核軍縮:米ロ核削減努力の顛末(3)
投稿者: etranger3_01 投稿日時: 2003/02/19 14:28 投稿番号: [152703 / 177456]
●ロシア・ミサイル産業の現状と活路
財政が逼迫して国防省からの支払いが滞るなか、周辺のミサイル製造工場などの財政も圧迫され、人々が他工場などに流れることで産業の空洞化が起きています。ロシア政府はもはやミサイル1発を増産する予算もままらない状態で、軍内部でミサイル配備計画を進めても現実的な製造面で予算が出せず、ロシアのミサイル戦略は核削減交渉などなくとも自然に弱体化の一途を辿っています。
番組では、そうした状況の中で戦略ミサイル軍とミサイル産業がとっている資金調達のための苦肉の策を少しだけ紹介しました。それが、以下のような核ミサイルの民需転用およびロケット開発技術活用による商用人工衛星の打ち上げビジネスです。
◇ ◇ ◇
カプスティン・ヤール射場、 11年ぶりに打上げ再開
ロシアの戦略ミサイル軍は、4月28日、ロシア南部のカプスティン・ヤール射場(東経45度48分、北緯48度24分)から2段式ロケットのコスモス−3Mの打上げを行い、ドイツの宇宙物理研究所の衛星「アブリカス(ABRIXAS)」と、衛星の制御システムをテストする目的で開発されたイタリアの「メグサット(MEGSAT)」の商業打上げに成功した。
ソース:(NASDA)http://www.nasda.go.jp/lib/nasda-news/1999/07/joho_j.html
◇ ◇ ◇
ロシア軍はこうした宇宙ビジネスへの参入による外貨獲得により、財政難の戦略ミサイル軍を有効利用して存続させつつ、獲得した資金を軍の近代化に転用するということで活路を見出そうとしました。プーチン大統領が決定した「宇宙軍」の創設も、実際は軍というよりはNASAやNASDAのように商業利用の衛星打ち上げを本格的に展開するためのものなのでしょう。宇宙ビジネスへの投資ならともかく、ロシアには軍需拡大を行なっている財政的余裕はないのです。米国のNMDに対抗する意味での軍の再編成とはいっても、実際は軍縮小及び整理のための人員の再配置と考えたほうが妥当でしょう。しかし現実のところは、ロシアはこの苦肉の策の外貨獲得手段をもってしても、獲得した利益を有効活用できないでいるようです。それは、米国が仕掛けた巧妙な罠に引っかかってしまったからです。
●モスクワ条約の巧妙な罠
2002年5月に米ロの間で締結された戦略核兵器に関する相互核削減条約(モスクワ条約)では、戦略核弾頭の配備数を2012年までに2000発に削減することが合意されていました。このわずか3ページの非常に簡素な条約文書には、その簡素さゆえに多くの抜け穴(というより意図的な手抜き?)がありました。番組が取り上げた、財政難のロシアを苦しめたその抜け穴の1つが、次の項目でした。
「...核弾頭自体、及び運搬手段(ICBM、SLBM等のミサイル本体、爆撃機等)の廃棄は義務付けられておらず、米露両国とも削減した弾頭の保管が可能。」
ソース:外務省公式資料「戦略核兵器の削減に関する条約(モスクワ条約)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/beiro/moscow.html
つまりこの条約は、あくまで配備されている兵器の削減を目的としたもので、その兵器を構成するパーツすなわち核弾頭やミサイル本体、運搬手段などの削減はどこにも義務つけられていなかったのです。
しかし、一見すると双方に甘すぎると思えるこの合意は、実はロシア側にとってのみ大きな負担となることになります。それは、ロシアには実際に配備せずに核弾頭を保管(備蓄)するために必要な予算が捻出できないからです。一方で米国は、この条約を締結後さっそく4,000発の核弾頭を配備削減し、備蓄に回しました。ロシアの40倍の国防予算をもつ米国にとって、これは造作もないことでした。しかし米国の40分の1の国防予算しないロシアにとっては、そのような芸当を真似ることは到底不可能でした。だが条約には署名してしまった。したがって履行義務が生じている。では打開策は?
