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満韓を視察して073

投稿者: dylake2r5j1 投稿日時: 2004/06/12 21:23 投稿番号: [1229 / 7270]
した。しかしながらこれが運用によって受くるところの国民の利害関係は、殆ど識者全般から無視されて居るではないか。領事裁判制度の撤廃の為に大急ぎで法典は作ったけれども、国民の法律生活の内容は極めて貧弱なものである事も今更言うを須いない。もっとも我国は維新後急いで欧羅巴の文物を入れ、これと歩調を合わせねばならぬという特別の必要があったから、まず以って表玄関を大急ぎで飾って、外国より受くる不当の物質上並びに精神上の圧迫を排除する口実とせねばならなかった。例えていうならば、夜会に出るには燕尾服が必要であるというので、急いでこれは新調したけれども、下着の垢じみたものまで作りかえるの余裕がなかったというような有様である。外国の仲間入りをして無理に大きな顔をしようという時代には、それも必要であったろう。しかしながら今日はもはやこの態度を改めて一歩を進むべき時代となったのではあるまいか。木綿の表に絹の裏をつけるのが江戸っ児の誇と聞いておるが、江戸っ児に限らず潔癖なる一般の日本人としては、上衣に少しの垢がついても、少くとも褌だけは毎日洗濯した者を着けるべき筈である。何ぞ独り政治だけが、表面のみの修飾に急して実質の充実を計らざること今日の如く甚しきや。今日まで我国の政治家は日本帝国の玄関を飾る為に従来随分と骨折ったけれども、派手向き一方の功を急いだ結果、又随分人民の〈実益〉を無視したことも少なくないと思う。地方官などの中には、いたずらに在任中の功績を残さんとてにや、それ築港だとか、それ会堂だとか、随分突飛な大金を不急の事業に投じて悔なかった者も少くないと聞いて居る。又中央政府としても、派手な大きい仕事の成績を挙ぐる為に実際上の人民の利害を無視した事はこれまで決して稀ではない。この頃はあまり問題にならぬようだが、かの足尾銅山の鉱毒事件〔一八九〇(明治二三)年から一九〇七年まで、社会問題となった渡良瀬川流域の公害事件〕などについても、当局者の中には、被害
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