『立ちすくむ』傍観者以外の何者でもない4
投稿者: jyonnconner 投稿日時: 2006/12/05 03:56 投稿番号: [1248 / 2525]
老人に向かって若者たちが叫び返す。「戻れ!
撃たれるぞ!」
老人は哀願するように両手を広げる。「やめろ、やめてくれ」
デモ隊のリーダーも「やめろ」と双方に叫ぶ。
それも若者たちの怒号に打ち消される。
リーダーの目の前に硝煙が「ビシッ!」と立つ。標的になっていながらもキッと警察署をにらむ。
混乱。狂乱。収拾がつかない怒りの爆発。
警察署を取り巻くあちらこちらで銃撃戦は繰り広げられた。T字路はどこから弾が飛んでくるか分からない危険地帯となった。人々は銃声が響くとそれぞれ近くの建物にへばりついた。
この日7人が死に、100人が負傷したことを数日後の新聞で知ることになったが、私は群集に混じってその一部始終を撮影していた。
本来ならイスラエルに向けられるパレスチナ人の怒り、それが今目の前で、行き場のない怒りとして爆発している。なぜだ。人々の鬱屈はこれほどまでに深刻なのか。
およそ1時間、混乱は続いた。銃撃の音がやんだ。
若者たちが路上に飛び出した。口々に何かわめいている。
私はガイドを探した。
ガイドは、騒乱を避けるように後方に車を待機させていた。
「撮ったか?」
「撮った」
「もういいか?」
「いやもう少し」
私はこの混乱の結末が見たかった。
銃声がやんで、群集は警察署の前に移動していた。
警察署の前のビルの上に黒覆面の戦士たちが見え隠れしていた。なるほどあそこから撃っていたのか。パレスチナ警察は警察署の中から応戦していたのだろう。ビルの上へ、また道路へ。だが、今は銃撃をやめている。
警察の前には人が集まっている。
ハマスのリーダーたちと警察官か。大声で怒鳴りあっている。
同じパレスチナ人同士、無益な血の流しあいに終止符を打とうとしているのか。
その時だった。二人の私服の男が、私を両脇からガシッと捕まえた。
「テープを出せ!」と言っているようだった。
私は拒否を身振りで示し、プレスカードを差し出した。
男の一人が首を振った。「分かってない奴だな」と言っているようだった。
私のカメラに手が伸び、それを地面にたたきつけようとした。
「待て!」と私は叫んだ。
「それなら出せ」と言われた気がした。男は興奮している様子ではなかった。
男の暗い眼に現れていたのは、軽蔑に近いものだった。
私はその眼に立ちすくんだ。
恐怖もあったが、それとはまた違ったものだった。
「よそ者」と言われた気がした。「邪魔者」となじられた気がした。
さっきまで「撮れ!撮れ!」と言っていたあたりのパレスチナ人たちが突然遠い存在に思えた。
男の手に力が入った。憎悪ではなく冷たい殺意のようなものを感じた。
私は今撮ったばかりのテープを渡した。
男は、犬を追い払うように「あっちへ行け!」とあごを振った。
男は私服のパレスチナ警察だった。
悔しかった。今撮ったばかりのテープを没収されて情けない気持ちだった。
今までこんな経験はなかった。どんな闘争を撮影しても「撮ったか?」と言われたことはあっても「テープを出せ」と言われたのは初めてだった。
うかつだった。甘かった。パレスチナ警察がこの暴動を撮影されて喜ぶはずがなかった。
数百人の群集がいたが私は一人だった。
屈辱感に私は呆然とした。
「分かっていない」のは私のほうだった。
そして、よそ者である自分を痛いほどに感じた。立ちすくんだ。
とぼとぼと歩いて来た私をガイドが見つけた。
「どうした?」
私は一部始終を話した。
ガイドはあきれた顔で「だから、警察署に近づくなといっただろう」と言った。
そんな言葉を私は覚えていなかった。
銃撃戦があった。興奮したデモ隊とパレスチナ警察がぶつかった。それが終わった。
パレスチナ人同士が争う。なんともいえない悲劇。やりきれなさ。
しかし、銃撃というシャッターチャンスに同時に興奮していた私。
どこかパレスチナ人は敵ではないと思っていた私。パレスチナ人の敵でもない私。
なんでもない私。傍観者以外の何者でもない私。
私はそのとき、私がここにいる意味を突きつけられていた。
ガイドはそれから慎重になった。
私をガイドしていることがばれると、彼も捕まる。今パレスチナ警察は反自治政府行動をするものを取り締まっている。
「気をつけろ、こちら側にもスパイはいるんだぞ」
