テロ一年──寛容な社会に戻るには
投稿者: chottomato3 投稿日時: 2002/09/09 00:56 投稿番号: [146929 / 177456]
「私の希望は、いつの日にか、国民の生活が普通に戻ることだ」。ブッシュ大統領が同時多発テロから9日後、国会の演説で語った言葉だ。
「9・11」から1年。米誌の最近の世論調査によると、「普通に戻っていない」と考える米国民が半数を超えた。世界貿易センタービルが倒壊する場面だけではなく、自分たちの住む町の警報サイレンが鳴り響いた経験や、同胞が3千人も殺された国民の衝撃は容易に消えるものではない。
空港で厳しい検査が続いていることに乗客が我慢しているのも、テロを許してはならないという強い決意からだろう。
米憲法には、信教や言論の自由を保障した修正第1条がある。米ファースト・アメンドメント・センターによる同条項に対する国民意識の調査では、「保障する権利の側に行き過ぎている」という意見の比率が1年前の39%から49%に上昇した。テロをきっかけに、自由の尊重ばかりを言っていられなくなった、ということだ。
社会の自由と寛容さは、米国の大きな魅力だった。そこにつけ込まれたという悔しさは、普通の人付き合い、近所付き合いにも、ぎすぎすした空気を忍び込ませ、人種や宗教による隔たりが生まれている。
イスラム教やアラブ系といった理由だけで、調べられたり身柄を拘束されたりする「推定有罪」の人たちが大勢いる、と人権団体は指摘する。政府がトラック運転手や郵便の集配人らから不審者情報を集めるシステムに対しては、「国民に国民をスパイさせるもの」という批判が出ている。
テロの首謀者と見られるビンラディン氏やアルカイダ幹部らの行方がわからず、新たなテロの危険があるうちは仕方がない、というのが多くの国民の気持ちだろう。
しかし、ブッシュ政権が「テロ組織に大量破壊兵器を渡す可能性がある」として、イラクのフセイン政権などを軍事力で倒す道を突き進めば、世界各地で米国に対する反発が強まる可能性は高い。
いま世界には、米国が主導するグローバリゼーションの中で、豊かな国と貧しい国、あるいは豊かな人と貧しい人との格差が広がったとする意見が多い。
テロ組織の根絶をめざすのなら、その土壌にも鍬(くわ)を入れなければならない。国務省が、世界各国から研究者らを招いて「なぜ、米国は嫌われるのか」と問う会議を開いたのは、その一歩になる。
イラク攻撃にかけるブッシュ政権の執念は、頼れるのは自分だけ、という開拓時代に組み込まれた「遺伝子」の発現のようにも見える。しかし、海外はもちろん米国内でも強硬な世論は減ってきている。
内外の世論の変化をみつつ、米国の対テロ戦略は軌道修正すべきではないか。それが、ぎすぎすした社会の空気を入れ替え、寛容な社会を取り戻すことにもつながることを期待したい。
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以上、9月8日asahi.com「社説」より。
「9・11」から1年。米誌の最近の世論調査によると、「普通に戻っていない」と考える米国民が半数を超えた。世界貿易センタービルが倒壊する場面だけではなく、自分たちの住む町の警報サイレンが鳴り響いた経験や、同胞が3千人も殺された国民の衝撃は容易に消えるものではない。
空港で厳しい検査が続いていることに乗客が我慢しているのも、テロを許してはならないという強い決意からだろう。
米憲法には、信教や言論の自由を保障した修正第1条がある。米ファースト・アメンドメント・センターによる同条項に対する国民意識の調査では、「保障する権利の側に行き過ぎている」という意見の比率が1年前の39%から49%に上昇した。テロをきっかけに、自由の尊重ばかりを言っていられなくなった、ということだ。
社会の自由と寛容さは、米国の大きな魅力だった。そこにつけ込まれたという悔しさは、普通の人付き合い、近所付き合いにも、ぎすぎすした空気を忍び込ませ、人種や宗教による隔たりが生まれている。
イスラム教やアラブ系といった理由だけで、調べられたり身柄を拘束されたりする「推定有罪」の人たちが大勢いる、と人権団体は指摘する。政府がトラック運転手や郵便の集配人らから不審者情報を集めるシステムに対しては、「国民に国民をスパイさせるもの」という批判が出ている。
テロの首謀者と見られるビンラディン氏やアルカイダ幹部らの行方がわからず、新たなテロの危険があるうちは仕方がない、というのが多くの国民の気持ちだろう。
しかし、ブッシュ政権が「テロ組織に大量破壊兵器を渡す可能性がある」として、イラクのフセイン政権などを軍事力で倒す道を突き進めば、世界各地で米国に対する反発が強まる可能性は高い。
いま世界には、米国が主導するグローバリゼーションの中で、豊かな国と貧しい国、あるいは豊かな人と貧しい人との格差が広がったとする意見が多い。
テロ組織の根絶をめざすのなら、その土壌にも鍬(くわ)を入れなければならない。国務省が、世界各国から研究者らを招いて「なぜ、米国は嫌われるのか」と問う会議を開いたのは、その一歩になる。
イラク攻撃にかけるブッシュ政権の執念は、頼れるのは自分だけ、という開拓時代に組み込まれた「遺伝子」の発現のようにも見える。しかし、海外はもちろん米国内でも強硬な世論は減ってきている。
内外の世論の変化をみつつ、米国の対テロ戦略は軌道修正すべきではないか。それが、ぎすぎすした社会の空気を入れ替え、寛容な社会を取り戻すことにもつながることを期待したい。
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以上、9月8日asahi.com「社説」より。
これは メッセージ 1 (messages_admin さん)への返信です.
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