「爺の剣」 - (14)
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2008/06/22 23:26 投稿番号: [165829 / 196466]
ジリッ、ジリッと足のつま先で間をつめていきました。爺が間を切ろうと思えば、いくらでもできたはずです。それでも爺は動きません。木刀をダラリと下げたままです。どのくらいたったのでしょうか、いえほんの数十秒であったかもしれません、この間合いなら爺はかわすことも変化することも出来ないと思った瞬間、爺がゆらっと動きました。いえゆらっと前に出ようとしている気配を感じたのです。私は、間髪を入れず、前に出ている左足を滑らせながらさらに大きく踏み出し、「ヤァァ!」という掛け声とともに爺の頭上に木刀を振り下ろしていました。
振り下ろし始めた瞬間、100分の1秒だったかも知れません、「あっ!」とおもいました。動作が起きてしまったので、もう止められません。爺は、私の太刀を右にわずかにかいくぐるように私の懐に入ってくるところでした。その瞬間、私の右手首に激痛が走って、爺の小太刀は私の喉元にぴたりと付きました。そして私の太刀は、いつの間にか上から押さえ込まれ、身動とれません。
「勝負あり、それまで!」
高木師範の声が聞こえました。
すべては一瞬のこと、あっという間の出来事でした。爺のあのスローな動作からは想像もできません。一瞬の流れるような動作でした。爺は、呆然としている私にかまわず、神前に軽く礼をすると道場の奥へ入って行ってしまいました。高木師範がまだ立ちすくんでいる私の小手をはずしてくださり、手首を見ております。真っ赤です。
「ここで待っていなさい」
そういうと師範も道場の奥へ入って行きました。右手首のしびれが治まりません。床に正座し、防具をはずす間も今の爺の技を考えておりました。「乗せられた、誘われてしまったんだわ..」と思いました。あのとき、一足飛びに後退すべきだったのでしょうか? いいえ、あのとき後退すれば、それこそ爺の思うつぼです。
「では、どうすれば..?」
いくら考えてもわかりません。
高木師範が戻ってきて、私の手首に湿布薬を貼ってくださいました。
「あの間合いで、なぜ左足で踏み込んだ?」
「えっ?」
いきなり聞いてきました。
「あの間合では、継ぎ足でもしないかぎり、右足で踏み込むのが自然だと思うが..」
「.....」
「爺の動きを予知しておったのか?」
「いえ、そういう訳ではありません。爺が私の右をすり抜ける気配を感じたのです。それに左足なら右に反応しやすいですから..」
高木師範はすこし考え込むようなそぶりでしたが、
「あの踏み込みでは、紙一重で間を切ることもできる。もう少し打ち込む前の攻防に集中した方がよい。まだまだ雑念が多いな。それでは爺に打ち込めん」
「.....」
「ところで、土曜の朝稽古には来てくれるな?」
「えっ?」
「爺が君に女子の稽古をみてもらいたいと言っておる」
師範は、そう言いながら私の目をじっと見ております。
「何だ? 泣いておるのか?」
「いいえ、泣いてなんかおりません!」
そう言って、キッと高木師範を見つめた目がかすんでおりました。
<続く>
あと2回ぐらいで終わります^^;
振り下ろし始めた瞬間、100分の1秒だったかも知れません、「あっ!」とおもいました。動作が起きてしまったので、もう止められません。爺は、私の太刀を右にわずかにかいくぐるように私の懐に入ってくるところでした。その瞬間、私の右手首に激痛が走って、爺の小太刀は私の喉元にぴたりと付きました。そして私の太刀は、いつの間にか上から押さえ込まれ、身動とれません。
「勝負あり、それまで!」
高木師範の声が聞こえました。
すべては一瞬のこと、あっという間の出来事でした。爺のあのスローな動作からは想像もできません。一瞬の流れるような動作でした。爺は、呆然としている私にかまわず、神前に軽く礼をすると道場の奥へ入って行ってしまいました。高木師範がまだ立ちすくんでいる私の小手をはずしてくださり、手首を見ております。真っ赤です。
「ここで待っていなさい」
そういうと師範も道場の奥へ入って行きました。右手首のしびれが治まりません。床に正座し、防具をはずす間も今の爺の技を考えておりました。「乗せられた、誘われてしまったんだわ..」と思いました。あのとき、一足飛びに後退すべきだったのでしょうか? いいえ、あのとき後退すれば、それこそ爺の思うつぼです。
「では、どうすれば..?」
いくら考えてもわかりません。
高木師範が戻ってきて、私の手首に湿布薬を貼ってくださいました。
「あの間合いで、なぜ左足で踏み込んだ?」
「えっ?」
いきなり聞いてきました。
「あの間合では、継ぎ足でもしないかぎり、右足で踏み込むのが自然だと思うが..」
「.....」
「爺の動きを予知しておったのか?」
「いえ、そういう訳ではありません。爺が私の右をすり抜ける気配を感じたのです。それに左足なら右に反応しやすいですから..」
高木師範はすこし考え込むようなそぶりでしたが、
「あの踏み込みでは、紙一重で間を切ることもできる。もう少し打ち込む前の攻防に集中した方がよい。まだまだ雑念が多いな。それでは爺に打ち込めん」
「.....」
「ところで、土曜の朝稽古には来てくれるな?」
「えっ?」
「爺が君に女子の稽古をみてもらいたいと言っておる」
師範は、そう言いながら私の目をじっと見ております。
「何だ? 泣いておるのか?」
「いいえ、泣いてなんかおりません!」
そう言って、キッと高木師範を見つめた目がかすんでおりました。
<続く>
あと2回ぐらいで終わります^^;
これは メッセージ 165828 (k_g_y_007_naoko さん)への返信です.
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