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  続き

投稿者: usagigamemaimai 投稿日時: 2004/06/30 01:31 投稿番号: [1388 / 7270]
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  もう一度自然史と比照することを許されるならば、かの方面では松とか笹とか雀とかいうような朝夕見なれきった物でも、ていねいにその状態を叙説すると、精密だと評せられるまでに学問は進んでいる。これに反して従来の世間話からわずかに一歩しか進んでいない世相研究においては、もしもそんなことをすれば馬鹿々々しいといって、耳を傾ける者が一人もなくなるであろう。
  自分がこの著においていくぶんか論評式の筆を遣ったのは、こうでもしなければこのありふれた世情の事実に、改めて読者の注意をひくことができないからの窮策であって、決して資料の乏しいのを補おうというためではなかった。資料はむしろ過多というまでに集積していた。ただ方法がつたないゆえに甲乙丙を分類比較して、その進化の径路を一目に明瞭ならしむることをえなかっただけである。それができないというのはフオクロアとしては失敗である。
  〜略〜
  明治大正の新たなる世相は、たったこればかりかと難詰する人も恐らくはあろう、それも万々承知であり、ことに最近のいわゆるモダン撮りには、自分も相応に悩まされている一人である。それを略したのは自分が不調法であるのと、すでに多数の通または大家があるのと、議論が簡単に決しそうもないのと、三つの原因に基づいている。いま一つは都市があまりに多くの問題を提供しているので、これを制限する意図もあった。
  人間の数なり利害の大きさから言えば、もう少し田舎の事物を多く説いてもよいのであったが、田舎では書物は町から携え還る「みやげ」(原文は「」ではなく傍点)のように思っている人が多い。それゆえに自然に話がそのほうに傾きがちなのである。これに対立していま一つ、都市の人に読ましめるための地方書があってよいと思う。何にもせよ問題がこれでもまだ散漫で、細かな地方の生活事情には及びがたく、一箇暗示の書のごとくなってしまったのは、著者の最初からの志ではなかったのである。
  この書の編纂については中道等、桜田勝徳の二君が大いなる援助を与えられた。それが十分なる成績をもって、二君せっかくの好意に答ええなかったのは、ことに自分の遺憾に思うところである。(昭和五年十二月   柳田國男)

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  ↓東洋文庫HP

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