ソウル16
投稿者: k_g_y_7_234 投稿日時: 2006/11/14 21:01 投稿番号: [6692 / 73791]
舞い上がる土誇りの中で二人の身体が宙にもんどりうつのが見えた。とっさに、儂は彼らに向かって飛び出しておった。後から部下達も走ってきたが、二人とも地面にころがったまま動かん。山下は血だらけで、両足がももからない。腹からは腸がはみだしておる。ヤシ林まで運んだが、山下は即死。相方はとみると、頭皮が垂れさがって真っ白な頭蓋骨がむき出しなっており、片足はあらぬ方向に反り返っておった。
儂が駆け寄ったとき、山下にはまだ意識があった。
「あばあ〜」(お袋お〜)
山下は、儂をギロッと見るなりそうかすかに叫んだような気がしたが、すぐにぐったりとなった。だが、血と土だらけの顔の目は見開いたままである。
古参兵達は山下の腹から飛び出した腸を垂れ下がらんように手ぬぐいで押さえながら、ヤシ林に運んだが、ダメであった。相方は、意識はあったが、頭皮の一部が垂れ下がっていて、白い頭蓋骨がむき出しで、片脚はあらぬ方向に反り返っておった。ゲートルごとズボンを切り裂いたが、血まみれの脚からは骨が飛び出しておって、グシャグシャであった。
このときになって、儂は我に返った。敵機を見たが、すでに沖合の方へ去っていくところであった。敵愾心で全身が震えるのが分かった。
間もなく、また爆音が近づいてきた。敵の戦闘機が1機、後方から低空をよたよた飛んでくる。その後をもう1機がぴたりと付いている。本隊を爆撃した帰りのようであるが、機体に損傷は見えんから、どうやら操縦士が負傷しているらしい。そのすぐ後で、もう1機がエスコートしておるようであった。
突然、我が方の対空機関銃音が聞こえた。エスコート機は機首を上げたが尾翼に命中した。それでもかまわず上昇を続けていたが、じきに失速し、ゆっくりとキリモミしながら落ちてきた。途中で落下傘が開いた。命令するまでもなく部下たちの何人かがすぐに降下地点めざして走った。部下たちはやることが早い。やがてもう1機は、沖合で水柱を上げて墜落した。
我隊の戦死は、山下一人である。重傷者は、山下の相方と対空機関銃手を含めて三名。応急処置の後、すぐに本隊へ運んで手当するよう命じた。
そうしている間に、捜索に出た兵のひとりが儂を呼びに来た。米兵を捕まえたが負傷していて、とりあえず現場から近い隣の隊まで連行したという。しかし、隣の隊には満足に英語が話せる者がいないからといって、呼びに来たのである。米兵への復讐心に燃えて部下と隣の隊へ急いだ。
三十代半ばの米兵で、目の下が腫れ上がっており、相当に殴られたようである。座った状態でヤシの幹に後手にくくりつけられ、長い両脚を地面に投げ出していたが、しきりに英語でわめき散らしている。眼光は鋭いが、明らかにおびえていた。顔面には他にもすり傷がいくつかあり、血糊がこびりついていた。部下は、ヤシの木に落下傘が引っかかって宙づりになっているところを打ち落として捕まえたと言った。
彼はやってきた儂を睨み付けながらなおもわめき続けていた。儂が英語で一言話しかけると、意外な顔をしてわめくのをやめ、代わりに儂をジッと見据えはじめた。理知的な顔をしておる。尋問すると、今度は貝のように押し黙る。この面魂からみて、尉官でもかなり上、大尉クラスであろうと思われた。そのとき、部下が小さな郵便封筒を儂に手渡した。この男の所持品であるという。
中から手紙と一緒に写真が一枚出てきた。二人の初老の男女、若い女、そして小さな男子と女子が写っている。おそらく彼の家族であろう。顔立ちにも、服装にも、背後の家具にも、気品と格調が感じられる。この男は良家の出らしい。山下の無惨な戦死で復讐に燃えていた心が、この写真を見て不思議となえてしまった。
「他にこの男の所持品は?」
「いえ、今のところこれだけであります」
「周りを探したのか?機体は?」
「目下捜索中であります、はい」
別に命令せんでも、古参兵達は手回しがよい。
米兵は、ガンとして口を開かなかったが、捕虜として扱う旨告げると、やっと安心したらしく、手当にも素直に応じた。しかし、両足首をひどく痛めておるらしく、歩行できないという。やがて捜索していた部下たちが帰ってきて、見つけたという破れた紙片数枚を儂に差し出すと、見ていた米兵の顔色が一瞬変わった。彼が乗っていたのは新鋭機らしいと部下のひとりが報告した。すぐにその部下を本隊へ送り、指示を待つ間、彼を抱えるようにしてやっと我隊まで連れてきた。
