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故郷忘れじがたく候 4

投稿者: hendazo04 投稿日時: 2009/01/31 19:41 投稿番号: [261 / 402]
p31では「かれらが串木野に漂着したのは、関が原ノ役の直後―つまり島津家が国境に・・」と不思議がる。
「この翌年・・」はいささか不正確である。島津勢が朝鮮半島から撤兵したのは慶長3年の11月、関が原の役は慶長5年9月だ。70余名の朝鮮人は約2年後に鹿児島に姿を現したのである。
この矛盾について先生は苦しむ、苦しんで破れかぶれになったのだろう、
30pに、「いまとなれば想像の手がかりもないが、おそらく途中風浪に遭い、筑前か肥前あたりの島にいったん漂着したのではあるまいか。その島で魚貝を獲って露命をつなぐうちに日本人の船頭も逃げたのであろう。あとは韓国にひきかえすわけにもいかず、かれらの手で船を修理し、九州西岸の島々をつたいつつゆるゆると南下したのかもしれない。かれらの時代の航海上の条件からいえば、この想像は最も当を得ているように思われる。」

ゼーンゼン当を得てなんかいないね。それどころか、なんでもありの状態だ(笑
五島列島のある肥前は確かに小島が多く、当時は無人島も少なくなかっただろう。しかし肥前・筑前の島々が蝟集する範囲は極めて狭い。「ロビンソン・クルーソー」も「15少年漂流記」も『蝿の王』も、ロケーションはすべて絶海の孤島だ。70人もの人間が2年間も原始人みたいな生活をして誰にも気付かれないですむものではない。それに、逃げたとみなした日本人の船頭は島津藩ゆかりの者であろうが、距離的に遠くない朝鮮遠征出航地である肥前名護屋に報告せずに姿をくらましたとするのも合理的でない。だいたい70人もの捕虜を積んだ船に船頭一人のはずはないだろう。
日本人乗組員は逃亡したのではなく、いっそ飢えた朝鮮人たちが喰ってしまったと推測したほうがリアルだ。   合掌。
それでも2年はもたない。
なにも苦しむことはない。選択するのは単純な公理でよいのである。かれらは半島から日をおかずに直接薩摩半島西海岸に漂着した、とするのが単純な公理だ。
理由は現代でも見られる不法入国者である。ただし、陶工人の入国は島津藩にとってウェルカムだった。
『不法』ではなくてWelcomeなのだ。秀吉の軍勢が押しかけ、朝鮮人言うところの残虐さを発揮された半島の住民が、その戦数年を経て、島津藩に高麗町を設けさせるほどに不法に移民してきたのである。
畢竟、かれらは密貿易船や倭寇などから日本には『差別』がないことを耳にしていたのであろう。その中でも薩摩は密と乳があふれる約束の地と映ったに違いない。現在世界各国政府の頭を悩ませている、中国人の密航バイタリティをみれば納得できるだろう。
とにかく朝鮮下層民の本国における境遇は惨めそのものだった。主語の70余名はすぐれた陶工人である必要がなく、とにもかくにも新天地を求めたボートピープルだったのだ。ケンチャナヨスプリッツである。
だいたい、陶器の傑作朝鮮白磁は王朝御用達以外の窯を禁じられていたのだ。とうぜん工人も門外不出だろう。
地方都市の南原城内にそれらの工人がいたとは考えにくく、この地の陶工人は素朴というか、土の塊みたいな重たく色彩のないどうでもいい陶器を焼いていたのにちがいない。その証拠に、500人もの捕虜を連れ帰った島津藩に、主語の一行以外にすぐれた陶器を焼いた実績はない。

もう少し彼らの足取りを本書から追ってみよう。
串木野に流れ着いたかれらはそこに住まいを始め、p32『3年もそのようにしていたというから、薩摩の領民政治も江戸中期以後のようなせせこましさはなく、よほど大味なものであったのであろう。』と、彼らは同地域で3年を過ごしたことをいう。が、『むろん、うわさは、政庁に達していないにしても、近隣に広がっている。
・・・ということで、あたりの土民どもがのぞきにくるようになった。言葉も通じない」。

薩摩藩領の良民を『土民』と形容する先生の心奥はともかく、島津家の役人は『・・言語不通、なおもって自由体に御座候故、そのものを打擲仕り候よし。しかるところにその日より所中のものより徒党を組み、返報狼藉仕り候よし』(留帳)と書き残す。
珍しがってのぞきに来た日本人が無礼だったので殴り倒したところ地元民から報復を受け、同地にいられなくなり彼らは再び彷徨することになる。

つづく。
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