いつ・どこで・だれが
投稿者: nannkainosima 投稿日時: 2010/10/01 12:13 投稿番号: [23309 / 29399]
ご賛同ありがとうございます。
現在、誰でも利用できるような史料批判の本がないのは、
誠に遺憾です。
当事者が書いた、当事者が残した、とされるものは、
貴重・最重視とされるがゆえに、かえって偽作・贋作が多かった、
という歴史上の事実を、まず確認しておく必要があります。
秦先生の本p109に第一次史料というのが挙げられていますが、
方法論的に見て、
ここで偽作・贋作の可能性に触れておられないことが、まずは問題です。
これは、秦先生だけに責任をかぶせるわけにはいかない、
歴史学全体、アカデミズム全体、出版界全体の問題だと、私は考えます。
まずは、偽作・贋作ではない、ということを確認する必要があります。
その史料の形式が、他の正しい史料の形式と一致するか。
文書において、紙・墨色・書風・筆意・文章形式・言葉・印章等が、
本物かどうかを確認するのは、最初の手続きです。
井家又一日記は、その点で、重大な疑義が出ました。
これが、南京事件の概説書を書いておられる方に理解されていない、
というのは、私には衝撃でした。
他は推して知るべしということになりますので。
こうなりますと、この日記が、いつ、どこで、誰によって書かれたものか、
確認する必要があります。
その方法については、以下のようになっております。
*****
史料の日時を考察するには、外的な吟味と内的な吟味の、両方を行う。
外的な吟味とは
〈1〉 ある日時の明らかな史料の事が、その史料の中に出て来ることに
よって判断する。
〈2〉 ある日時の明らかな史料の中に、その史料の事が出て来ることに
よって判断する。
〈3〉 共在する、他の時間的関係の知られている史料から判断する。
考古学的遺物等において、この方法の適用の範囲は非常に広い。
〈4〉 時として、技術的関係からの判断による。
たとえば手紙に日付がなくとも、その到着した時がわかっている場合などはそれである。
〈5〉 それが時間の知られている史料の断片であることの考証による。
などを指すのである。
内的な吟味とは
〈1〉 比較研究を行う。すでに日時の明らかにされている他の史料と
外形的特徴、たとえば様式・材料・技術等を比較する。
考古学的遺物の「時」の決定は、多くの場合これが適用される。
〈2〉 文献的な史料等では、特に言葉、スタイル等がおおいに標準となる。文語体でも、時々何か時代を暴露する要素が含まれている。
〈3〉 記録等の場合、その記事の内容に手がかりを求め、
それによって判断を加える。
もとより多くの場合、非常に精密な時間的関係を決定することは不可能である。
しかし、大体の前後の限度を立てる。
すなわち何時より以後、および何時より以前、
を明らかにすることができるだけでも、
その史料の利用におおいに役立つのである。
史料の製作された場所の吟味は、次のような条項が着眼される。
〈1〉 どこで発見されたか、その場所は、その吟味の一つの標準になる。
〈2〉 外的形式。
すなわちその様式、材料、技術等の比較研究がその決定に役立つことは、
日時の吟味の場合と同様である。
〈3〉 言葉およびスタイル。これも日時の場合と同様である。
〈4〉 内容。文献的史料では、記事の内容が往々にして、その製作の場所を示している。
たとえば特にある地方の記事が詳細であったために、
その書かれた所が知られるようなのは、その適例である。
作者の吟味の方法としては、次のような条項が挙げられる。
〈1〉 外的な吟味
①同じ作者の他の史料の中に、明らかにその史料を記してあることがある。
②同時代の他の史料または後世の史料の中に、その史料の作者が出ていることがある。
③作者の符丁、頭文字、または奉呈の人名等によってその作者が知られることがある、等である。
〈2〉 内的な吟味
①現物があれば、書風を見れば、往々その作者が推定される。
ただこの適用の範囲は甚だ狭い。
②言葉およびスタイルによって作者を推定する。
③その記事の内容に手がかりを求める。
その叙述の中から、作者の人物、地位、系統、利害関係、
年齢その他の生活関係を知り得る事があり、
少なくともこれらの一部分が断定できることが少なくない。
******
以上は、75年前の昭和10年刊行、今井登志喜『歴史学研究法』を、
少し手直ししました。
http://1st.geocities.jp/rekisironnsyuu/genndaibunn.siryouhihann.html
