もうすぐかえるよ
投稿者: miniiwa2 投稿日時: 2005/11/30 20:48 投稿番号: [223806 / 232612]
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ところで挙式の日取りは、どなたがお決めになられたのだろう。
当日は、偶然にも、横田めぐみさんが拉致された日だった。
二十八年、になる。
めぐみさんは十三歳だった。
それまでのめぐみさんを、父の滋さんは、折りあるごとにフィルムに収めた。
たくさんの写真の中から七十数枚を選び、このほど有楽町のギャラリーで写真展を開いた。
某日、私も出かけた。
長蛇の列で、入場まで二十分余かかった。
会場は熱気に満ちていた。
何でもない、日常のスナップショットが、見る者に強烈に訴えてくる。
四、五枚見ただけで、息苦しくなってきた。
場内の熱気は、見る人の怒りであったろう。
怒りが渦を巻き、熱を発しているのだ。
客はコートを脱ぎ、汗と涙を拭っていた。
先頃、北朝鮮が発表した、めぐみさんの白いコート姿の写真がある。
生垣を背に、手を前で組み、右足を少し突き出したポーズ。
合成写真でないか、と騒がれた一枚である。
この写真の横に、小学生のめぐみさんの写真が並べられていて、なんと、ポーズが瓜ふたつなのだ。
組んだ手の格好と言い、足の位置といい、寸分違わぬ。
北朝鮮での写真は、めぐみさんの癖が無意識に出た、というより、意識してこのポーズを作ったのではないか、と思う。
つまり、めぐみですよ、というご両親へのメッセージに違いない。
ご家族だけがわかるポーズだろう。
それにしても並べられたこの二枚の写真は、拉致の残酷さを何よりも強く語る。
私の隣で見入っていた老婦人が、「めぐみさん、がんばってね」と孫に言うように、つぶやいていた。
私が立ちすくんでしまった一枚がある。
めぐみさんのスナップではない。
めぐみさんの、年賀状である。
一九七五年の暮れ、旅先からひと足早く家族にあてた賀状で、めぐみさんは小学五年生。
三春駒の絵(上手である)に、次の文章がある。
「賀正たくやてつや
おとうさん
おかあさん
もうすぐかえるよ !! まっててね
めぐみ」
この「もうすぐかえるよ !!
まっててね」を読んだ時、こらえていた涙が、どっとあふれてきて、どうしようもなかった。
「レターの三枚目」
出久根達郎(日経夕刊)より
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