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坂の上の雲 日清戦争 ①

投稿者: whiterose20051 投稿日時: 2006/06/07 19:44 投稿番号: [2815 / 3669]
日清戦争とは、なにか。
「日清戦争は、天皇制日本の帝国主義による最初の植民地獲得戦争である」
という定義が、第二次世界大戦のあと、この国のいわゆる進歩的学者たちのあいだで
相当の市民権をもって通用した。

あるいは
「朝鮮と中国に対し、長期に準備された天皇制国家の侵略政策の結末である」
ともいわれる。

というような定義があるかとおもえば、積極的に日本の立場を認めようとする
意見もある。

「清国は朝鮮を多年、属国視していた。さらに北方のロシアは、朝鮮に対し、
野心を示しつつあった。日本はこれに対し、自国の安全という立場から
朝鮮の中立を保ち、中立をたもつために朝鮮における日清の勢力均衡をはかろう
とした。が清国は暴慢であくまでも朝鮮に対するおのれの宗主権を固執しようと
したため、日本は武力に訴えてそれをみごとに排除した。」

前者にあっては日本はあくまでも奸悪な、悪のみに専念する犯罪者のすがたであり、

後者にあってはこれとうってかわり、英姿さっそうと白馬にまたがる正義の騎士のようである。

国家像や人間像を悪玉か善玉かという、その両極端でしかとらえられないというのは、
いまの歴史科学のぬきさしならぬ不自由さであり、その点のみからいえば、歴史科学は近代精神をよりすくなく
しかもっていないか、もとうにも持ち得ない重要な欠陥が、宿命としてあるようにもおもえる。

他の科学に、悪玉か善玉かというようなわけかたはない。

例えば水素は善玉で酸素は悪玉であるというよなことはないであろう。

そういうことは絶対にないと言う場所ではじめて科学というものが成立するのだが、

ある種の歴史科学の不幸は、むしろ逆に悪玉と善玉とわける地点から成立してゆくというところがある。

坂の上の雲   2巻   P26   司馬   遼太郎   文春文庫
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