現在、誰でも利用できるような史料批判の本がないのは、
誠に遺憾です。
当事者が書いた、当事者が残した、とされるものは、
貴重・最重視とされるがゆえに、かえって偽作・贋作が多かった、
という歴史上の事実を、まず確認しておく必要があります。
秦先生の本p109に第一次史料というのが挙げられていますが、
方法論的に見て、
ここで偽作・贋作の可能性に触れておられないことが、まずは問題です。
これは、秦先生だけに責任をかぶせるわけにはいかない、
歴史学全体、アカデミズム全体、出版界全体の問題だと、私は考えます。
まずは、偽作・贋作ではない、ということを確認する必要があります。
その史料の形式が、他の正しい史料の形式と一致するか。
文書において、紙・墨色・書風・筆意・文章形式・言葉・印章等が、
本物かどうかを確認するのは、最初の手続きです。
井家又一日記は、その点で、重大な疑義が出ました。
これが、南京事件の概説書を書いておられる方に理解されていない、
というのは、私には衝撃でした。
他は推して知るべしということになりますので。
こうなりますと、この日記が、いつ、どこで、誰によって書かれたものか、
確認する必要があります。
その方法については、以下のようになっております。
*****
史料の日時を考察するには、外的な吟味と内的な吟味の、両方を行う。
外的な吟味とは
〈1〉 ある日時の明らかな史料の事が、その史料の中に出て来ることに
よって判断する。
〈2〉 ある日時の明らかな史料の中に、その史料の事が出て来ることに
よって判断する。
〈3〉 共在する、他の時間的関係の知られている史料から判断する。
考古学的遺物等において、この方法の適用の範囲は非常に広い。
〈4〉 時として、技術的関係からの判断による。
たとえば手紙に日付がなくとも、その到着した時がわかっている場合などはそれである。
〈5〉 それが時間の知られている史料の断片であることの考証による。
などを指すのである。
内的な吟味とは
〈1〉 比較研究を行う。すでに日時の明らかにされている他の史料と
外形的特徴、たとえば様式・材料・技術等を比較する。
考古学的遺物の「時」の決定は、多くの場合これが適用される。
〈2〉 文献的な史料等では、特に言葉、スタイル等がおおいに標準となる。文語体でも、時々何か時代を暴露する要素が含まれている。
〈3〉 記録等の場合、その記事の内容に手がかりを求め、
それによって判断を加える。
もとより多くの場合、非常に精密な時間的関係を決定することは不可能である。
しかし、大体の前後の限度を立てる。
すなわち何時より以後、および何時より以前、
を明らかにすることができるだけでも、
その史料の利用におおいに役立つのである。
史料の製作された場所の吟味は、次のような条項が着眼される。
〈1〉 どこで発見されたか、その場所は、その吟味の一つの標準になる。
〈2〉 外的形式。
すなわちその様式、材料、技術等の比較研究がその決定に役立つことは、
日時の吟味の場合と同様である。
〈3〉 言葉およびスタイル。これも日時の場合と同様である。
〈4〉 内容。文献的史料では、記事の内容が往々にして、その製作の場所を示している。
たとえば特にある地方の記事が詳細であったために、
その書かれた所が知られるようなのは、その適例である。
作者の吟味の方法としては、次のような条項が挙げられる。
〈1〉 外的な吟味
①同じ作者の他の史料の中に、明らかにその史料を記してあることがある。
②同時代の他の史料または後世の史料の中に、その史料の作者が出ていることがある。
③作者の符丁、頭文字、または奉呈の人名等によってその作者が知られることがある、等である。
〈2〉 内的な吟味
①現物があれば、書風を見れば、往々その作者が推定される。
ただこの適用の範囲は甚だ狭い。
②言葉およびスタイルによって作者を推定する。
③その記事の内容に手がかりを求める。
その叙述の中から、作者の人物、地位、系統、利害関係、
年齢その他の生活関係を知り得る事があり、
少なくともこれらの一部分が断定できることが少なくない。
******
以上は、75年前の昭和10年刊行、今井登志喜『歴史学研究法』を、
少し手直ししました。
http://1st.geocities.jp/rekisironnsyuu/genndaibunn.siryouhihann.html
これは メッセージ 23238 (nyankotyanndamon さん)への返信です.