Re: 斜め上の雲 8
投稿者: toapnglang 投稿日時: 2006/10/15 17:46 投稿番号: [1828 / 2847]
金泳三は、日本に対しての過去を清算しようとするだけでなく、自国の歴史についても果敢に清算をおこなおうとした。
九五年十二月三日、一九七九年の粛軍クーデターについて全斗煥元大統領を反乱首謀罪の容疑で逮捕し、その六日後には収賄罪でも起訴したのである。盧泰愚前大統領はすでに十一月に収賄容疑で逮捕されている。
だが、全世界をおどろかせたのはこのあとであった。
金泳三は、十二月十九日に八〇年の光州事件を処断するため光州事件特例法と称される一連の法案を成立させ、全を反乱首謀罪、盧を反乱重要任務従事罪などで起訴したのである。
つまりは、事後立法により超法規的に遡及して事件をさばこうとしたのである。
そのやり方に全世界の法学者たちはあきれるしかなかった。
一方、韓国内の世論の反応は悪くなかった。むしろ歓迎したといっていい。
「正しい裁きのためには、時効や法律なんて関係ないんだ」
世実は小躍りしていった。正義を追求するためには区々たる法など何のことがあろうか。
この年、かれはフリージャーナリストとして世に出ていた。学生時代の運動実績がものをいい、とくにパソコン通信の普及にしたがって注目されるようになっていた。
結局、全は死刑判決、盧は収賄罪のほうで懲役二十二年という判決がくだったものの、数年後には両者ともに恩赦で釈放された。このあたりは、軍事政権時代に幾度となく死刑判決を受けながらことごとく恩赦などで減刑もしくは釈放された金大中をおもわせる。人治によって法治をなし崩しにするというのはこの民族の性癖なのであろうか。
このように、事後立法をなんのためらいもなくおこなうという、法治の精神を否定した行為についてはこれ以降にも例をみることになる。
この年は、韓国だけでなく日本も多忙な年であった。
一月十七日早朝、淡路島を震源とした大地震が発生したのである。六千四百名にもおよぶ死者と四万四千人の負傷者を出し、未曾有の大災害となった。
この朝、大学の同窓生とあう約束をしていた世実は地下鉄にのるため外へ出た。
「いいニュースです」
地下鉄の車内で売り子がそうさけんで新聞を売っていた。世実は不審そうにそれをのぞきこんだ。一面には地震を伝えるニュースがあった。
「えらいことになったなぁ」
同窓生にあった世実は、最初にそういった
「うん。いい気味だ」
「天誅だな」
かれらは、頬をキムチ色にそめてさえずりだした。
「いい加減にしないか!」
友人の一人が叫んだ。
「今まで黙っていたが、おれの外祖母は日本人だ。親戚の多くは神戸にいるんだ」
学生時代まったくめだたなかったその男はまくしたてた。
「いまだに連絡もつかず安否もわからない。他人の不幸をよろこぶのが韓国人であるというなら、おれは韓国人でいたくない」
その剣幕に、一同はただ沈黙し頭をたれるしかなかった。
九五年十二月三日、一九七九年の粛軍クーデターについて全斗煥元大統領を反乱首謀罪の容疑で逮捕し、その六日後には収賄罪でも起訴したのである。盧泰愚前大統領はすでに十一月に収賄容疑で逮捕されている。
だが、全世界をおどろかせたのはこのあとであった。
金泳三は、十二月十九日に八〇年の光州事件を処断するため光州事件特例法と称される一連の法案を成立させ、全を反乱首謀罪、盧を反乱重要任務従事罪などで起訴したのである。
つまりは、事後立法により超法規的に遡及して事件をさばこうとしたのである。
そのやり方に全世界の法学者たちはあきれるしかなかった。
一方、韓国内の世論の反応は悪くなかった。むしろ歓迎したといっていい。
「正しい裁きのためには、時効や法律なんて関係ないんだ」
世実は小躍りしていった。正義を追求するためには区々たる法など何のことがあろうか。
この年、かれはフリージャーナリストとして世に出ていた。学生時代の運動実績がものをいい、とくにパソコン通信の普及にしたがって注目されるようになっていた。
結局、全は死刑判決、盧は収賄罪のほうで懲役二十二年という判決がくだったものの、数年後には両者ともに恩赦で釈放された。このあたりは、軍事政権時代に幾度となく死刑判決を受けながらことごとく恩赦などで減刑もしくは釈放された金大中をおもわせる。人治によって法治をなし崩しにするというのはこの民族の性癖なのであろうか。
このように、事後立法をなんのためらいもなくおこなうという、法治の精神を否定した行為についてはこれ以降にも例をみることになる。
この年は、韓国だけでなく日本も多忙な年であった。
一月十七日早朝、淡路島を震源とした大地震が発生したのである。六千四百名にもおよぶ死者と四万四千人の負傷者を出し、未曾有の大災害となった。
この朝、大学の同窓生とあう約束をしていた世実は地下鉄にのるため外へ出た。
「いいニュースです」
地下鉄の車内で売り子がそうさけんで新聞を売っていた。世実は不審そうにそれをのぞきこんだ。一面には地震を伝えるニュースがあった。
「えらいことになったなぁ」
同窓生にあった世実は、最初にそういった
「うん。いい気味だ」
「天誅だな」
かれらは、頬をキムチ色にそめてさえずりだした。
「いい加減にしないか!」
友人の一人が叫んだ。
「今まで黙っていたが、おれの外祖母は日本人だ。親戚の多くは神戸にいるんだ」
学生時代まったくめだたなかったその男はまくしたてた。
「いまだに連絡もつかず安否もわからない。他人の不幸をよろこぶのが韓国人であるというなら、おれは韓国人でいたくない」
その剣幕に、一同はただ沈黙し頭をたれるしかなかった。
これは メッセージ 1826 (toapanlang さん)への返信です.
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