喫茶室「一服汁」

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宗主国さまのみち 18

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/09/14 22:16 投稿番号: [10191 / 19672]
  川岸に沿ってすすんでゆくと、いくつものグラウンドがあった。そこではオレンジ色の僧衣をきた少年たちがクラス分けされ、それぞれの集団で少林拳法の練習をしている。基礎的な身のこなしだけでなく棍や革鞭をつかっているクラスもある。
  十分ほど歩くとなにやら展示館のようなものがあった。入場券をみせて石段をのぼって建物のなかに入ると、ホールのような場所があり、ちょうど演武がはじまったところであった。少年たちが蛇拳や猿拳といった拳法や棍、朴刀をつかった型ばかりか、気功によって鉄棒をあたまで割ったり、ガラス板の向こうの風船を割るといった芸を演じている。
  まことにすさまじいというしかないのだが、ややうそ臭くもある。
「武術というのはみせものなんですかねぇ」
  朴やんが首をひねった。
  がんらい、
「武」
  という字は、武器をあらわす弋を止めるとかく。やたらにふるったり顕示するものではないのである。
「ウリナラの戦闘警察をみならいなさい」
  チャングムがいった。ウリナラの戦闘警察はガラスのコップをかみ砕き、ビールびんを素手で切り、頭突きで十数枚にかさねた瓦を割るような強靭さをもっている。世界一の水準にまで磨きぬかれたデモに対抗するための鍛錬であり、するどい針のように研ぎすまされた実用性だけをもっているといっていい。

  ホールを出ると売店があった。
  少林寺の服やプロモーションビデオなども売っているのだが、ねだんは高い。しかも売店のある部屋を、
「達磨堂」
  というのである。達磨大師もはるかな後世にこのようなかたちで名前をつかわれるとはおもいもよらなかったであろう。愛国心や歴史精神まで金もうけに利用するという中国人のいやらしさがでているといっていい。

  川岸をさらにすすむと、少林寺という寺があった。ほんらいはここが本体なのである。
  山門には阿吽の両仁王が鎮座し、その先には四天王が鎮座しているのだが、けばけばしいばかりの彩色といかにも中華趣味の装飾がほどこされている。
  ひととおり中をみて外に出ると、パラソルの下で僧がなにやら筆を走らせている。
「なんでしょうかね」
  殿波さんがちかづいた。どうやら依頼者の名前をあたまにおりこんだ詩句を墨書しているらしい。一枚三十元だというのでやってもらうことにした。名前を書こうとメモ用紙をみると、中国人だけでなくアルファベットの名前まであった。
  僧は私の名前を確認すると、あらかじめ水墨画がかかれた上質紙に、
「司命唯于天
  馬欲駆求夢
  麗而壮素志
  宇内無双也」
  と、たちまち筆をはしらせて文をつくり朱の落款をおし、文意を説明してくれた。韻こそ踏んでいないものの即興としてはみごとなものである。
  かたわらのおばさんがその紙を受けとり、ドライヤーで乾かしてからビニールシートでパウチして私にわたした。
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