老人は哀願するように両手を広げる。「やめろ、やめてくれ」
デモ隊のリーダーも「やめろ」と双方に叫ぶ。
それも若者たちの怒号に打ち消される。
リーダーの目の前に硝煙が「ビシッ!」と立つ。標的になっていながらもキッと警察署をにらむ。
混乱。狂乱。収拾がつかない怒りの爆発。
警察署を取り巻くあちらこちらで銃撃戦は繰り広げられた。T字路はどこから弾が飛んでくるか分からない危険地帯となった。人々は銃声が響くとそれぞれ近くの建物にへばりついた。
この日7人が死に、100人が負傷したことを数日後の新聞で知ることになったが、私は群集に混じってその一部始終を撮影していた。
本来ならイスラエルに向けられるパレスチナ人の怒り、それが今目の前で、行き場のない怒りとして爆発している。なぜだ。人々の鬱屈はこれほどまでに深刻なのか。
およそ1時間、混乱は続いた。銃撃の音がやんだ。
若者たちが路上に飛び出した。口々に何かわめいている。
私はガイドを探した。
ガイドは、騒乱を避けるように後方に車を待機させていた。
「撮ったか?」
「撮った」
「もういいか?」
「いやもう少し」
私はこの混乱の結末が見たかった。
銃声がやんで、群集は警察署の前に移動していた。
警察署の前のビルの上に黒覆面の戦士たちが見え隠れしていた。なるほどあそこから撃っていたのか。パレスチナ警察は警察署の中から応戦していたのだろう。ビルの上へ、また道路へ。だが、今は銃撃をやめている。
警察の前には人が集まっている。
ハマスのリーダーたちと警察官か。大声で怒鳴りあっている。
同じパレスチナ人同士、無益な血の流しあいに終止符を打とうとしているのか。
その時だった。二人の私服の男が、私を両脇からガシッと捕まえた。
「テープを出せ!」と言っているようだった。
私は拒否を身振りで示し、プレスカードを差し出した。
男の一人が首を振った。「分かってない奴だな」と言っているようだった。
私のカメラに手が伸び、それを地面にたたきつけようとした。
「待て!」と私は叫んだ。
「それなら出せ」と言われた気がした。男は興奮している様子ではなかった。
男の暗い眼に現れていたのは、軽蔑に近いものだった。
私はその眼に立ちすくんだ。
恐怖もあったが、それとはまた違ったものだった。
「よそ者」と言われた気がした。「邪魔者」となじられた気がした。
さっきまで「撮れ!撮れ!」と言っていたあたりのパレスチナ人たちが突然遠い存在に思えた。
男の手に力が入った。憎悪ではなく冷たい殺意のようなものを感じた。
私は今撮ったばかりのテープを渡した。
男は、犬を追い払うように「あっちへ行け!」とあごを振った。
男は私服のパレスチナ警察だった。
悔しかった。今撮ったばかりのテープを没収されて情けない気持ちだった。
今までこんな経験はなかった。どんな闘争を撮影しても「撮ったか?」と言われたことはあっても「テープを出せ」と言われたのは初めてだった。
うかつだった。甘かった。パレスチナ警察がこの暴動を撮影されて喜ぶはずがなかった。
数百人の群集がいたが私は一人だった。
屈辱感に私は呆然とした。
「分かっていない」のは私のほうだった。
そして、よそ者である自分を痛いほどに感じた。立ちすくんだ。
とぼとぼと歩いて来た私をガイドが見つけた。
「どうした?」
私は一部始終を話した。
ガイドはあきれた顔で「だから、警察署に近づくなといっただろう」と言った。
そんな言葉を私は覚えていなかった。
銃撃戦があった。興奮したデモ隊とパレスチナ警察がぶつかった。それが終わった。
パレスチナ人同士が争う。なんともいえない悲劇。やりきれなさ。
しかし、銃撃というシャッターチャンスに同時に興奮していた私。
どこかパレスチナ人は敵ではないと思っていた私。パレスチナ人の敵でもない私。
なんでもない私。傍観者以外の何者でもない私。
私はそのとき、私がここにいる意味を突きつけられていた。
ガイドはそれから慎重になった。
私をガイドしていることがばれると、彼も捕まる。今パレスチナ警察は反自治政府行動をするものを取り締まっている。
「気をつけろ、こちら側にもスパイはいるんだぞ」
これは メッセージ 1247 (jyonnconner さん)への返信です.
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