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余録:キャンドルナイト(6/19-21)

投稿者: red_impulse_sep11 投稿日時: 2004/06/18 12:37 投稿番号: [618 / 1126]
  「夜になると物の見栄えがしないという人は、まことになさけない」と書くのは「徒然草」である(第191段)。夜は人の様子も美しく見え、暗いところで聞く声はおくゆかしい。「においも、楽器の音も、夜こそがひときわすばらしい」

▲ナイトライフを楽しんでいる夜型の都会人には、「そう、その通り」といわれそうだ。しかし、明かりといえば火しかなかった兼好法師の時代のことである。灯火は闇の深さをいっそう際立たせ、夜気は人の五感をとぎすましたろう。物の怪(け)のひそむ夜に包まれてこそ見える美、聞こえる音もある

▲「徒然草」は、すぐ次の段で「神社やお寺には、他の人が詣でない日、夜参るのがいい」と述べる。人目のない時に参詣するのが好ましいというばかりではない。暗夜に詣でれば、神や仏と深く心を通わせることができるというふくみもあろう

▲東京タワーや大阪城など全国の名所のライトアップや店舗の看板などを消灯する「100万人のキャンドルナイト」が、あすから21日の夏至まで行われる。環境やエネルギーを考えるキャンペーンとして環境省や市民団体が呼び掛けた企画だが、今年は去年の倍の4600施設が参加する

▲施設の消灯時間は午後8時からの2時間だが、キャンペーンのホームページでは個人や家庭でもそれぞれ無理のないやり方で参加してほしいと呼びかける。キャンドルの火の下、果たして兼好法師の推奨したナイトライフが楽しめるかどうかはおなぐさみだ

▲「月をこそ眺めなれしか星の夜の深き哀れを今宵(こよい)知りぬる」(建礼門院右京大夫)。月をめでた古人にも、星の夜の情感はひとしおだったという。そんな深いあわれに身をひたすことができたら、それが心のぜいたくというものだ。

毎日新聞   2004年6月18日   0時17分
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