暴力の前に言葉・音楽は無力か・・・(1)
投稿者: chottomato2 投稿日時: 2002/01/08 00:32 投稿番号: [129468 / 177456]
世界を震かんさせた昨年9月11日の米同時多発テロ事件は、一人ひとりの世界観、さらには言葉や音楽それ自体の存在意義という、根源的で重い問いを突きつけた。
【詩人 長田 弘さん】
「深く感じる」こと必要 蘇らせる力、言葉は持つ
【音楽家 坂本龍一さん】
共存・共生こそ真の平和 音楽の価値、存在自体に
---- 9月11日、事件の第一報をどこで聞き、その瞬間に何を思いましたか。
【坂本】 あの日はニューヨークのグリニッチビレッジの自宅にいて、「ドーン」という音を聞いたんです。何げなくテレビをつけたら、 WTC(世界貿易センター)ビルが炎上している。これは大変なことになったと思って慌てて自分の家の屋根にのぼった。間近にモクモクと巨大な黒い煙が見えて、居ても立ってもいられなくなって、カメラをひっつかんで大きな道に走りました。ひざがガクガク震えるような恐怖を感じながら、必死になって何が起こっているのかを考えようとしたがわからない。実際にあのビルの炎上を肉眼で見てもあまりに超現実的でなかなか信じられなかった。
【長田】 東京の自宅でテレビを見ていて、まさにその瞬間を同時に見ました。けれども、その一瞬後から、もうテレビはその一瞬のリプレー(繰り返し)の連続になった。現場にはリプレーはない。そこが決定的に違う。実際に起こったことの「聖なる一回性」というのが、リプレーの連続によって、あっという間にテレビから失われていった。テレビを通して私たちは現場に立ち会うことができるんだという神話は終わったと思う。
【坂本】 あの日はとても晴れていて、なかなかいい空だったんです。今でも、ものすごく生々しく記憶に残っていて、あれ以来、青空が怖くなった。青空を見ると恐怖を覚える。たぶん、この恐怖は一生消えないと思っているんですが、そういう恐怖はテレビでは伝わらない。
【長田】 歴史には二つあると思う。「ファスト・ヒストリー」(手っ取り早い歴史)と「スロー・ヒストリー」(ゆっくりと見えてくる歴史)です。今は「ファスト・ヒストリー」が世を席巻しているように見えるけれど、「ファスト・ヒストリー」がもたらすのは結局、成り行き。人びとの生きる日々をつくるのは「スロー・ヒストリー」です。今、切実に問われているのは、一番大切なのは何だという問いただしだと思う。
【坂本】 「ファスト・ヒストリー」「スロー・ヒストリー」というのはいい言葉ですね。たぶんそのことと関係があるんでしょうが、今回、あらゆるメディアの質がいろいろな面で問われていると思います。事件の翌日から、どういう背景があるんだろう、今後世界はどうなっていくんだろうと、頭の中で一生懸命、自分の生き死にの問題として知ろうとするわけですが、テレビや新聞からはそういう重要な情報があまり得られない。こういうことがあると、我々がいかに真実というものにアクセスするのが難しいかを感じてがく然としました。一方、インターネットにはいろんな情報や説が飛びかっているけれど、どれが真実でどれが誤報なのかがわからない。
◇ ◇ ◇
【長田】 テロというのは、象徴を破壊するんです。では今度のテロが破壊したのは、どんな象徴だったのか。崩壊したWTCは「アメリカ経済の象徴」みたいに語られた。しかし、WTCに託された象徴は本来は違うものでした。WTCの建物はどこか柔らかな印象をそなえていましたが、設計家が、あのツインタワーのモデルとしたのは実は、イスラム文明の非常に巧緻を極めた美しさを持つアルハンブラ宮殿の見張り塔のツイン・タワーでした。19世紀アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが、「アルハンブラ物語」という本で、サラセン的なものとゴート的なものの著しい混在がいかに魅力的な美しさをと物語を生むかを書いて、アルハンブラ宮殿は有名になった。宗教は信仰です。信仰は純粋を求める。でも文明を活かすものは純粋ではなくて、混在であり交流です。美しさを活かすものも。
【坂本】 手あかのついた言葉かもしれないけれど、共存、あるいは共生。それが真の平和でしょう。宗教が違えば考え方も違う人たちが一緒に住む。それが本当の平和で、考え方の違う人間を皆殺しにしても平和は訪れない。