ロシアができることは、衛星打ち上げビジネスで獲得した外貨を核弾頭の保管予算に充て、さらに米国に核弾頭備蓄のためのノウハウを技術支援してもらうことでした。その間、軍の近代化に向けた外貨の有効活用は凍結されることになります。つまり、向こう10年間に渡り、ロシアは核削減を行なうために持てる予算の大部分を核弾頭の備蓄資金に充てなければならず、その間は軍の近代化も図れずに、表向きは技術支援を行なうために派遣された米国の専門家たちに監視されながら核削減努力を続けなければなりません。ロシアは、財政難を熟知している米国側の戦略にまんまと乗せられてしまった。つまり罠にハメられた
財政が逼迫して国防省からの支払いが滞るなか、周辺のミサイル製造工場などの財政も圧迫され、人々が他工場などに流れることで産業の空洞化が起きています。ロシア政府はもはやミサイル1発を増産する予算もままらない状態で、軍内部でミサイル配備計画を進めても現実的な製造面で予算が出せず、ロシアのミサイル戦略は核削減交渉などなくとも自然に弱体化の一途を辿っています。
番組では、そうした状況の中で戦略ミサイル軍とミサイル産業がとっている資金調達のための苦肉の策を少しだけ紹介しました。それが、以下のような核ミサイルの民需転用およびロケット開発技術活用による商用人工衛星の打ち上げビジネスです。
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カプスティン・ヤール射場、 11年ぶりに打上げ再開
ロシアの戦略ミサイル軍は、4月28日、ロシア南部のカプスティン・ヤール射場(東経45度48分、北緯48度24分)から2段式ロケットのコスモス−3Mの打上げを行い、ドイツの宇宙物理研究所の衛星「アブリカス(ABRIXAS)」と、衛星の制御システムをテストする目的で開発されたイタリアの「メグサット(MEGSAT)」の商業打上げに成功した。
ソース:(NASDA)http://www.nasda.go.jp/lib/nasda-news/1999/07/joho_j.html
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ロシア軍はこうした宇宙ビジネスへの参入による外貨獲得により、財政難の戦略ミサイル軍を有効利用して存続させつつ、獲得した資金を軍の近代化に転用するということで活路を見出そうとしました。プーチン大統領が決定した「宇宙軍」の創設も、実際は軍というよりはNASAやNASDAのように商業利用の衛星打ち上げを本格的に展開するためのものなのでしょう。宇宙ビジネスへの投資ならともかく、ロシアには軍需拡大を行なっている財政的余裕はないのです。米国のNMDに対抗する意味での軍の再編成とはいっても、実際は軍縮小及び整理のための人員の再配置と考えたほうが妥当でしょう。しかし現実のところは、ロシアはこの苦肉の策の外貨獲得手段をもってしても、獲得した利益を有効活用できないでいるようです。それは、米国が仕掛けた巧妙な罠に引っかかってしまったからです。
●モスクワ条約の巧妙な罠
2002年5月に米ロの間で締結された戦略核兵器に関する相互核削減条約(モスクワ条約)では、戦略核弾頭の配備数を2012年までに2000発に削減することが合意されていました。このわずか3ページの非常に簡素な条約文書には、その簡素さゆえに多くの抜け穴(というより意図的な手抜き?)がありました。番組が取り上げた、財政難のロシアを苦しめたその抜け穴の1つが、次の項目でした。
「...核弾頭自体、及び運搬手段(ICBM、SLBM等のミサイル本体、爆撃機等)の廃棄は義務付けられておらず、米露両国とも削減した弾頭の保管が可能。」
ソース:外務省公式資料「戦略核兵器の削減に関する条約(モスクワ条約)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/beiro/moscow.html
つまりこの条約は、あくまで配備されている兵器の削減を目的としたもので、その兵器を構成するパーツすなわち核弾頭やミサイル本体、運搬手段などの削減はどこにも義務つけられていなかったのです。
しかし、一見すると双方に甘すぎると思えるこの合意は、実はロシア側にとってのみ大きな負担となることになります。それは、ロシアには実際に配備せずに核弾頭を保管(備蓄)するために必要な予算が捻出できないからです。一方で米国は、この条約を締結後さっそく4,000発の核弾頭を配備削減し、備蓄に回しました。ロシアの40倍の国防予算をもつ米国にとって、これは造作もないことでした。しかし米国の40分の1の国防予算しないロシアにとっては、そのような芸当を真似ることは到底不可能でした。だが条約には署名してしまった。したがって履行義務が生じている。では打開策は?
ロシアができることは、衛星打ち上げビジネスで獲得した外貨を核弾頭の保管予算に充て、さらに米国に核弾頭備蓄のためのノウハウを技術支援してもらうことでした。その間、軍の近代化に向けた外貨の有効活用は凍結されることになります。つまり、向こう10年間に渡り、ロシアは核削減を行なうために持てる予算の大部分を核弾頭の備蓄資金に充てなければならず、その間は軍の近代化も図れずに、表向きは技術支援を行なうために派遣された米国の専門家たちに監視されながら核削減努力を続けなければなりません。ロシアは、財政難を熟知している米国側の戦略にまんまと乗せられてしまった。つまり罠にハメられた
これは メッセージ 152693 (etranger3_01 さん)への返信です.
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