朝鮮を笑う

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斜め上の雲 100

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2007/01/18 11:05 投稿番号: [1925 / 2847]
  十月十日、北朝鮮では朝鮮労働党創建五十五周年の祝賀行事がおこなわれた。
  そのようすは韓国でもテレビ放映され、また、民主化運動家、進歩的知識人のほかハンギョレ新聞といった露骨に親北姿勢をとっているマスコミがまねかれた。
  帰国したかれらは連日北朝鮮のニュースを報じつづけた。その中身は七〇年代の日本の進歩的知識人やマスコミの引き写しであったといっていい。つまりは、北を地上の楽園としてまばゆいばかりの極彩色に描きだしたものであり、飢餓や人権問題についてはついにふれることがなかった。
「あれほどわが国の軍事政権とやらに反対した連中が、ほんものの軍事独裁には反対しないのか」
  錫元は苦笑したが、金日成広場でおこなわれた軍事パレードのテレビ放映をみて愕然とした。まねかれている韓国の進歩的知識人たちが楽しそうにパレードをみているのである。
(この連中は、この武器の鉾先がどこに向けられているのか知っているのか)

  もはや親北化はみさかいのないものになったとみた錫元は、ついに意を決した。かれは辞表を懐にいれ、青瓦台に大統領をたずねた。
「北朝鮮に穏健な対応をとるのはよろしいでしょうが、このままではわが国が世界から犯罪国家をかばう同類とみられかねません」
  と、錫元はいった。たしかに、北朝鮮は麻薬の輸出やスーパーKとよばれる偽ドル札の製造をしている。世界の基準にてらしても犯罪国家であるといっていい。
「かれらの犯罪行為にふれず無条件に援助をおこなうのであれば、それは国際社会に対する犯罪幇助でしかありません」
  そのとおりであった。韓国はまるで慈母のように北朝鮮に無条件で多くの資金や食糧を援助している。
「南北会談で南北離散家族の再会事業が決定されましたが、いまだ囚われの身である国軍捕虜たちはどうなるのですか。それにふれもせず長期非転向囚や辛光珠ら北の工作員らを無条件で送還したのは明白な利敵行為です」
  そこまでいったとき、黙ってきいていた金大中は急に声をあらげていった。
「軍人が政治について語るな!黙りたまえ」
「いいえ、黙りません。虜囚となった自国民を見捨てて敵の工作員を英雄のようにもちあげている現状をみれば、平和統一どころか、ただ北に同化吸収されて国民を塗炭の苦しみにおとしいれるだけです。大統領閣下は」
  ――今のわが国の状況をご存知か。
  と、錫元はいった。南北の和解を信じこみ限度なく北をもちあげている世論のあやうさの先には、大韓民国の消滅が待っているとしかおもえない。
  錫元はそこまでいうと、大統領執務室をでていった。

  金錫元は、この年の十二月末日をもって退役した。

  二〇〇三年二月、南北首脳会談の直前に北朝鮮へ五億ドルという秘密支援がおこなわれていたことが発覚した。
  現代財閥を経由してのものであり、会談を実施するためにおこなわれたという可能性がたかかった。現代は以前から北への支援等をおこなっており、とくに九八年には牛五百頭をトラックにつんで会長みずから板門店経由で入北し世間をおどろかせた。創業者の鄭周永会長が北鮮の出身であり、また金剛山の観光開発について利権をいち早く確保しようというねらいもあったという。
  つまりは、会談もノーベル賞も金で買ったとすらいっていい。
(それで、大統領はあんなに怒ったのか)
  痛いところをつかれて逆上したのであろう。錫元はそうおもった。
  特別検事が任命されこの事件の捜査がはじまったが、盧武鉉大統領は捜査延長を許可せず、事実上事件を闇にほうむった。
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