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時計

投稿者: pimentword 投稿日時: 2002/03/04 12:50 投稿番号: [137335 / 177456]
  残り時間は7分になった。世界の終末までの時間である。核戦争の危機を警告する「核の時計」の針が先月末、9分前から2分進められたのだ。核戦争が午前0時に起きると想定しての科学者の警告だ。

  久しぶりにドストエフスキーの小説『白痴』を手に取った。処刑を待つ囚人の話があるはずだ。あれは「何分前」のことだったか、と思いながら、しかし、最初の列車の場面から引き込まれてずるずる読み進む。

  探していたくだりは、主人公のムイシュキン公爵の長広舌のなかに知人の男の経験として出てくる。男が処刑される前の5分間のことだ。男は最後の5分を三つに分けた。最初の2分で友だちに別れを告げる。次の2分間は自分のことを考える。最後の1分をまわりの風景を見るのにあてよう、と。

  男にとって、その5分間は莫大(ばくだい)な財産のような気がしたそうだ。苦しかったのは次のような想念だったという。「もし命を取りとめたらどうだろう」。そうしたら1分、1分を100年のように大事にして……と考えていくと逆に激しい憤りに変わっていった。

  そうやって話しているのだから、男は助かったのだった。ぎりぎりで特赦の通知が届いた。これは作家ドストエフスキー本人の経験としても有名な話だ。

  我ら「終末まで7分」である。男の5分間に比べて人類はさらに2分の余裕がある。しかも、かの男と決定的に違うのは、人類は自分たちの力で延命もできるということだ。

  「終末」からものごとを考えてみる。そうすると世界が少し違って見えるかもしれない。

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