米兵を見た古参兵達は、すぐに殺気立った。
爺
では、孫娘が帰ってきたから今夜はこれにて御免。
儂が駆け寄ったとき、山下にはまだ意識があった。
「あばあ〜」(お袋お〜)
山下は、儂をギロッと見るなりそうかすかに叫んだような気がしたが、すぐにぐったりとなった。だが、血と土だらけの顔の目は見開いたままである。
古参兵達は山下の腹から飛び出した腸を垂れ下がらんように手ぬぐいで押さえながら、ヤシ林に運んだが、ダメであった。相方は、意識はあったが、頭皮の一部が垂れ下がっていて、白い頭蓋骨がむき出しで、片脚はあらぬ方向に反り返っておった。ゲートルごとズボンを切り裂いたが、血まみれの脚からは骨が飛び出しておって、グシャグシャであった。
このときになって、儂は我に返った。敵機を見たが、すでに沖合の方へ去っていくところであった。敵愾心で全身が震えるのが分かった。
間もなく、また爆音が近づいてきた。敵の戦闘機が1機、後方から低空をよたよた飛んでくる。その後をもう1機がぴたりと付いている。本隊を爆撃した帰りのようであるが、機体に損傷は見えんから、どうやら操縦士が負傷しているらしい。そのすぐ後で、もう1機がエスコートしておるようであった。
突然、我が方の対空機関銃音が聞こえた。エスコート機は機首を上げたが尾翼に命中した。それでもかまわず上昇を続けていたが、じきに失速し、ゆっくりとキリモミしながら落ちてきた。途中で落下傘が開いた。命令するまでもなく部下たちの何人かがすぐに降下地点めざして走った。部下たちはやることが早い。やがてもう1機は、沖合で水柱を上げて墜落した。
我隊の戦死は、山下一人である。重傷者は、山下の相方と対空機関銃手を含めて三名。応急処置の後、すぐに本隊へ運んで手当するよう命じた。
そうしている間に、捜索に出た兵のひとりが儂を呼びに来た。米兵を捕まえたが負傷していて、とりあえず現場から近い隣の隊まで連行したという。しかし、隣の隊には満足に英語が話せる者がいないからといって、呼びに来たのである。米兵への復讐心に燃えて部下と隣の隊へ急いだ。
三十代半ばの米兵で、目の下が腫れ上がっており、相当に殴られたようである。座った状態でヤシの幹に後手にくくりつけられ、長い両脚を地面に投げ出していたが、しきりに英語でわめき散らしている。眼光は鋭いが、明らかにおびえていた。顔面には他にもすり傷がいくつかあり、血糊がこびりついていた。部下は、ヤシの木に落下傘が引っかかって宙づりになっているところを打ち落として捕まえたと言った。
彼はやってきた儂を睨み付けながらなおもわめき続けていた。儂が英語で一言話しかけると、意外な顔をしてわめくのをやめ、代わりに儂をジッと見据えはじめた。理知的な顔をしておる。尋問すると、今度は貝のように押し黙る。この面魂からみて、尉官でもかなり上、大尉クラスであろうと思われた。そのとき、部下が小さな郵便封筒を儂に手渡した。この男の所持品であるという。
中から手紙と一緒に写真が一枚出てきた。二人の初老の男女、若い女、そして小さな男子と女子が写っている。おそらく彼の家族であろう。顔立ちにも、服装にも、背後の家具にも、気品と格調が感じられる。この男は良家の出らしい。山下の無惨な戦死で復讐に燃えていた心が、この写真を見て不思議となえてしまった。
「他にこの男の所持品は?」
「いえ、今のところこれだけであります」
「周りを探したのか?機体は?」
「目下捜索中であります、はい」
別に命令せんでも、古参兵達は手回しがよい。
米兵は、ガンとして口を開かなかったが、捕虜として扱う旨告げると、やっと安心したらしく、手当にも素直に応じた。しかし、両足首をひどく痛めておるらしく、歩行できないという。やがて捜索していた部下たちが帰ってきて、見つけたという破れた紙片数枚を儂に差し出すと、見ていた米兵の顔色が一瞬変わった。彼が乗っていたのは新鋭機らしいと部下のひとりが報告した。すぐにその部下を本隊へ送り、指示を待つ間、彼を抱えるようにしてやっと我隊まで連れてきた。
米兵を見た古参兵達は、すぐに殺気立った。
爺
では、孫娘が帰ってきたから今夜はこれにて御免。
これは メッセージ 6682 (k_g_y_7_234 さん)への返信です.