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坂の上の雲 日清戦争 ②

投稿者: whiterose20051 投稿日時: 2006/06/08 00:25 投稿番号: [2817 / 3669]
やがて日本が徳川家というただ一軒の家の権力を永久に守るために
対外関係をきりすて、鎖国をしたころ、ヨ−ロッパにあっては
30年戦争がつづいている。

以後、日本には奇蹟のような平和がつづいたが、しかしヨ−ロッパ
はそのまま戦争の歴史であり、さらに国富の増大のための植民地獲得競争
の歴史であった。

この間、ヨ−ロッパではあらゆる方面の「人智」がいよいよ発達した。

たとえば国家が君主のもちものであるという性格が変質し、君主権が
後退し、国民の国家というものにかわってゆく

とはいえあいかわらずの帝国主義はつづくが、そういう国家的利己主義も、
国際法的にも思想的にも多くの制約をうけるようになり、
いわばおとなの利己心というところまで老熟した時期、「明治日本」が
このなかまに入ってくるのである。

「明治日本」というのは、考えて見れば漫画として理解したほうが早い。
すくなくとも、列強はそうみた。
ほんの二〇余年前まで腰に大小をはさみ、東海道を二本すねで歩き、
世界中のどの国にもないまげと独特の民族衣装を身につけていたこの国民が
いまはまがりなりにも、西洋式の国会をもち、法律をもち、ドイツ式の陸軍と
イギリス式の海軍をもっている。

「猿まね」と、西洋人はわらった。
模倣を猿というならば、相互模倣によって発達したヨーロッパ各国民こそ老舗
のふるい猿であるにちがいなかったが、しかし猿仲間でも新点の猿は笑いもに
なるのであろう。

自分こそ猿ではなく、世界の中華であるとおもっている清国は清国で、日本人の
欧化をけいべつした。
もっとも日本人をけいべつしたのは、大清帝国の文明を信じ、その属邦でありつづけようとする
朝鮮であった。

朝鮮は日本に対し「倭人なるものは唾棄すべきことにおのれの風俗をすてた」
というそれだけの理由で日本を嫌悪し、日本の使節を追い返したことさえある。

明治初年の征韓論は、そういう、双方のこどもじみた感情問題が、口火となった。

いずれにしても、維新後国をあげて欧化してしまった日本と日本人は、先進各国から
みれば漫画にみえ、アジアの隣国からみれば笑止な、小面憎い存在としてしかみえず
どちらの側からも愛情や好意はもたれなかった。

しかし、当の日本人と日本人だけは、大まじめであった。
産業技術と軍事技術は、西洋よりも四百年おくれていた。

それを一挙にまねることによって、できれば、一挙に身につけ、それによって
西洋同様の富国強兵のほまれを得たいとおもった。

いや、ほまれというようなゆとりある心情ではなく、西洋を真似て西洋の力を
身につけねば、中国同様の亡国寸前の状態になるとおもっていた。

日本のこのおのれの過去をかなぐりすてたすさまじいばかりの西洋化には、日本帝国
の存亡が懸けられていた。

西洋が興隆したそのエネルギ−源はなにか、
と言う点では、日本の国権論者はそれが帝国主義と植民地にあるとみた。

民権論者も「自由と民権にある」とは言いつつも多くのものが帝国主義をも
あわせて認めた。

帝国主義と自由民権運動は渾然としていて西洋諸国の生命であると見、
当然ながらそれをまねようとした。

西洋の帝国主義はすでに年季を経、複雑で老獪になり、かっては強盗であったものが
商人の姿をとり、ときに変幻してヒュ−マニズムのすがたをさえ仮装するまでに
熟していたが、日本のそれは開業早々だけにひどくなまで、ぎごちなく
、欲望がむきだしで、結果として醜悪な面がある。


坂の上の雲   第2巻   P30   司馬   遼太郎著   文春文庫
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