ソウル6
投稿者: k_g_y_7_234 投稿日時: 2006/11/02 21:36 投稿番号: [5749 / 73791]
キムの報告書は、ありきたりであった。
「君は、これを私にどうしろというのかね? 君から直接会長や他の役員に具申することではないのか、違うか?」
キムの身分でこのような企画を具申すれば、まだ古い韓国では、天地がひっくりかえるほど革命的なシステムかも知れん。だから、それなりの抵抗も当然多く、キムの身分でこのような企画を具申すること自体、出るクギは打たれるかのごとく、経営者一族の反感を買うおそれがあった。それでも、わざと意地悪くつっぱねてみた。案の定、キムは青ざめた。
やがて決心したのか、
「もし私の企画によいところがあるとお認めいただけるのであれば、K社をそのようにご指導いただきたいと思い、貴方様にこうしてお会いしにきたのです..」
彼は、ハンカチを取り出すと額からあふれ出る汗をしきりに拭いては、懇願するような目で私を見つめた。もう11月の肌寒い季節であるのにである。
「君の大学の専攻は何かな?」
私のこの質問に、キムは一瞬キョトンとしておったが、
「法律です。法学部です。でも、K社に入ってからは経営管理学を勉強してきました」
キムは、例の目で私をジッと見据えていた。
「このような管理システムは、我が社からも当然指導しておると思うが?」
「ええ、でもその場しのぎで三月と持ちません。抵抗が強くて、徹底できないないのです。またもとの状態に戻ってしまいます」
キムは、また額の汗を拭いた。
私は、企画書の最後の部分に書かれていた「海外への飛躍」という部分に注目した。
「日本以外の国との取り引きとは、何か目安でもあるのかね?」
キムは、当惑しておったが、
「いえ、まだ何の目安もありません。ですが、これからは絶対に必要なことだと考えています」
当然といえば当然である。
「よし、わかった。近いうちに責任ある者を貴社に派遣しよう」
キムの目が輝いた。そしてキムは、
「カムサムニダ、カムサムニダ、カムサムニダ...」
何度も礼を言った。
「ところで今夜は、泊まるところがあるのかね?」
「ええ、同郷の知り合いが日本にいます。そこに泊まります。どうかお気遣いなく..」
そう言うと、キムはどうか会長には内密にといって帰って行った。
同族が支配するK社で、一族ではない、それも田舎大学出のキムが、たとえ会長が味方についたとしても、意固地な一族の中にあってこれを実践するのは至難なことに思えたし、親族間の争いになるかも知れんとも思った。しかし、キムの企画書の「海外への飛躍」を読んだとき、私に一計が思い浮かんだ。大した取り引きにはならんだろうが、私の友人のドイツ企業家との取り引きである。我が社とは競合せんから、またこのドイツ企業は、経営がしっかりしておったから、フォローさえ手抜かりなければK社の海外飛躍、いやキムの実業家としての修行と誰もが認めざるを得ない実績につながろうと考えた。
数週間後、我が社の担当役員と北村をK社に派遣した。北村は、長期駐在である。ドイツ企業との取り引きはキムに任せることを条件として出した。当のドイツ企業の社長と根回しが済んだ後のことである。その後、紆余曲折はあったものの、これはK社のヨーロッパ進出の足がかりとなり、巨大市場である米国進出のきっかけともなった。私はまもなくM社を退いたが、北村とキムの連携プレーでK社は徐々に成長したらしい。そして現在、キムは会長一族をはじめ、主要株主から信頼されるCEOになった。今、中国市場に傾注しておるという。キムのあの土下座から、二十数年が経過しておった。
車は、漢江のほとりをソウルに向かってひたすら走っている。
爺
「君は、これを私にどうしろというのかね? 君から直接会長や他の役員に具申することではないのか、違うか?」
キムの身分でこのような企画を具申すれば、まだ古い韓国では、天地がひっくりかえるほど革命的なシステムかも知れん。だから、それなりの抵抗も当然多く、キムの身分でこのような企画を具申すること自体、出るクギは打たれるかのごとく、経営者一族の反感を買うおそれがあった。それでも、わざと意地悪くつっぱねてみた。案の定、キムは青ざめた。
やがて決心したのか、
「もし私の企画によいところがあるとお認めいただけるのであれば、K社をそのようにご指導いただきたいと思い、貴方様にこうしてお会いしにきたのです..」
彼は、ハンカチを取り出すと額からあふれ出る汗をしきりに拭いては、懇願するような目で私を見つめた。もう11月の肌寒い季節であるのにである。
「君の大学の専攻は何かな?」
私のこの質問に、キムは一瞬キョトンとしておったが、
「法律です。法学部です。でも、K社に入ってからは経営管理学を勉強してきました」
キムは、例の目で私をジッと見据えていた。
「このような管理システムは、我が社からも当然指導しておると思うが?」
「ええ、でもその場しのぎで三月と持ちません。抵抗が強くて、徹底できないないのです。またもとの状態に戻ってしまいます」
キムは、また額の汗を拭いた。
私は、企画書の最後の部分に書かれていた「海外への飛躍」という部分に注目した。
「日本以外の国との取り引きとは、何か目安でもあるのかね?」
キムは、当惑しておったが、
「いえ、まだ何の目安もありません。ですが、これからは絶対に必要なことだと考えています」
当然といえば当然である。
「よし、わかった。近いうちに責任ある者を貴社に派遣しよう」
キムの目が輝いた。そしてキムは、
「カムサムニダ、カムサムニダ、カムサムニダ...」
何度も礼を言った。
「ところで今夜は、泊まるところがあるのかね?」
「ええ、同郷の知り合いが日本にいます。そこに泊まります。どうかお気遣いなく..」
そう言うと、キムはどうか会長には内密にといって帰って行った。
同族が支配するK社で、一族ではない、それも田舎大学出のキムが、たとえ会長が味方についたとしても、意固地な一族の中にあってこれを実践するのは至難なことに思えたし、親族間の争いになるかも知れんとも思った。しかし、キムの企画書の「海外への飛躍」を読んだとき、私に一計が思い浮かんだ。大した取り引きにはならんだろうが、私の友人のドイツ企業家との取り引きである。我が社とは競合せんから、またこのドイツ企業は、経営がしっかりしておったから、フォローさえ手抜かりなければK社の海外飛躍、いやキムの実業家としての修行と誰もが認めざるを得ない実績につながろうと考えた。
数週間後、我が社の担当役員と北村をK社に派遣した。北村は、長期駐在である。ドイツ企業との取り引きはキムに任せることを条件として出した。当のドイツ企業の社長と根回しが済んだ後のことである。その後、紆余曲折はあったものの、これはK社のヨーロッパ進出の足がかりとなり、巨大市場である米国進出のきっかけともなった。私はまもなくM社を退いたが、北村とキムの連携プレーでK社は徐々に成長したらしい。そして現在、キムは会長一族をはじめ、主要株主から信頼されるCEOになった。今、中国市場に傾注しておるという。キムのあの土下座から、二十数年が経過しておった。
車は、漢江のほとりをソウルに向かってひたすら走っている。
爺
これは メッセージ 5747 (k_g_y_7_234 さん)への返信です.