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和泉かよ子(毎日新聞)(2)

投稿者: r13812 投稿日時: 2011/09/12 20:19 投稿番号: [55759 / 62227]
台風12号による雨の中、畠尻湾でイルカに祈りをささげるリック・オバリーさん(左端)ら=和歌山県太地町で1日正午過ぎ   漁船がイルカの群れを追い込む太地町の畠尻(はたけじり)湾。和歌山県警は40人態勢で警戒に当たっていた。オバリーさん一行は解禁日の1日、チャーターバスで到着。駐車場で待機していた和歌山県警がパスポートをチェックし、来日目的や滞在期間を聞いた。その後、海岸でメンバー全員が輪になって手をつなぎ、イルカへの祈りをささげた。

  これまで漁業の主たる問題は、捕り過ぎて種の保存が危うくなることだった。追い込み漁も、水産庁がイルカ類とゴンドウ類で計2165頭と捕獲枠を定めている。法律を守り生態系と調和して漁をしてきたところへ「イルカは知能が高いから捕ってはいけない」という全く別の価値観が飛び込んできた。

   ■

  映画「ザ・コーヴ」では、太地町のイルカ漁を撮影するクルーの案内役をしたオバリーさん。「なぜ捕獲に反対するのか」と問うと、「イルカは『海の人間』だ」との答えが返ってきた。

  「私は1970年まで10年間、イルカの調教師をしていた。イルカは『自分』という存在を理解する自己認識能力がある。そんな動物を捕ったり殺してはいけない。60年代に私は、イルカが登場するテレビ番組『フリッパー』(イルカの名)で、イルカを調教していた。デッキにテレビを運び、フリッパー役のイルカに見せたところ、テレビに映っているのが自分だと理解していた。科学者の研究では、イルカの腹に日焼け止めを塗ったら、イルカが鏡に映して腹を確認した事実もある」

  「食物連鎖で高位にあるイルカには、水銀が蓄積されている。そんな肉が市場に流通している。危険にさらされているのは日本人であり、これは日本人の問題だ」

  イルカ肉の水銀について和歌山県は「急性中毒を引き起こす量でないことは明らか。イルカを多く食べる太地町でも水銀中毒の報告はない」としている。話はかみ合わない。太地町をクローズアップするのは、日本のイルカ漁に反対すると多額の寄付金が集まるからでは、とぶつけてみた。

  「金のためではない。金が欲しいならイルカの調教師を続けている。調教師だったころはポルシェを5台持っていた。イルカに深刻な事態があれば、フランスだってアイスランドだって行く。太地町のイルカ漁が今は一番重要だ」

  思わず「あなたは太地町の歴史と文化を否定するのか」と尋ねた。それでもオバリーさんは「私は太地町の歴史や文化を攻撃したり否定するために来たのではない。イルカについて私が知っていることを伝えたいだけだ。イルカ漁をしているのは漁師の中でも一部だけだ。太地町にとって、イルカ漁は絶対に必要なものではない」と、町民の気持ちをおもんぱかりながらも漁の中止を求めた。

  70年、可愛がっていたフリッパー役のイルカが死んだ。オバリーさんは、飼育のストレスでイルカが自ら死を選んだと感じ、イルカの捕獲や飼育に反対する活動家に転じた。今の活動は、調教師だったことに責任を感じているからなのか。

  「その通りだ。私はイルカで最高と最悪を味わった。『フリッパー』で多くの人がイルカを好きになってくれて最高の気分だった。その結果、各地の水族館にイルカが閉じ込められ、ショーが行われている。最悪の気持ちだよ」

  和歌山県資源管理課は「どの食文化が正しくどの食文化が野蛮かなどと言う権利は誰にもない」と反論する。あまりにも深い溝が、そこにはあった。


毎日新聞   2011年9月12日   東京夕刊

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110912dde012040111000c.html
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