ソウル54
投稿者: k_g_y_7_234 投稿日時: 2006/11/02 21:19 投稿番号: [5747 / 73791]
この若いキム某は、体格もよく、どことなくおっとりしておったが、目には野性的な鋭さと私に噛みつくような野心が見られた。まるで私に敵愾心でも抱いているかのようである。私の剣道の弟子たちにもこのような目の若者たちがおったが、その後皆強くなっておる。指導を間違えれば、道にそれて邪悪になるか、私に敵対する、そんな若者に見えた。
社の担当者から聞いた情報によると、このキム某は、韓国の田舎の大学を出ると、仕事を求めてK社の運転手をやっていた叔父をたよってソウルに上京してきたそうである。しかし、田舎の二流大学卒ということでK社の選考にもれ、警備員のアルバイトをしておったとのこと。が、その後ふとした縁でK社の会長の目に止まり、会長付きの運転手兼雑用係となった。その後、公私にわたり会長夫婦に献身し、やがて会長夫婦の認めるところとなって、秘書付きになったとのことである。
この男には、会長もどうやら気兼ねなく素顔を見せておったに違いない。ならば、K社の裏事情にも詳しかろう、そう直感した。だから、この男の土下座にも、他の役員が動揺するのを抑えてほっておいた。当の会長は、この男の突然の行動にうろたえ、絶句しておったが、結果はこの男の突発的な行動がK社を救ったのである。いや、救ったわけではないが、もう少し様子をみようということになった。
しかし、会長の親族にすっかり牛耳られておるK社で一介のよそ者の若い男がいくら力んでみたところでたかが知れておる。ムキになればなるほど一族役員連中からは村八分にされるかも知れん。何ヶ月たっても、K社の経営と業績改善の話しは聞こえてこんかった。担当役員は、「韓国人は扱いずらい」としか言わん。
そんなある日、キムがひとりで日本の私を訪ねて来た。あらかじめ彼から電話があったから土曜日の夜ではあったが、会うことにした。聞くと会長にも内緒で自費できたから、明日には帰るという。そして「まだ、お約束が果たせなくてまことに申し訳ありません」とよくわからん日本語で深々と私に頭を下げた。一介の秘書社員がまるでK社を背負って立っているような言い方である。私との約束がそうさせておるようであった。彼が私に書類を渡すから、「何かな?」と聞くと、「生意気なようですが、私が作成した企画書です。どうかご一考くだい。もうしばらくお取引を続けさせてください」と言った。企画書は、英語でしたためてあった。実にたよりない英語である。
「これは、君の英語か?」
「ええ、すみません。日本語が書けません..、ですから..」
企画書は、我々にとってはまったくあたりまえの内容である。多くの日本企業が、それもかなり前から採用しておる、だれでも知っている経営と品質管理システムが記載されておった。すなわち、裏を返せばこのようなシステムすらK社にはなく、またK社を指導する立場にある我が社にも問題がある、ということを言いたいらしい。キムは、それとなく私にそのことを言いにきたのである。勿論、クビを覚悟の上であろう。私に面と向かって自社と我が社を批判することは、一介の秘書の分際で出過ぎた行為であるから、暗に私に悟らせようとしておるようだ。もし、そうならば、多少腹も立ったが、この男は私が見込んだとおりの男、見込みがある、そう思った。
社の担当者から聞いた情報によると、このキム某は、韓国の田舎の大学を出ると、仕事を求めてK社の運転手をやっていた叔父をたよってソウルに上京してきたそうである。しかし、田舎の二流大学卒ということでK社の選考にもれ、警備員のアルバイトをしておったとのこと。が、その後ふとした縁でK社の会長の目に止まり、会長付きの運転手兼雑用係となった。その後、公私にわたり会長夫婦に献身し、やがて会長夫婦の認めるところとなって、秘書付きになったとのことである。
この男には、会長もどうやら気兼ねなく素顔を見せておったに違いない。ならば、K社の裏事情にも詳しかろう、そう直感した。だから、この男の土下座にも、他の役員が動揺するのを抑えてほっておいた。当の会長は、この男の突然の行動にうろたえ、絶句しておったが、結果はこの男の突発的な行動がK社を救ったのである。いや、救ったわけではないが、もう少し様子をみようということになった。
しかし、会長の親族にすっかり牛耳られておるK社で一介のよそ者の若い男がいくら力んでみたところでたかが知れておる。ムキになればなるほど一族役員連中からは村八分にされるかも知れん。何ヶ月たっても、K社の経営と業績改善の話しは聞こえてこんかった。担当役員は、「韓国人は扱いずらい」としか言わん。
そんなある日、キムがひとりで日本の私を訪ねて来た。あらかじめ彼から電話があったから土曜日の夜ではあったが、会うことにした。聞くと会長にも内緒で自費できたから、明日には帰るという。そして「まだ、お約束が果たせなくてまことに申し訳ありません」とよくわからん日本語で深々と私に頭を下げた。一介の秘書社員がまるでK社を背負って立っているような言い方である。私との約束がそうさせておるようであった。彼が私に書類を渡すから、「何かな?」と聞くと、「生意気なようですが、私が作成した企画書です。どうかご一考くだい。もうしばらくお取引を続けさせてください」と言った。企画書は、英語でしたためてあった。実にたよりない英語である。
「これは、君の英語か?」
「ええ、すみません。日本語が書けません..、ですから..」
企画書は、我々にとってはまったくあたりまえの内容である。多くの日本企業が、それもかなり前から採用しておる、だれでも知っている経営と品質管理システムが記載されておった。すなわち、裏を返せばこのようなシステムすらK社にはなく、またK社を指導する立場にある我が社にも問題がある、ということを言いたいらしい。キムは、それとなく私にそのことを言いにきたのである。勿論、クビを覚悟の上であろう。私に面と向かって自社と我が社を批判することは、一介の秘書の分際で出過ぎた行為であるから、暗に私に悟らせようとしておるようだ。もし、そうならば、多少腹も立ったが、この男は私が見込んだとおりの男、見込みがある、そう思った。
これは メッセージ 5742 (k_g_y_7_234 さん)への返信です.