非捕殺調査による食性研究の例
投稿者: aplzsia 投稿日時: 2009/05/13 07:34 投稿番号: [34380 / 62227]
ピーター・ベストによるミナミセミクジラの食性についての記述(続き)
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鯨が水面で餌をとっているときは、ちょうど芝刈りをしている人の
ようにプランクトンの群を往来して泳ぎ抜け、定期的に口を閉じて
飲み込む。この時にはっきりとこっくりをするような動作を
するが、これは髭の縁に凝集したプランクトンを逆噴できれいに
しようという試みだろう。このような食餌は少なくとも1.75時間
続く。南アフリカ西岸では摂食はほとんど深いところで行われる
ので、行動は観察できないが頭のこっくりは水面で見られる。<8>
<4> Tormosov
<8> MRI Whale Unit data
<9> Best and Schell 1996
<22> Best 2006
<24> Mate, B.R., pers. comm.
=====================
"Whales and Dolphins of the Southern African"(2007) by Peter B. Best
以上、加藤秀弘も大権威と認める南アのピーター・ベストによる素人にもよく
わかるまとめ方ですね。
もっと新しい、安定同位元素の分析を駆使した若い世代の研究は
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/workshops/climate%20change/SC-60-BRG23.pdf
ここにあります。
SC/60/BRG23
Foraging behaviour of southern right whales (Eubalaena
australis) inferred from variation of carbon stable isotope
ratios in their baleen
髭板の炭素安定同位体比率の変動から推定するミナミセミクジラの摂食行動
V.J. Rowntree, L.O. Valenzuela, P. Franco Fraguas, J. Seger
[要 約]
鯨類の餌内容に含まれるアイソトープ構成(重さの違う同種元素の構成比率)は
鯨の組織に反映、記録され、これは髭板にもあてはまる。
成熟したセミクジラの最長の髭板は、その餌のアイソトープ構成を6−7年分記録
している(餌種はカイアシ類とオキアミ類)。餌種の炭素安定同位体の比率は
水温(緯度)、水深、淡水流入、海流システムによって違ったものとなるため、
髭板の同位体比シグナルは個々の鯨の周年食餌行動の経過について情報をもたらす。
アルゼンチン、ヴァルデス半島に漂着した5頭のミナミセミクジラ (Eubalaena australis)
成獣5頭の髭板を歯肉線から先端まで2cmごとにサンプル採りした。
髭板の安定炭素同位体比(δ13C)は年間のサイクルとして高低の変動を見せた。
の高い値は暖水の餌種を示しており(パタゴニア陸棚、–18 から–23‰)、低い
値は冷水域の餌を示している(サウスジョージア、–24 から –29‰)。
年サイクルを分析してピーク間の間隔(髭板成長のcm表示)、炭素13比率の
最高値と最低値、炭素13比率のピークと谷間の変化率、シグナルがほぼ一定に
なっている台地状の部分での炭素13比率を決定した。
髭板の年成長は31cm/yrで年ごとの変動が大きかったが(標準偏差5.8cm)、
各個体間の個人差には有意な違いが見られなかった。
各年の髭板成長はその年の最低炭素13比率値(最南値)に正の相関関係をもっていた。
各鯨個人は平均同位体比とその年間変動の幅(緯度による摂食幅)に有意な違いを
見せた。
二頭の鯨では幅が狭く(炭素13比、3.0から2.7プロミルの幅)。一頭はより高緯度の
暖水域で摂食しており(平均炭素13比、−18.2プロミル)、それに対して他の
一頭はより低緯度の冷水域で摂食していた(平均δ13C = –23.8‰)。
他の3頭は明瞭に広い幅をもっていた(5.1 から 6.8‰ δ13Cの幅)。
δ13C (炭素13の炭素12に対する比率)は春には秋より急速に変化した(春には
週あたり約0.3プロミル、秋には約0.2プロミル/週)。
われわれの結論は髭板の炭素同位体比率は各個体の摂食と分布の違いを記録して
いるというものであり、また変化する環境条件への各個体による年ごとの対応も
記録している。これにはカイアシ類とオキアミ類の生息量変動も含まれている
可能性がある、というものである。
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以上、米国とウルグアイの研究者による共同研究でした。
年間の混獲、座礁鯨数が100を越えるような国だったらもっと充実した
研究ができるはずだな。
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鯨が水面で餌をとっているときは、ちょうど芝刈りをしている人の
ようにプランクトンの群を往来して泳ぎ抜け、定期的に口を閉じて
飲み込む。この時にはっきりとこっくりをするような動作を
するが、これは髭の縁に凝集したプランクトンを逆噴できれいに
しようという試みだろう。このような食餌は少なくとも1.75時間
続く。南アフリカ西岸では摂食はほとんど深いところで行われる
ので、行動は観察できないが頭のこっくりは水面で見られる。<8>
<4> Tormosov
<8> MRI Whale Unit data
<9> Best and Schell 1996
<22> Best 2006
<24> Mate, B.R., pers. comm.
