朝鮮を笑う

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斜め上の雲 7

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/02/13 01:36 投稿番号: [1185 / 2847]
  兪成哲作戦局長を作業責任者としたチームが、作戦に検討をくわえ、朝鮮語への翻訳作業を終えたのは1ヵ月後のことであった。
  完成した作戦計画書はすぐに首相金日成にわたされた。
「2ヶ月でかたをつける。アチソン声明によって美国は介入してこまい」
  計画書を一読した金日成は姜健総参謀長を見ていった。作戦の成否はアメリカの対応にかかっているといっていい。
「はい。地・空の戦力はともに南を圧倒しております。介入する気があっても間にあわないでしょう」
  総参謀長は即座に答えた。
「よろしい」
  首相は作戦計画書に裁可のサインをした。攻撃開始日は6月25日の午前4時とさだめられた。

  金日成は、謀略を重視した。
  しかも謀略は担当機関だけにまかせることをせず党の全精力をかたむけた。開戦にいたるまでは徹底して平和を模索するかのような言動をとるという点で、東側特有のやりかたであった。
  たとえば4月には北朝鮮各地で人民の自発的行動による平和擁護アピール署名運動がおこり、6月上旬には最高人民会議の常設委員会が「平和的祖国統一推進」と号して南北総選挙の実施を提案した。
  すべて偽装工作であった。この間、韓国軍の機能はねむったがごとくうごいていない。

  とはいえ、たれもが油断していたというわけではない。
  情報部の白善菀局長や金鐘泌中尉、粛軍による除隊後嘱託として情報局に勤務していた朴正煕元少佐は、北の動向をほぼつかんでさかんに警告をつづけていた。
  であるのに、政府の無反応はどうであろう。北の平和攻勢を額面どおり信じきっていたほどおろかではないであろうが、米軍の楽観的な観測に引きずられていたということはいえるかもしれない。
  ひとついえるのは、李承晩をはじめ政府の要人たちに覚悟が不足していたということである。

  はなしは粛軍まえにさかのぼる。
  韓国軍が連隊ごとに独立採算制をとり食いぶちをかせいでいることは以前にふれた。そのなかには米ソ軍政当局の合意のもとで成立した北との物々交換の交易もあった。アメリカ産の薬品や自動車タイヤなど軍需物資とされるものを輸出し、スケソウダラを輸入するというものであった。
  着任したばかりの第1師団長はこれをみて激怒した。
「国防上の利害をわかっているのか」
  しかも幹部による利益の着服や横流しがあり、そのうち赤化分子の手によってすくなからぬ資金が南労党の活動資金にあてられているという。
  これはもはや利敵行為ではないか、とかれはその非を李承晩大統領に直言した。
  面と向かって批判されたことで李承晩は逆上した。
  師団長は即刻解任され予備役に編入された。一種の火病といっていいかもしれない。

  また、米軍が持ちこんだバーやキャバレーに入りびたる将校らがふえ、あいかわらず日本式の軍紀による質素かつ峻厳な兵営生活を維持する下士官や兵たちの怨嗟の的となった。
  とうてい敵国を前面にかかえている覚悟があったとはいえないであろう。
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