は狩野派の模写に見えますが」
「はい。なぜか月島に来ると模写をしたくなるんです。ときにはふざけた模写や春画も描きたくなります」
200年ののち、月島の近く有明で同じようなことが盛大に行なわれるとは、この宗理――そう、のちの葛飾北斎――でさえ予想しなかったでしょう。(できるかい!)
(金さんに冷たいのは、たんに作者が松方弘樹の金さんを大根だとおもっているせいです)
これは メッセージ 1630 (toapanlang さん)への返信です.
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