ニュース争論:小泉武夫・大久保彩子(2)
投稿者: r13812 投稿日時: 2011/05/23 06:59 投稿番号: [54181 / 62227]
立会人
商業捕鯨は国のやる気で実現するのでしょうか。
大久保 日本が商業捕鯨を再開するには、IWCで82年に決まった商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を解除することが必要です。それには88カ国ある加盟国の4分の3以上の賛成が必要ですが、今は反対、賛成が半々なので、解除は非常に困難です。環境に配慮した厳しい規制を掲げたり、貿易問題などと絡めて、反対国の譲歩を迫る方法もありますが、日本の政府は長い間、効果的な対応を取ってきませんでした。IWCを脱退すべきだ、との声もありますが、国連海洋法条約の規定により、脱退しても自由に捕鯨ができるわけではありません。
小泉 しかし、ここで捕鯨をやめてしまったら、もう二度と復活することは難しい。いずれ世界的に食糧不足の時代がやってきます。その時にはクジラは貴重なたんぱく源として見直されます。ここで引き下がってしまうと次はマグロ、カツオも捕れなくなる。そして日本の水産業自体が衰退していく。捕鯨は日本の伝統文化です。昔はクジラに戒名までつけて葬ったところもあります。クジラの歯などを活用した工芸文化、多様な料理文化も絶やしてはいけません。3月には不運にも、東日本大震災があり、水産業への打撃だけでなく、今後は食料自給率が低下することも懸念されます。となると、いま一度、日本人はクジラに助けてもらう日がやってきます。宮城県石巻市の漁師さんたちが調査捕鯨を復興のシンボルにしようと頑張っています。みんなで応援しましょう。
◇食文化70年代から
大久保 食文化というと、随分昔からというイメージがあるようですが、捕鯨が食文化という言葉で語られ始めたのは広告キャンペーンの一環として登場した70年代です。私もクジラをたまに食べますし、おいしいとは思います。しかし、沿岸捕鯨で捕れたクジラをたまに食べるぐらいのぜいたくで十分です。日本人の大半は「捕鯨には賛成」とアンケートで答えていますが、そのわりにクジラをほとんど食べていない。郷愁で国の政策を決めるべきではありません。ただ東日本大震災で、沿岸捕鯨の拠点の一つである鮎川(石巻市)が大きな被害を受けたことはとても残念です。産業の復興支援なら、南極海ではなく、沿岸捕鯨を重視する方向へと政策のかじを切るべきでしょう。資源の持続可能性を大前提に、操業を沿岸に限った捕鯨なら国際的にも妥協が成立すると思います。
小泉 米国民を対象にしたアンケートでは、約7割の人は捕鯨に賛成しています。さらに米国政府は自国の先住民の捕鯨は認めています。外交の駆け引きで日本はもっと強くならないといけない。大久保さん、一度一緒にクジラを食べに行きましょうよ。
■聞いて一言
◇どちらも「分かる」だけに…
どちらの言い分も分かるのがつらい。クジラの食文化が大切なことも分かるし、民間企業では採算の合わない南極海での捕鯨に国民の税金まで費やす必要性があるのか、という理屈も分かる。私自身、クジラを食べる機会は数年に1度くらいなので、南極海での捕鯨が中止になっても、それほど苦痛は感じない。ただ、国際的な外交舞台で日本が敗北を喫し、捕鯨中止に追い込まれる姿を見ると愛国的心情もわいてくる。まして日本の調査捕鯨を破綻させることが目的であるシー・シェパードの思惑通りになるのは心中穏やかではない。実に悩ましい。(小島)
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■人物略歴
◇こいずみ・たけお
43年生まれ。東京農大卒。東京農大教授を経て名誉教授。「クジラ食文化を守る会」会長。専門は発酵学や食文化論。
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■人物略歴
◇おおくぼ・あやこ
74年生まれ。東大大学院博士課程単位取得退学。在スウェーデン日本大使館専門調査員などを経て東海大講師。専攻は環境政策論や国際関係論。
毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/opinion/souron/news/20110523ddm004070025000c.html
