手嶋龍一VS佐藤優(1)
投稿者: komash0427 投稿日時: 2006/08/21 23:04 投稿番号: [229068 / 232612]
インテリジェンスの世界に通暁する2人が、2時間にわたって激論を交わした。1人は、NHKワシントン支局長を勤め上げた後、北朝鮮の偽ドル札をテーマにした初小説『ウルトラ・ダラー』(新潮社)が、20万部を超えるベストセラーとなっている手嶋龍一氏。もう1人は本誌連載でもお馴染み、対露外交に活躍し、"外務省のラスプーチン"との異名をもつ、佐藤優氏である。
議論のテーマは日本外交への評価から日本のインテリジェンスを強化する方法まで多岐にわたった。前編の今回は、「北朝鮮のミサイル発射」(7月5日)に焦点を当てた。「北」の狙い、関係諸国の思惑、そして日本政府の対応を2人はどう分析、評価したのか―――。
(SAPIO 8月23日、9月6日合併号より)
日本はなぜ安保理決議で
中露分断工作ができなかったのか
「Xデー」を知らなくても大きな問題はなかった
手嶋 現在、北朝鮮ミサイルが発射された日、「Xデー」を日本政府は事前に知っていたという情報が出回っています。知っていても言わないのがインテリジェンスの嗜(たしな)み。当局は明らかに事実をたがえていますね。
佐藤 知らなくても致命的な話ではないと思いますけどね。
手嶋 そうですね。事実、どこの国も知らなかったわけです。中国も北朝鮮から「内報」(事前通報)がなかった、ということをリークしています。アメリカも、私が検証したかぎりでは知らなかった。彼らは「情報面では奇襲だった」といっています。日本が知らなくても当然です。そのことは堂々と認めるべきなんです。
佐藤 その通りだと思います。ロシアも知らなかったですし、それをちゃんと認めています。
手嶋 それはまさに僕が、『SAPIO』(2006年7月12日号)の書評インタビューで、佐藤さんの『自壊する帝国』(新潮社)の一番面白かったところに挙げた部分に通じます。
1991年8月19日、「ゴルバチョフ大統領が健康上の理由で執務不能」というニュースを、モスクワにいた佐藤さんは、実は東京から知らされ、慌ててテレビをつける。受話器を置いてから、見事な人選の順番で情報収集を開始するわけですが、「東京から第一報を受ける」という情報家としては決して威張れたことではない事実を少しも隠そうとしない。正直にあるがままを認める態度に鮮烈な印象を受けました。
佐藤 そこはまさに意図して書いたんですよ。こういったときに、俺は実は知っていたんだというウソ話が日本の場合、多過ぎるんです。それをやめさせるために、事実として知らなかったときは知らなかったでいいんだ。ただ、その電話を受けた瞬間からインテリジェンスの戦いが始まるということを伝えたかった。
手嶋 ところが、明らかに日本では、朝日新聞から産経新聞まで、小泉官邸があたかもXデーを知っていたかのように、そして水際立った危機管理を行ったかのように書いていますね。
佐藤 そうですね。ある全国紙は、安倍さんがいつでも官邸に駆けつけられるようにハイヤーを雇っていたという記事を載せていました。危機に際して民間のハイヤーで対応する、こういうことをやっている国は世界でもないですよ。その場合は当然のことながら公用車。大体の国はナンバープレートのついていない公用車ですよ。それに加えてダミーの車が2台ぐらいある、それらが常時待機しているものです。
手嶋 記事では、そのハイヤーを待機させていたということが、危機管理の心構えを示す良い例として挙げられている。
佐藤 明らかにマイナスの話で、インテリジェンスの観点からしたら、国家機密に値すると思います。
手嶋 水準の低さを世界にさらしています。
佐藤 危機管理用の車すらない態勢なのか。どこで経費削減しているのか、変わった人たちだなと思われますよ。
手嶋 正直、僕は不思議でならないんです。Xデーは誰も知らなかった、そのあとも特に大きな失敗もしていない。にもかかわらず、どうしてそんな小賢しい対メディア工作をするんでしょう。
(→)
議論のテーマは日本外交への評価から日本のインテリジェンスを強化する方法まで多岐にわたった。前編の今回は、「北朝鮮のミサイル発射」(7月5日)に焦点を当てた。「北」の狙い、関係諸国の思惑、そして日本政府の対応を2人はどう分析、評価したのか―――。
(SAPIO 8月23日、9月6日合併号より)
日本はなぜ安保理決議で
中露分断工作ができなかったのか
「Xデー」を知らなくても大きな問題はなかった
手嶋 現在、北朝鮮ミサイルが発射された日、「Xデー」を日本政府は事前に知っていたという情報が出回っています。知っていても言わないのがインテリジェンスの嗜(たしな)み。当局は明らかに事実をたがえていますね。
佐藤 知らなくても致命的な話ではないと思いますけどね。
手嶋 そうですね。事実、どこの国も知らなかったわけです。中国も北朝鮮から「内報」(事前通報)がなかった、ということをリークしています。アメリカも、私が検証したかぎりでは知らなかった。彼らは「情報面では奇襲だった」といっています。日本が知らなくても当然です。そのことは堂々と認めるべきなんです。
佐藤 その通りだと思います。ロシアも知らなかったですし、それをちゃんと認めています。
手嶋 それはまさに僕が、『SAPIO』(2006年7月12日号)の書評インタビューで、佐藤さんの『自壊する帝国』(新潮社)の一番面白かったところに挙げた部分に通じます。
1991年8月19日、「ゴルバチョフ大統領が健康上の理由で執務不能」というニュースを、モスクワにいた佐藤さんは、実は東京から知らされ、慌ててテレビをつける。受話器を置いてから、見事な人選の順番で情報収集を開始するわけですが、「東京から第一報を受ける」という情報家としては決して威張れたことではない事実を少しも隠そうとしない。正直にあるがままを認める態度に鮮烈な印象を受けました。
佐藤 そこはまさに意図して書いたんですよ。こういったときに、俺は実は知っていたんだというウソ話が日本の場合、多過ぎるんです。それをやめさせるために、事実として知らなかったときは知らなかったでいいんだ。ただ、その電話を受けた瞬間からインテリジェンスの戦いが始まるということを伝えたかった。
手嶋 ところが、明らかに日本では、朝日新聞から産経新聞まで、小泉官邸があたかもXデーを知っていたかのように、そして水際立った危機管理を行ったかのように書いていますね。
佐藤 そうですね。ある全国紙は、安倍さんがいつでも官邸に駆けつけられるようにハイヤーを雇っていたという記事を載せていました。危機に際して民間のハイヤーで対応する、こういうことをやっている国は世界でもないですよ。その場合は当然のことながら公用車。大体の国はナンバープレートのついていない公用車ですよ。それに加えてダミーの車が2台ぐらいある、それらが常時待機しているものです。
手嶋 記事では、そのハイヤーを待機させていたということが、危機管理の心構えを示す良い例として挙げられている。
佐藤 明らかにマイナスの話で、インテリジェンスの観点からしたら、国家機密に値すると思います。
手嶋 水準の低さを世界にさらしています。
佐藤 危機管理用の車すらない態勢なのか。どこで経費削減しているのか、変わった人たちだなと思われますよ。
手嶋 正直、僕は不思議でならないんです。Xデーは誰も知らなかった、そのあとも特に大きな失敗もしていない。にもかかわらず、どうしてそんな小賢しい対メディア工作をするんでしょう。
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