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"Whales and Dolphins of the Southern African"(2007) by Peter B. Best
以上、加藤秀弘も大権威と認める南アのピーター・ベストによる素人にもよく
わかるまとめ方ですね。
もっと新しい、安定同位元素の分析を駆使した若い世代の研究は
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/workshops/climate%20change/SC-60-BRG23.pdf
ここにあります。
SC/60/BRG23
Foraging behaviour of southern right whales (Eubalaena
australis) inferred from variation of carbon stable isotope
ratios in their baleen
髭板の炭素安定同位体比率の変動から推定するミナミセミクジラの摂食行動
V.J. Rowntree, L.O. Valenzuela, P. Franco Fraguas, J. Seger
[要 約]
鯨類の餌内容に含まれるアイソトープ構成(重さの違う同種元素の構成比率)は
鯨の組織に反映、記録され、これは髭板にもあてはまる。
成熟したセミクジラの最長の髭板は、その餌のアイソトープ構成を6−7年分記録
している(餌種はカイアシ類とオキアミ類)。餌種の炭素安定同位体の比率は
水温(緯度)、水深、淡水流入、海流システムによって違ったものとなるため、
髭板の同位体比シグナルは個々の鯨の周年食餌行動の経過について情報をもたらす。
アルゼンチン、ヴァルデス半島に漂着した5頭のミナミセミクジラ (Eubalaena australis)
成獣5頭の髭板を歯肉線から先端まで2cmごとにサンプル採りした。
髭板の安定炭素同位体比(δ13C)は年間のサイクルとして高低の変動を見せた。
の高い値は暖水の餌種を示しており(パタゴニア陸棚、–18 から–23‰)、低い
値は冷水域の餌を示している(サウスジョージア、–24 から –29‰)。
年サイクルを分析してピーク間の間隔(髭板成長のcm表示)、炭素13比率の
最高値と最低値、炭素13比率のピークと谷間の変化率、シグナルがほぼ一定に
なっている台地状の部分での炭素13比率を決定した。
髭板の年成長は31cm/yrで年ごとの変動が大きかったが(標準偏差5.8cm)、
各個体間の個人差には有意な違いが見られなかった。
各年の髭板成長はその年の最低炭素13比率値(最南値)に正の相関関係をもっていた。
各鯨個人は平均同位体比とその年間変動の幅(緯度による摂食幅)に有意な違いを
見せた。
二頭の鯨では幅が狭く(炭素13比、3.0から2.7プロミルの幅)。一頭はより高緯度の
暖水域で摂食しており(平均炭素13比、−18.2プロミル)、それに対して他の
一頭はより低緯度の冷水域で摂食していた(平均δ13C = –23.8‰)。
他の3頭は明瞭に広い幅をもっていた(5.1 から 6.8‰ δ13Cの幅)。
δ13C (炭素13の炭素12に対する比率)は春には秋より急速に変化した(春には
週あたり約0.3プロミル、秋には約0.2プロミル/週)。
われわれの結論は髭板の炭素同位体比率は各個体の摂食と分布の違いを記録して
いるというものであり、また変化する環境条件への各個体による年ごとの対応も
記録している。これにはカイアシ類とオキアミ類の生息量変動も含まれている
可能性がある、というものである。
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以上、米国とウルグアイの研究者による共同研究でした。
年間の混獲、座礁鯨数が100を越えるような国だったらもっと充実した
研究ができるはずだな。
これは メッセージ 34378 (aplzsia さん)への返信です.
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