北朝鮮を巡る米中の合従連衡―Ⅵ
投稿者: komash0427 投稿日時: 2005/10/02 22:24 投稿番号: [218862 / 232612]
2ヵ月後の8月に入ると、さらに衝撃的なニュースが伝わってきた。蕭克上将が名誉会長を務める人民解放軍総参謀部の支援する理論機関紙「戦略と管理」(「中国戦略と管理研究会」発行・隔月刊)に、北朝鮮への支援を中止せよと訴える論文が掲載されたのである。タイトルは「新しい視点で朝鮮半島情勢を考える」で、筆者は政府系シンクタンク天津社会科学院経済研究所の王忠文研究員である。
論文は「北朝鮮では自然災害や人民の困窮も顧みずに、金一族の極左政治と迫害が続いている」「国家財政は破綻しているのに、核とミサイルの開発に熱中している」と北朝鮮の政治・外交を激しく非難したうえで、「中国の政治的支持と経済援助に対して感謝すらしていない。こんな国家に対して全面的に支援する道義的責任はない」と、北朝鮮への支持と援助の見直しを大胆にも訴えたのである。同論文は日本のメディアでも大きな話題にはなったが、中国の戦略誌が異例な北朝鮮批判を載せた事実にポイントが置かれ、王忠文研究員が本当に言わんとした点にはまったくといっていいほど関心が払われていない。王論文の狙いは次の点にある。
核とミサイルの開発は、「日本と韓国両国の現実の脅威であるだけでなく、わが国とロシアの潜在的な脅威にもなっている。また同時に北東アジアの安定にとっても不安定要因であり、必ず反対しなければならない」として、北朝鮮の核保有は中国の安定にとってもマイナスであると明確に指摘したうえで、米国や日本など周辺国と提携して「真剣に北朝鮮の大規模核戦略と核武装を封じ込めなければならない」と王氏は強調する。中国と北朝鮮のこれまでの関係を見直して、東アジア地域各国との協力に比重を置かなければならないというのである。その理由は何か。
「過去、われわれは駐留米軍が我が国の周囲に張り巡らされた包囲網だと受け止めていたが、この考えは改める必要がある。中国国内には反対論もあるが、駐日、駐韓米軍の存在は日本軍国主義勢力を封じ込め、朝鮮の核武装を抑えこむことに役立っている。ロシアとのパワーバランスからも存在は有利である」。アジアに展開する米軍の存在は、中国にとって「全般的にプラス」だからだと言う。そして、「中米関係は波風はあっても全般的な趨勢はいい。だが北朝鮮は、イデオロギーのうえからも、米中両国の良好な関係を阻害するためには無責任な行動で妨害を図っている。彼らはトラブルを起させて、中国を米国との衝突に追い込もうとしている。これには警戒と防止に努めなければならない」。こうした戦略が「北朝鮮を支援する道義的責任はない」という結論につながるのである。論文はなんと、米中による「北朝鮮処分」を示唆したものなのである。
先にニクソンと周恩来の1972年当時の会談内容を紹介したが、「戦略と管理」に掲載された王忠文の提言は、当時、両国指導者の間で交わされた戦略論を継承するもので、北朝鮮で再び両国が対決するなどという事態はまったく想定されていない。中国と北朝鮮には、互いに侵略された場合には自動的に参戦することを約束した中朝友好同盟条約が今も存在している。それでいて、解放軍参謀部の影響力の強いメディアには「北を支援せず」との論文が載せられた。当然金正日国防委員長は激怒し、予定していた中国訪問も中止した(9月24日、香港亜州時報電子版)。
直ちに中国も同誌を回収・廃刊にし、宣伝担当の李長春政治局常務委員が訪朝して金委員長に「謝罪」したという。だがここが大事なのだが、肝心の王氏個人が国内で自己批判にさらされたとか、同論文を批判するキャンペーンが始まったとかいう兆候は見当たらない。廃刊はあくまで北朝鮮向けの処置にすぎないのである。
(つづく)
論文は「北朝鮮では自然災害や人民の困窮も顧みずに、金一族の極左政治と迫害が続いている」「国家財政は破綻しているのに、核とミサイルの開発に熱中している」と北朝鮮の政治・外交を激しく非難したうえで、「中国の政治的支持と経済援助に対して感謝すらしていない。こんな国家に対して全面的に支援する道義的責任はない」と、北朝鮮への支持と援助の見直しを大胆にも訴えたのである。同論文は日本のメディアでも大きな話題にはなったが、中国の戦略誌が異例な北朝鮮批判を載せた事実にポイントが置かれ、王忠文研究員が本当に言わんとした点にはまったくといっていいほど関心が払われていない。王論文の狙いは次の点にある。
核とミサイルの開発は、「日本と韓国両国の現実の脅威であるだけでなく、わが国とロシアの潜在的な脅威にもなっている。また同時に北東アジアの安定にとっても不安定要因であり、必ず反対しなければならない」として、北朝鮮の核保有は中国の安定にとってもマイナスであると明確に指摘したうえで、米国や日本など周辺国と提携して「真剣に北朝鮮の大規模核戦略と核武装を封じ込めなければならない」と王氏は強調する。中国と北朝鮮のこれまでの関係を見直して、東アジア地域各国との協力に比重を置かなければならないというのである。その理由は何か。
「過去、われわれは駐留米軍が我が国の周囲に張り巡らされた包囲網だと受け止めていたが、この考えは改める必要がある。中国国内には反対論もあるが、駐日、駐韓米軍の存在は日本軍国主義勢力を封じ込め、朝鮮の核武装を抑えこむことに役立っている。ロシアとのパワーバランスからも存在は有利である」。アジアに展開する米軍の存在は、中国にとって「全般的にプラス」だからだと言う。そして、「中米関係は波風はあっても全般的な趨勢はいい。だが北朝鮮は、イデオロギーのうえからも、米中両国の良好な関係を阻害するためには無責任な行動で妨害を図っている。彼らはトラブルを起させて、中国を米国との衝突に追い込もうとしている。これには警戒と防止に努めなければならない」。こうした戦略が「北朝鮮を支援する道義的責任はない」という結論につながるのである。論文はなんと、米中による「北朝鮮処分」を示唆したものなのである。
先にニクソンと周恩来の1972年当時の会談内容を紹介したが、「戦略と管理」に掲載された王忠文の提言は、当時、両国指導者の間で交わされた戦略論を継承するもので、北朝鮮で再び両国が対決するなどという事態はまったく想定されていない。中国と北朝鮮には、互いに侵略された場合には自動的に参戦することを約束した中朝友好同盟条約が今も存在している。それでいて、解放軍参謀部の影響力の強いメディアには「北を支援せず」との論文が載せられた。当然金正日国防委員長は激怒し、予定していた中国訪問も中止した(9月24日、香港亜州時報電子版)。
直ちに中国も同誌を回収・廃刊にし、宣伝担当の李長春政治局常務委員が訪朝して金委員長に「謝罪」したという。だがここが大事なのだが、肝心の王氏個人が国内で自己批判にさらされたとか、同論文を批判するキャンペーンが始まったとかいう兆候は見当たらない。廃刊はあくまで北朝鮮向けの処置にすぎないのである。
(つづく)
これは メッセージ 218691 (komash0427 さん)への返信です.