対米全面テロ

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理性の声聞かぬアメリカ(1)

投稿者: chottomato2 投稿日時: 2002/02/08 16:24 投稿番号: [134670 / 177456]
【マサチューセッツ工科大教授   ジョン・W・ダワー氏   】
  1938年、米・ロードアイうンド州生まれ。アマースト大卒業。一時、金沢の女子短期大学で英語を教えたことなどで、文学から日本の戦前、戦後史に関心が移る。帰国後、ハーバード大で日本の歴史を研究し博士号取得。カリフォルニア大などを経て、現職。著書『人種偏見』(86年)では全米批評家協会賞。『敗北を抱きしめて』で、ピュリツアー賞(00年)、第1回大佛次郎論壇賞特別賞。
・・・・・三浦陽一(中部大教授)訳


■進歩に絶望する9月11日以後

  今日の世界は、暴力と不安に満ちている。それがこの悲観的態度の主たる原因であることは言うまでもない。もっとも、荒涼とした未来ばかりが目につくのは、今にはじまったことではない。20世紀には、科学技術による大量殺戮(さつりく)という、あたらしい「野蛮」が出現した。そしてはじまったばかりの今世紀もまた、不吉な予感をただよわせている。平和と繁栄よりも、はてしない混乱のほうが、はるかにあり得る未来である。

  しかし他方で、道徳は進歩し、生活も改善するのだという信念も、20世紀には広く存在した。ある者にとって、それは社会主義や共産主義の理想のことであり、ソ運や人民中国こそ「社会正義」の推進者であった。そしてその理想は、事実によっで無残に裏切られていった。
  他の多くの人々にとっては、第2次世界大戦中とその直後に連合国側が発表した文書が、進歩の希望の最高の表現であった。ドイツでのニュルンベルク裁判や日本の指導者を裁いた東京裁判は、「平和に対する罪」「人道に対する罪」をかかげ、国際法がこれらの罪を裁く新しい時代に入ったのだと喧伝(けんでん)した。政治家たちは国際紛争を平和的に解決する地球規模のフォーラムとして国際連合を設立し、1948年、国連は「世界人権宣言」を採択した。国連事務総長のアナン氏は、この宣言を「人間の進歩の度合いを計測する物差し」と呼んでいる。

  ヒロシマとナガサキでの驚くべき大破壊の実態が人類に知られるようになれば、世界の軍縮や核兵器の解体も加速されるだろう ---- - 第2次世界大戦の直後には、短期間ながら、そうした期待がふくらんだことさえあった。

  冷戦が、そうした期待や理想を掘り崩し、打ち壊したことは、誰もが知っている。しかし冷戦の間も、政治の賢明なリーダーシップや民衆の運動があれば、もっと公正で平等な世界がつくれるのだという信念が消え去ることはなかった。私の国アメリカの例でいえば、50年代と60年代には、公民権運動と女性差別撤廃運動という二つの運動が出現し、合衆国を真に民主的といえる社会へと近づけるのに貢献したのであった。

  私の場合、社会問題に目覚めたのは、60年代後半から70年代前半、アメリカがインドシナ半島ですべてを破壊するかのような戦争をおこない、それに対して草の根の反対運動が起こった時であった。当時、反戦運動を大きくしたものは、この戦争には勝てないという「現実主義」よりも、むしろ心の底からの遺徳的な怒りであったと私は思う。ベトナム、カンボジア、ラオスをあわせたインドシナ半鳥での戦争の死者は、推定で200万人から300万人と思われるが、その大部分はアメリカの軍事力によってもたらされた死である。

  インドシナ半島での戦争は現代の「野蛮」のひとつの例であり、これにたいする反戦運動は、この野蛮を克服し「進歩」を実現しようとした努力の例であったといえよう。
  われわれアメリカ人が今おこなっている戦争は、これとは大きく異なっている。今回は、人道に対する無法な犯罪をおこなった、国家なきテロリストたちが相手である。「9月11日」の恐ろしい光景によって心を傷つけられ、深い悲しみをかかえたアメリカは、かつてなく団結している。米国の歴史でこれに匹敵するものといえば、ただひとつ、60年前に日本が真珠湾を攻撃したためにアメリカがひとつになった、あの愛国の怒りだけであろう。

  では、その今、なぜ人は進歩への絶望を抱くというのか?

  おそらく、その答えは二重である。一つは、アメリカの政治権力は9月11日の事件とその後の戦争によって巨大な権力を手にしたが、それはパウエル国務長富のような少数の例外を除いて、アメリカの政治勢力のうち最も保守的で右翼的な部分を代表する政権だからである。そして二つには、この戦争がアメリカ人の心に極端な国家主義的感情をかきたてたこと、しかもそのアメリカが、今やライバルのいない巨大国家にほかならないからである。



・・・・・(2)に続く→
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