「百年河清を俟って国滅ぶ」③
投稿者: mutekinozerosen 投稿日時: 2005/01/17 21:09 投稿番号: [171013 / 232612]
憲法前文の醜悪な日本語
私は年若くして文壇に出ましたから、文壇と親交のあった白洲次郎さんや、近くに住んでいた後に白洲とは親戚になった小林秀雄さんとよくお酒を飲み、ゴルフをしながら話をしました。
白洲次郎さんというのは御存知のように吉田茂さんの側近で、GHQとの交渉をほとんどすべて一人でやつた方です。素晴らしいキングズイングリッシュをしゃべり、彼から見れ
ば田舎っペのマッカーサーの属僚が「白洲さんの英語は見事ですなあ」と言ったら「うん、君の英語も少し勉強したらもう少しましになるよ」と言って、相手がカンカンになって怒った、という挿話もあるほどの達者な英語使いでした。
その彼が、憲法については強い疑義を抱き、特に九条の内容について青田さんと激しく衝突しつつも、最終的には是とせざるをえなかった。GHQ側が英語で起草した憲法を翻訳した時の拙速さ−実際に二日か三日でやったんでしょう−について、よく話していました。
私は文学者ですから、白洲さんに「日本の憲法、特にあの評判の高い前文というのは非常に醜悪な日本語で、文章としてとても許すことができない」と話したら、あのべらんめえ、のおじさんが「そうなんだ、おまえ、おれはずっとイギリスで育ったものだから、日本語より英語の方がよっぽどうまいんだよ、その俺がかなりいい加減な日本語で急いでやったんだから、あんなものはデタラメに決まってら。だから、マッカーサーがいなくなったらさっさと直すと思ってたけど、日本人てのはバカだね。まだ同じことをやってやがる」と言う。「自分で自分にツバを吐くみたいな話じゃないですか」
と返したら「いや全くそうなんだが、しかしおれ一人でどんどんやれるものじゃないからな」と言っていた。
実際のところ、前文の日本語は本当に醜悪です。そこに謳われている理念はいい。ごくあたりまえのことですから。でも、それを表現するにしても、この翻訳は非常に拙劣な日本語です。たとえば前文には「この憲法を確定する」とあります。これは原文ではestablishという動詞でしたが、法律を作るときに「確定する」などという言葉を使いますかね。普通だったらこれは「制定」でしょう。
また、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する」云々とありますが、「ひとしく恐怖と欠乏から免がれ」とは言わない。前置詞一
つ、助詞一つの問題かもしれませんが、「欠乏を免がれ」ですよ。こういったところに、日本語として致命的な乱れがある。ですから、今日若者の言葉の乱れに大人はひんしゅくしているけれどーまあその若い表現が拙劣なものか、歴史的なものになり得るかどうかはわかりませんがー、そういった日本人の日本語に対する敬意の欠如、無神経というのは、既にこの前文から始まっているのです。
これは メッセージ 171012 (mutekinozerosen さん)への返信です.
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