対米全面テロ

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第三世界の絶望見ない米(1)

投稿者: enomoto0072 投稿日時: 2001/10/28 17:43 投稿番号: [107652 / 177456]
久間十義「第三世界の絶望見ない米」
『北海道新聞』10月28日付朝刊

○米同時テロに客が拍手
米中枢同時テロ以降、私たちの住む世界のコンテクスト(文脈)は一変したらしい。あの日を境に戦争の二十世紀は終わり、国家対テロ集団による勝者なきテロリスムの反復が始まった、というのが大方の見方のようだ。

この種の時代認識に対して、さかしらな言葉を弄するつもりはない。だが、世界貿易センターに旅客機が突っ込んだ直後の、一種、後先を考えない「やった!」という感覚と、空爆以後の反米・厭米的な気分を思うとき、新しい世界で独り勝ちのアメリカに対して、一言いっておきたい誘惑に駆られるのは、私だけではないだろう。

というのも私はあの夜、たまたまある酒場にいて同時テロのニュースを知ったが、期せずしてその瞬間、酔客たちの中から拍手が起こったのをこの耳にしたからである。むろんその拍手は、無辜の人間がテロで死ぬことに対する拍手ではなかった。それは、リストラだ何だと、これ以上は耐えられぬほど不況と構造改革の「痛みを分かって」いて、自分を勝ち組とは考えられない中年の客たちが、酒の勢いで強者(勝ち組)のアメリカに対し、刹那的に留飲を下げた拍手のように思われた。

いや、もちろん、この種の意趣返し的気分を、イスラム原理主義が生まれてくる第三世界の絶望や憤りと同一視するのは短絡であり、軽率というものだろう。でも、強い者の主張が正義とみなされ、弱い者が悪者扱いされる現実を思うとき、わかってはいても人はそんな心情に簡単に傾く。ヤクザ映画の、我慢に我慢を重ねたあげくの怒りの出入りと、現実を二重写しにしてしまうのだ。

○無理通す勝ち組の北米
じっさい勝ち組と負け組の差は尋常ではない。いい例が炭疸菌騒ぎだ。バイオ・テロが疑われたこの騒動で、炭疽病の治療薬「シプロ」を製造するドイツのバイエル社は、カナダ政府に二十万錠を無償供与し、米政府にも通常の卸売価格より約60%安い値段で同薬を販売しはじめた。

「緊急事態」を理由に特許を無視し、「シプロ」のコピー薬を作ろうとしたカナダやアメリカの圧力にバイエルが屈した形だが、無理が通れば道理ひっこむといった北米の事態にひきかえ、第三世界のエイズ治療コピー薬利用に関する先進国の態度はどうだろう?   アフリカでのエイス禍に業を煮やした非政府組織(NGO)「国境なき医師団」がインド製コピー薬のウガンダでの無償配布を計画。さらにコピー薬が希望する途上国に格安で輸出されそうな事態に、欧米が特許侵害で世界貿易機関(WTO)への提訴に出たのは、だれもが知る事実だろう。

炭疽病が北米にとって国家的な緊急事態ならば、年間三百万人以上が死亡するエイズは、アフリカやアジア、南米などの被害国にとって、存亡にすらかかわる緊急事態のはずである。それなのに金満の勝ち組には無償供与に六割引き、貧乏な負け組には裁判ざたじゃ、まったく割が合わない。
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