ICC:冤罪の一例に学ぶICCの欠陥
投稿者: etranger3_01 投稿日時: 2002/01/16 16:07 投稿番号: [130703 / 177456]
●デュープロセスの問題
ICCの歴史は国連と同じくらい古く、その発足は冷戦などの世界体制のなかで今日(今夏発足予定)まで陽の目を見ていませんでした。しかし歴史が古い分、過去半世紀にわたってその青写真が描かれつづけてきたICC体制は、1998年のローマ条約採択にともなって法規程が起草され、その後今日に至るまで国連の準備会合で改定作業が進められています。準備会合では日本の法律家を含む世界の法曹界の頭脳が結集し、人類最古の概念から最新の法体制を作り上げようと日夜努力が続けられています。
しかし、どれだけ体制を固めても、法は常に発展途上で不完全であるという宿命にあります。まして、そこに法だけではなくその法を施行するためのデュープロセス(正当な法手続き)上の問題が重なれば、法自身が未完であるということの上に、その施行上の問題が重なり、法自体の有効性が疑問視されてしまいます。今回のイギリスでの冤罪の発覚は、法に関してはまさに大ベテランであるイギリス法制下においても、そういったデュープロセス上の問題点が存在することを明らかにしました。
むろん、今回の事件では州警察側の規則違反が問題となったことで有罪判決が破棄されたので、規則違反がなされていなかったらこのような事件も起こっていなかったであろうと結論付けることは容易です。つまり、捜査手続き(これもデュープロセス)上の規則違反さえなければ捜査は別の方向に向かっていた「かも」しれず、実際の犯人が逮捕されダウニング氏と同様の有罪判決を受けていた「かも」しれないわけです。しかし、こうした「かも」は許されるのでしょうか?先ほどは冗談まじりに「カムバック青春」などとのたまいましたが、齢45にして政府から高額の補償金(賠償金ではないのか?)を得たとしても、ダウニング氏の失われた時間は取り戻すことができないのです。これはどこの国の冤罪事件においても同じことでしょう。「失われた時間」――現行法ではこれに対し高額の補償金によってしか償うことができないのでしょうか。
●国際性の問題
これと同様のことが国際レベルで発生したら?この可能性は否定できません。ICCの検察局がいくら世界中の優秀な人材からなり、慎重に練り上げられた行動規範(規則)に従って捜査を進めたとしても、なんらかの要素の働きによってこれが歪められて今回のような冤罪事件に発展する可能性は否定できないのです。この場合、これはICCという国際司法的な立場から国際問題へと発展します。むろん、人権に関しても、国際的な人権問題となります。その場合の補償は?これは国際的な、しかも莫大な金額を伴う賠償問題となるでしょう。その場合、ICCにその賠償金を支払う能力はあるのでしょうか?国際社会はこういったケースが発生した場合に、どのように互いに協力・補完しあって問題を収容できるのでしょうか?このような状況における対応についても、ICC規程に盛り込まれるか、別途国際賠償負担分担条約(仮)のようなものを加盟国間で締結する必要があるかもしれません。ゆえに、現行規程ではこうしたデュープロセス上の欠陥が懸念されると私は考えます。ダウニング氏に対しては不謹慎な物言いですが、今回のイギリスでの事件はICCのこうした懸念材料を浮き彫りにする良い機会だったと思います。
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訳/文責: etranger3_01(連絡/詳細は上記の投稿者名からどうぞ)
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ICCの歴史は国連と同じくらい古く、その発足は冷戦などの世界体制のなかで今日(今夏発足予定)まで陽の目を見ていませんでした。しかし歴史が古い分、過去半世紀にわたってその青写真が描かれつづけてきたICC体制は、1998年のローマ条約採択にともなって法規程が起草され、その後今日に至るまで国連の準備会合で改定作業が進められています。準備会合では日本の法律家を含む世界の法曹界の頭脳が結集し、人類最古の概念から最新の法体制を作り上げようと日夜努力が続けられています。
しかし、どれだけ体制を固めても、法は常に発展途上で不完全であるという宿命にあります。まして、そこに法だけではなくその法を施行するためのデュープロセス(正当な法手続き)上の問題が重なれば、法自身が未完であるということの上に、その施行上の問題が重なり、法自体の有効性が疑問視されてしまいます。今回のイギリスでの冤罪の発覚は、法に関してはまさに大ベテランであるイギリス法制下においても、そういったデュープロセス上の問題点が存在することを明らかにしました。
むろん、今回の事件では州警察側の規則違反が問題となったことで有罪判決が破棄されたので、規則違反がなされていなかったらこのような事件も起こっていなかったであろうと結論付けることは容易です。つまり、捜査手続き(これもデュープロセス)上の規則違反さえなければ捜査は別の方向に向かっていた「かも」しれず、実際の犯人が逮捕されダウニング氏と同様の有罪判決を受けていた「かも」しれないわけです。しかし、こうした「かも」は許されるのでしょうか?先ほどは冗談まじりに「カムバック青春」などとのたまいましたが、齢45にして政府から高額の補償金(賠償金ではないのか?)を得たとしても、ダウニング氏の失われた時間は取り戻すことができないのです。これはどこの国の冤罪事件においても同じことでしょう。「失われた時間」――現行法ではこれに対し高額の補償金によってしか償うことができないのでしょうか。
●国際性の問題
これと同様のことが国際レベルで発生したら?この可能性は否定できません。ICCの検察局がいくら世界中の優秀な人材からなり、慎重に練り上げられた行動規範(規則)に従って捜査を進めたとしても、なんらかの要素の働きによってこれが歪められて今回のような冤罪事件に発展する可能性は否定できないのです。この場合、これはICCという国際司法的な立場から国際問題へと発展します。むろん、人権に関しても、国際的な人権問題となります。その場合の補償は?これは国際的な、しかも莫大な金額を伴う賠償問題となるでしょう。その場合、ICCにその賠償金を支払う能力はあるのでしょうか?国際社会はこういったケースが発生した場合に、どのように互いに協力・補完しあって問題を収容できるのでしょうか?このような状況における対応についても、ICC規程に盛り込まれるか、別途国際賠償負担分担条約(仮)のようなものを加盟国間で締結する必要があるかもしれません。ゆえに、現行規程ではこうしたデュープロセス上の欠陥が懸念されると私は考えます。ダウニング氏に対しては不謹慎な物言いですが、今回のイギリスでの事件はICCのこうした懸念材料を浮き彫りにする良い機会だったと思います。
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これは メッセージ 130686 (etranger3_01 さん)への返信です.
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