喫茶室「一服汁」

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街道を逝く 台湾奇行 7

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/07/06 22:46 投稿番号: [7786 / 19672]
  高雄市内にもどったあと、夜市にでかけた。
  市内には夜市がいくつかあるが、最大のものは高雄駅南側の六合夜市である。
  台湾人は、夜市をこのみ帰宅が深夜になっても気にしない。それどころか家族そろって夜市にゆく。
  こういった享楽的な姿勢は、その場さえよければあとはどうでもよいという刹那的なものであり、韓国人にはとうていまねのできないものである。
「あの屋台をみてください」
  チャングムのさす方をみた。夜市の東端の路上に、
「高麗泡菜」
  という文字と太極旗を看板に書いた屋台があった。キムチのことである。
「ここまできてキムチでもありますまい」
  朴やんが駆けだそうとするチャングムをとめた。なにもウリナラのキムチ以外を食べることもない。だいたい、なにが入っているかわかったものでもない。

  すこし観察してみることにした。
  現在、東南アジアでは韓国文化ももてはやされているという。そのあらわれを実際にみることができる機会ではないか。
  私たちは向かいの屋台でミルクフィッシュの入ったお粥を買い、テーブルについてキムチ屋台のようすを観察しはじめた。

  二十分経った。

  たれも買おうとしない。むこうがわにある蛇肉屋には何人か客の出入りがあるというのに、キムチ屋台の前はみんな素通りしてゆく。
「なんで誰も買わないのよ。かんしゃくおこる」
  チャングムがすこし火病りかけた。
  キムチは世界でもっともすぐれた発酵食品である。売れないはずはない。だが、あの屋台のキムチは、日本人のつくるキムチのように偽ものではないのだろうか。
  それとも、台湾人にはすぐれた味覚がないためキムチを理解できないのかもしれない。
  持参していたメッコールをチャングムに飲ませておちつかせてから、その場をあとにした。

  ホテルに帰る前に、コンビニに寄ってみた。
  自動ドアが開くと、
「歓迎光臨(ホァンインゴンリーン)」
  と、機械がいう。
「日本とおなじですね」
  朴やんが苦笑する。店内はなにやら濃厚なにおいがした。電気保温式容器のなかで、
「おでん」
  が売られていた。容器の前面には、
「黒輪」
「関東煮」
  と書かれている。
「カントダキですか」
  朴やんがわらった。「関東煮(カントダキ)」といえば、おでんをさす関西方言であるという。こんなところまで日本文化が染みついているのである。

  ホテルに帰ってテレビをつけるとウリナラ文化の精髄であるドラマ「大長今」が放映されていた。
「ウリマルでしゃべっていますよ」
  うれしそうにチャングムがいった。たしかに台詞は韓国語のままで中国語の字幕がついている。
  どうやら、高雄でも韓流はちゃんと普及しているらしい。さっき目撃したキムチ屋台の閑散としたようすはたまたまだったか、屋台のキムチが偽ものであったであったのだろう。そうおもうことにした。
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