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投稿者: jpwcstix 投稿日時: 2002/10/13 08:17 投稿番号: [70783 / 99628]
立憲君主制の日本において、唯ふたつ天皇の意志が明確に反映された出来事の一つ。
一同の発言のおわったとき、私はかねてのうち合せに従って、総理に合図いたしました。総理が立ちまして、おもむろに、『本日は列席一同熱心に意見を開陳いたしましたが、ただ今まで意見はまとまりません。しかし事態は緊迫しておりまして、まったく遷延をゆるしません。おそれ多いことではございますが、ここに天皇陛下の思し召しをおうかがいして、それによって私どもの意見をまとめたいと思います』とのべられ、静かに陛下の御前に進まれました。そのとき阿南さんは、たしか『総理』と声をかけられたと思います。しかし総理は、おきこえになったのか、おきこえにならなかったのか、そのまま御前に進まれまして、ていねいに御礼をされまして、『ただ今お聞きのとおりでございます。なにとぞおぼしめしをお聞かせ下さいませ』と申しあげました。陛下は総理にたいし、席に帰っているようにとおおせられましたが、総理は、元来、耳が遠いために、よく聞きとれなかったらしく、手を耳にあてて、『ハイ』というふうにして聞きなおしました。この間の図は、聖天子の前に八十の老宰相、君臣一如と申しますか、何ともいえない美しい情景でありました。総理は席へ帰りました。天皇陛下はすこし体を前にお乗りだしになるような形で、お言葉がございました。緊張と申してこれ以上の緊張はございません。陛下はまず、
『それならば自分の意見をいおう』
とおおせられて、
『自分の意見では、外務大臣の意見に同意である』
とおおせられました。陛下のお言葉の終った瞬間、私は胸がつまって涙がはらはらと前においてあった書類にしたたり落ちました。私のとなりは梅津大将でありましたが、これまた書類の上に涙がにじみまじた。私は一瞬各人の涙が書類の上に落ちる音が聞こえた気がいたしました。
これは メッセージ 70782 (jpwcstix さん)への返信です.
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