【詩人 長田 弘さん】
「深く感じる」こと必要 蘇らせる力、言葉は持つ
【音楽家 坂本龍一さん】
共存・共生こそ真の平和 音楽の価値、存在自体に
---- 9月11日、事件の第一報をどこで聞き、その瞬間に何を思いましたか。
【坂本】 あの日はニューヨークのグリニッチビレッジの自宅にいて、「ドーン」という音を聞いたんです。何げなくテレビをつけたら、 WTC(世界貿易センター)ビルが炎上している。これは大変なことになったと思って慌てて自分の家の屋根にのぼった。間近にモクモクと巨大な黒い煙が見えて、居ても立ってもいられなくなって、カメラをひっつかんで大きな道に走りました。ひざがガクガク震えるような恐怖を感じながら、必死になって何が起こっているのかを考えようとしたがわからない。実際にあのビルの炎上を肉眼で見てもあまりに超現実的でなかなか信じられなかった。
【長田】 東京の自宅でテレビを見ていて、まさにその瞬間を同時に見ました。けれども、その一瞬後から、もうテレビはその一瞬のリプレー(繰り返し)の連続になった。現場にはリプレーはない。そこが決定的に違う。実際に起こったことの「聖なる一回性」というのが、リプレーの連続によって、あっという間にテレビから失われていった。テレビを通して私たちは現場に立ち会うことができるんだという神話は終わったと思う。
【坂本】 あの日はとても晴れていて、なかなかいい空だったんです。今でも、ものすごく生々しく記憶に残っていて、あれ以来、青空が怖くなった。青空を見ると恐怖を覚える。たぶん、この恐怖は一生消えないと思っているんですが、そういう恐怖はテレビでは伝わらない。
【長田】 歴史には二つあると思う。「ファスト・ヒストリー」(手っ取り早い歴史)と「スロー・ヒストリー」(ゆっくりと見えてくる歴史)です。今は「ファスト・ヒストリー」が世を席巻しているように見えるけれど、「ファスト・ヒストリー」がもたらすのは結局、成り行き。人びとの生きる日々をつくるのは「スロー・ヒストリー」です。今、切実に問われているのは、一番大切なのは何だという問いただしだと思う。
【坂本】 「ファスト・ヒストリー」「スロー・ヒストリー」というのはいい言葉ですね。たぶんそのことと関係があるんでしょうが、今回、あらゆるメディアの質がいろいろな面で問われていると思います。事件の翌日から、どういう背景があるんだろう、今後世界はどうなっていくんだろうと、頭の中で一生懸命、自分の生き死にの問題として知ろうとするわけですが、テレビや新聞からはそういう重要な情報があまり得られない。こういうことがあると、我々がいかに真実というものにアクセスするのが難しいかを感じてがく然としました。一方、インターネットにはいろんな情報や説が飛びかっているけれど、どれが真実でどれが誤報なのかがわからない。
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【長田】 テロというのは、象徴を破壊するんです。では今度のテロが破壊したのは、どんな象徴だったのか。崩壊したWTCは「アメリカ経済の象徴」みたいに語られた。しかし、WTCに託された象徴は本来は違うものでした。WTCの建物はどこか柔らかな印象をそなえていましたが、設計家が、あのツインタワーのモデルとしたのは実は、イスラム文明の非常に巧緻を極めた美しさを持つアルハンブラ宮殿の見張り塔のツイン・タワーでした。19世紀アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが、「アルハンブラ物語」という本で、サラセン的なものとゴート的なものの著しい混在がいかに魅力的な美しさをと物語を生むかを書いて、アルハンブラ宮殿は有名になった。宗教は信仰です。信仰は純粋を求める。でも文明を活かすものは純粋ではなくて、混在であり交流です。美しさを活かすものも。
【坂本】 手あかのついた言葉かもしれないけれど、共存、あるいは共生。それが真の平和でしょう。宗教が違えば考え方も違う人たちが一緒に住む。それが本当の平和で、考え方の違う人間を皆殺しにしても平和は訪れない。
これは メッセージ 1 (messages_admin さん)への返信です.
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