喫茶室「一服汁」

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街道を逝く 台湾奇行 10

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/07/15 02:06 投稿番号: [8341 / 19672]
  その日は、バスに乗って嘉義にゆき、そこからタクシーに乗って関子嶺にゆき泊まった。
  関子嶺は台南の北東にあり、温泉郷として有名である。台湾には温泉が多いが、とくにここの温泉は泥湯でしられている。
「これ以上美人になったらどうしよう」
  そういいながらチャングムの頬は緩みっぱなしである。文字どおり「美人之湯」があり、泥パックで美容によいという評判である。

  翌日は、車に乗りさらに北にむかった。途中で鉄道の線路と交差した。
「阿里山森林鉄道ですね」
  朴やんが地図を広げていった。右手のほうには阿里山が遠くにみえる。そのむこうがわにひときわ高い山が見えた。玉山である。
  台湾の最高峰であるこの山は標高三千九百五十二メートルであり、日帝時代は日本の領土内でもっとも高い山であった。そのため、
「新高山(にいたかやま)」
  とよばれた。
  太平洋戦争の劈頭をかざった真珠湾だまし討ちにおいて、開戦の暗号は、
「ニイタカヤマノボレ」
  であったが、この山にちなんでいる。青山里や鳳悟洞で大勝した光復軍に代表されるように、日帝に対してねばりづよく闘争をつづけたウリミンジョクとちがって、骨の髄まで日帝の洗脳を受け侵略の手先となった台湾人にふさわしいはなしである。
  余談となるが、いまでも靖国神社には阿里山の檜がつかわれているという。もし日本の自衛隊や海上保安庁に殉職者が出た場合、かれらの位牌もその檜でつくられ祀られることであろう。

  車はさらに北上する。
  運転手はたえず何かをかんでおり、時おり窓の外にぺっと吐く。何をかんでいるのかきくと、
「ビンラン」
  といった。檳榔の熟していない実を割って練り石灰と包んだものであり、ちょうどかみ煙草のようなものである。
  かんでいるとつばがわく。それを路上に吐き捨てるのである。
「ペンキじゃなかったのね」
  チャングムが合点のいった表情でいった。路上がところどころ赤くなっていたのは檳榔をかんだつばを吐き捨てたせいであったのである。
  こんなところにも台湾の民度の低さが出ているといっていい。ウリナラでは古来、路上につばどころかちりひとつ落とすことはなかった。朝鮮時代には各家庭にトイレも普及していたし、日本のように良家の婦女子が路上で堂々と用を足すようなことはなかった。

  埔里についた。
  山のふもとにあるこのまちは台湾随一の水質をほこり、紹興酒の名産地として知られている。日帝時代は製紙業もさかんであった。
  紹興酒を製造している埔里酒廠をおとずれた。
「紹興酒って紹興でつくっているんじゃないんですか」
  チャングムの疑問ももっともである。本来紹興酒とは中国の浙江省紹興市付近でつくられる黄酒だけをさす。
「それじゃ、ここの紹興酒ってパチモンじゃない」
  たしかにそうである。なにやらコピー商品、海賊版商品で悪名の高い台湾らしさがよくでており、むしろゆかいですらある。
  この酒廠では、紹興酒でつくったアイスキャンデーも売っている。チャングムが買って食べた。
「う゛ー。まじゅい」
  売店の店員の前ではっきりといいきった。ものごとに怖じず、他人の家で食事をよばれてもまずいといいきるウリミンジョクらしい率直さである。礼儀の正しさでは韓民族の右に出るものはいないといわれているとおりであろう。
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