対米全面テロ

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米国、裸の一極支配

投稿者: chottomato3 投稿日時: 2002/09/04 12:45 投稿番号: [146783 / 177456]
■米国、裸の一極支配――同時多発テロから1年
  外報部長・亘理信雄

  「ブッシュはどこだ?」。南アフリカでの国連環境開発サミット。議場の近くに、こんな看板が立った。貧困というテロの土壌に取り組むこの会議を米大統領は欠席した。

  その米国では1日、テレビ各局の日曜討論でチェイニー副大統領の最近の演説が、繰り返し流された。「イラクが核兵器を持つようになるまで攻撃するな、というのは大間違いだ」。先制攻撃の示唆である。

  力による関与と、切り捨てと。米国の選択が、「テロ後の世界」の構図を変えている。

  米ロは劇的に接近し、旧ソ連の中央アジアには米軍が初めて駐留するようになった。タリバーン政権を支持してきたパキスタンも、対テロ戦線に加わった。

  イラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は突然、「悪の枢軸」と名指しされた。その矛先をかわそうと、各国は外交を活発化させている。北朝鮮の対日接近も、その一つだろう。

  「『冷戦後』というあいまいな時代が終わった」とエール大のギャディス教授はいう。ソ連消滅後の敵なき時代は去り、国際テロという新たな敵が現れた。見えにくい敵に対し、圧倒的な軍事、経済、技術の力を容赦なく注ぐ時代がきた。

  国連平和維持活動(PKO)などの海外派兵に、発足時には慎重だったブッシュ政権は、先月公表の国防報告で、テロには先制攻撃も辞さないという攻撃的な介入戦略を明記するまでになった。

  「われわれの側につくか、テロリストの側につくか」という世界二分論の裏には、むき出しとも言える単独行動主義がある。それは、テロに限ったことではない。

  ブッシュ政権は、世界の核戦略秩序のかなめだった弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から離脱した。戦争犯罪を裁く常設の国際刑事裁判所については、骨抜き工作に走った。

  一貫しているのは、国益中心の哲学だ。国連や国際的枠組みという多国間主義が陥りやすい妥協の泥沼を徹底して嫌う。国益に沿わなければ、同盟国の意向をも拒む。

  確かに、テロとの関連が明白なアフガニスタン攻撃には40カ国以上が直接、間接に加わった。しかし、これすら「一方的国際主義だった」とカーネギー国際平和財団のシリンシオーニ氏は指摘する。

  実態は、米軍による米国の戦争だった。その後のフィリピンやグルジアへの米軍派遣も、独自の思惑による対テロ戦の拡大だ。冷戦後の「新世界秩序」を旗印に、国連決議を重ねて国際社会を動員した湾岸戦争時の米国の姿は、いまやない。

  米国は「巨大な島国」とも呼ばれ、内向き志向が根強い。冷戦終結の熱狂が消えると、経済的にはグローバル化を主導しながら、国民の関心は自らの安全や繁栄に向かってきた。その内向き論理を、ブッシュ政権は強く体現する。

  米国は「イラク攻撃」を通じて、「裸の一極支配」を強めかねない。その疑念が、対テロ戦線に亀裂を生んでいる。

  「パレスチナやアフガンの秩序再建が先だ」「新たな国連決議による国際社会の合意が必要だ」。独仏をはじめ欧州の同盟国の間では、自己防衛の「力の正義」を振りかざし、国際秩序全体への関与という「大義」を忘れたかのような超大国への反発が強い。

  国際テロと戦うには、広範な連携が必要だ。しかし、米政権は、同時多発テロとともに膨らんだかに見えた国際協調の機運を生かさなかった。

  1年がたち、むしろ一極構造の危うさが浮かび上がる。


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(以上、今日の asahi.com「総合面」より)http://www.asahi.com/paper/front.html#PG10319
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