イスラエル/パレスチナ和平

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撃たれた理由がない

投稿者: suiheisen2002 投稿日時: 2002/07/03 19:41 投稿番号: [4030 / 20008]
「キャンプに兵隊が入ったぞ!」だれかの叫ぶ声。
通りの人々が一斉に逃げ惑う。カーレド(29)もすぐに息子の手を取った。
二人は、いったん小さな路地に身を隠した後、再び大通りに出て
走り出した。息子アハマド(9)を先に、自分は背後を守るようにして。
イスラエル兵が、ライフルの引き金を絞る。
アハマドは、走りながら「ヤアバ(父さん)!」と叫んだ。
が、後ろにいるはずの父の声がしない。止まって振り返った。
父はもう倒れていた。「アハメド、アハメド…」
やっと、うめくように息子を呼ぶ声。アハメドは泣き出していた。

「もし夫が武装組織のメンバーで、銃を持って戦っていたというのだったら、
死は受け入れられる」とオラ(妻)は言う。「もし自爆者だったら、
あきらめもつく」と、兄のルトフィ(34)はうつむく。無論、どちらでもない。
カーレドは、どんな時も仕事を休まない、ただの働き者だった。

侵入した兵士は、あっさり去った。銃撃は、カーレドを撃ち抜いた
一発だけだった。兵士は、子供に投石され、怒って気まぐれに
侵入したのだ、という人もいる。だが、なぜ撃ったのか、真相はわからない。

ニュースにもならなかった。この日、メディアは、現地入りしていた
パウエル米国務長官の和平仲介の動きを追うのに忙しかった。
パレスチナにあるのは、メディアが世界銃に伝える自爆の「死」や、
軍事作戦の結果としての「死」だけではない。理不尽に積み重なっていく、
おびただしい「数字」としての死。その一つずつに、立ちすくむ家族がいる。

                           7/3中日新聞   テロと家族より
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