大久保 日本が商業捕鯨を再開するには、IWCで82年に決まった商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を解除することが必要です。それには88カ国ある加盟国の4分の3以上の賛成が必要ですが、今は反対、賛成が半々なので、解除は非常に困難です。環境に配慮した厳しい規制を掲げたり、貿易問題などと絡めて、反対国の譲歩を迫る方法もありますが、日本の政府は長い間、効果的な対応を取ってきませんでした。IWCを脱退すべきだ、との声もありますが、国連海洋法条約の規定により、脱退しても自由に捕鯨ができるわけではありません。
小泉 しかし、ここで捕鯨をやめてしまったら、もう二度と復活することは難しい。いずれ世界的に食糧不足の時代がやってきます。その時にはクジラは貴重なたんぱく源として見直されます。ここで引き下がってしまうと次はマグロ、カツオも捕れなくなる。そして日本の水産業自体が衰退していく。捕鯨は日本の伝統文化です。昔はクジラに戒名までつけて葬ったところもあります。クジラの歯などを活用した工芸文化、多様な料理文化も絶やしてはいけません。3月には不運にも、東日本大震災があり、水産業への打撃だけでなく、今後は食料自給率が低下することも懸念されます。となると、いま一度、日本人はクジラに助けてもらう日がやってきます。宮城県石巻市の漁師さんたちが調査捕鯨を復興のシンボルにしようと頑張っています。みんなで応援しましょう。
◇食文化70年代から
大久保 食文化というと、随分昔からというイメージがあるようですが、捕鯨が食文化という言葉で語られ始めたのは広告キャンペーンの一環として登場した70年代です。私もクジラをたまに食べますし、おいしいとは思います。しかし、沿岸捕鯨で捕れたクジラをたまに食べるぐらいのぜいたくで十分です。日本人の大半は「捕鯨には賛成」とアンケートで答えていますが、そのわりにクジラをほとんど食べていない。郷愁で国の政策を決めるべきではありません。ただ東日本大震災で、沿岸捕鯨の拠点の一つである鮎川(石巻市)が大きな被害を受けたことはとても残念です。産業の復興支援なら、南極海ではなく、沿岸捕鯨を重視する方向へと政策のかじを切るべきでしょう。資源の持続可能性を大前提に、操業を沿岸に限った捕鯨なら国際的にも妥協が成立すると思います。
小泉 米国民を対象にしたアンケートでは、約7割の人は捕鯨に賛成しています。さらに米国政府は自国の先住民の捕鯨は認めています。外交の駆け引きで日本はもっと強くならないといけない。大久保さん、一度一緒にクジラを食べに行きましょうよ。
■聞いて一言
◇どちらも「分かる」だけに…
どちらの言い分も分かるのがつらい。クジラの食文化が大切なことも分かるし、民間企業では採算の合わない南極海での捕鯨に国民の税金まで費やす必要性があるのか、という理屈も分かる。私自身、クジラを食べる機会は数年に1度くらいなので、南極海での捕鯨が中止になっても、それほど苦痛は感じない。ただ、国際的な外交舞台で日本が敗北を喫し、捕鯨中止に追い込まれる姿を見ると愛国的心情もわいてくる。まして日本の調査捕鯨を破綻させることが目的であるシー・シェパードの思惑通りになるのは心中穏やかではない。実に悩ましい。(小島)
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■人物略歴
◇こいずみ・たけお
43年生まれ。東京農大卒。東京農大教授を経て名誉教授。「クジラ食文化を守る会」会長。専門は発酵学や食文化論。
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■人物略歴
◇おおくぼ・あやこ
74年生まれ。東大大学院博士課程単位取得退学。在スウェーデン日本大使館専門調査員などを経て東海大講師。専攻は環境政策論や国際関係論。
毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/opinion/souron/news/20110523ddm004070025000c.html
これは メッセージ 54180 (r13812 さん)への返信です.
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