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沖縄のレイプ事件の波紋

投稿者: jig1868 投稿日時: 2002/11/29 21:33 投稿番号: [27429 / 232612]
1995年秋、日本最南端の沖縄県に駐留する三人の米兵が、基地の外で12歳の少女に乱暴をはたらいた。

二人は誘拐を認め、もう一人は強姦を認めた   (最終的に、日本の裁判所は三名全員をおよそ7年の刑に処した)。


どうみても残酷な犯罪だったが、事件は他国から招賠された者による犯罪という域をはるかに越えて、対日関係に嵐を巻きおこした。

三人の非番のGIによる一夜の行為は、戦後の安全保障体制の問題をふたたび東京とワシントン間の交渉のテーブルにもどしてしまった。


その点で、この事件は35年前の安保闘争を荷佛させた。

たちまち米軍のプレゼンス全体、つまりは吉田ディールの核心部分の問題になった。

そんなに大勢のアメリカ人が日本で何をやっているのか。

本土の日本人よりも外国人に慣れていて、日本の伝統の影響をそれほど受けていない沖縄の人びとは、本土の人たちよりも本音をずばりと言う。

事件が沖縄で起きたことは、アメリカ人にとって不幸な歴史のめぐり合わせだった。

沖縄の人たちの抗議が、日米間の変化が遅かれ早かれ避けられぬことをいま一度、浮きぼりにしたからだ。


ほぼ半世紀ものあいだ、五万近くの軍を国民の目に触れさせずにおくのは容易なことではない。

そのうちの3万が、沖縄のように、有用な土地の5分の1以上に広がる70の軍事施設で演習している場合にはなおさらである。

ワシントンと東京は長いあいだ、これらの兵士たちをアメリカ人の眼から隠しておくよう周到な手を打ち、日本国内でなかなか見事に隠しきってきた。

在日米軍基地の4分の3がもっとも遠隔の県に集中しているのは、そこにひとつの理由があった。

また、だからこそレイプ事件によって、われわれの単純な日本観と、われわれの日本における身の処し方がいま一度、問題になったわけである。

この点で沖縄は、トム・エンゲルハートが著書のタイトルに使った便利なフレーズを借りると、「勝利文化の終焉」   を告げるもうひとつのシグナルだったといえよう。


50年前、われわれは日本人の邪魔をした。

もちろん、打ち負かしたのだが、その後、一時的に扶養した間、彼らはみずからの近代化が行きついた悲劇の解決へ向けて、最初の試験的な数歩を歩みだした。

しかる後に、われわれはその解決を遅らせることにした   ・・・・・   以来、50年問、引きずっている遅滞である。

もし、両国の関係を健全なものにする気があるならば、われわれは半世紀前にしそこなったこと、つまり脇へどくということを、いまこそ実行しなければならない。

そして、5世紀前、最初に日本を訪れた西洋人がしそこなったことを、しなければならない。

それは日本人のあるがままの姿だけを見ることである。


皮肉なことに、最初に発見するのは、日本人が   ・・・・・   自分自身からだけでなく他者からも   ・・・・・   隠れるのに慣れているということである。

日本人はだれしも、仮面をかぶっているか、かぶるように教えこまれている。

そして、仮面のなかで、ひどくばらばらのまま、ぎっしりと寄り添って暮らすことを学んできた。

しかし、妙にひっそりとして輪郭の定まらない現在の表向きは、静かで不変だが、その下には無数の葛藤、緊張、反目、不安がうずまいている。

いや、いつの時代にも、うずまいていた。

ただ、蓋が持ち上げられたか、仮面の一部がはずされたかのように、いまいっそうはっきりと見えるようになったにすぎない。


円地文子は小説   『女面』   のなかで、敵役が   「毀   (こわ)   されない顔」   をもっていると描写した。

日本人がみずからに問いはじめた重要な質問のひとつは   ・・・・・   それが、この本が問いかけている質問だが   ・・・・・   日本人の仮面もまた   「段されない顔」   なのか、それとも、いまや仮面を脱いで生きるときなのだろうか。





『日本人だけが知らない日本のカラクリ』

新潮社2000年発行、p.48より引用、パトリック・スミス著   (米国人ジャーナリストで元ニューヨーク・タイムズ記者)
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