真実の表現は共感を呼ぶ
投稿者: yamamotoiso7 投稿日時: 2004/01/04 12:25 投稿番号: [98700 / 232612]
検閲された詩
文学作品の中にも、占領軍から軍国主義的として修正削除命令、または発禁処分を受けたものがあった。江藤氏の著書に、その一例として次の詩が紹介されている。(ただし、以下の検閲の直後に、検閲制度の変更が行われ、この詩は原形のまま出版できた。)
まず修正後の形を示す。[3,p297-]
かへる
川路柳紅
汽車はいつものやうに/小さな村の駅に人を吐き出し、そつけなく煤と煙をのこして/山の向ふへ走り去つた。
降り立つた五六人のひとびとは/白い布で包んだ木の箱を先頭に、みんな低く頭を垂れて/無言で野道へと歩き出す(a)
青い田と田のあひだに/大空をうつす小川
永遠の足どりのやうに/水の面に消えまた現れる緩い雲
この自然のふところでは/すべてが、あまりに一やうで歓びと悲しみも、さては昨日も今日も、時の羽摶きすら聴えぬ間に生きてゐる。(b)
おまへを生み育てた村の家に、戦ひのない、この自然と人の静けさの中に。
白い布で包んだ木の箱」には、戦死者の遺骨が入っている。それが、美しい故郷の山河に戻ってきた、という場面である。
「霊」の抹殺
実は、この詩のタイトルは「かへる霊」であり、また(a)と(b)の部分には、それぞれ次のような部分が削除されている。
(a)かつての日の栄光は、/かつての日の尊敬すべき英雄は、いま骨となって故里へ還つたが、祝福する人もなく、罪人のやうにわずかな家族に護られて野地をゆく
(b)無言の人々に護られた英霊は、/燃える太陽の光のなかで、白い蛾のやうな幻となつて/眩しくかゞやき動いてゐる、かへるその霊の宿はどこか、贖(あがな)はれる罪とは何か?
安らかに眠れよ、たゞ安らかに
前節の検閲後の詩では、完全に「霊」の存在が抹殺されている。江藤氏は語る。
したがって、そこでは、人は「かへるその霊の宿はどこか、/贖はれる罪とは何か?」というような根源的な問いかけを行ってはならず、また「安らかに眠れよ、たゞ安らかに」という、生き残った者の「霊」に対する心からの人間的な呼びかけを行うことも禁止されている。[3,p299]
これは メッセージ 98695 (yamamotoiso7 さん)への返信です.
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