ユギオII - その32
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/09 20:16 投稿番号: [55344 / 73791]
投稿者:大介&直子
<その32>
武原首相は、官邸から程近い公館で榊原を待っていた。
榊原老人が部屋に入ると、武原は席を立って出迎えた。
「申し訳ありません、突然お呼び立ていたしまして..」
「いや、なに..」
榊原は、わざと不機嫌そうにして見せた。そんな榊原にまるで無頓着なように、武原は榊原にソファに座るよう促した。見ると、武原の顔色はどことなくすぐれず、疲労感が漂っている。「あまり寝てないようだな..」と、榊原は思った。
「実は、今回の北朝鮮の話があまりにも突飛でして..、どうしたものかと..」
武原は、こう切り出すと、苦慮する素振りを見せた。
「ま、ありえないことではないな。だからそのつもりで準備だけはしておいた方がよいと思うが..」
「ええ、昨夜、在日米軍からですが、カン老人の息子の情報は信頼できそうだとの連絡がありました。それで危機管理室の勝俣を急遽カン老人に会わせたのですが、カン老人はどうしても私に会いたいということで..。ま、榊原先生からのご助言もありましたから、会って話を聞いてみたのですが..、いやぁ、驚きましたなぁ。もしこのようなことが実際に起こるとしたら、大変なことですよ。それで、勝俣をすぐ韓国に派遣しました。ご存知ですよね、勝俣を..」
「まあ、二、三度会ったかな..」
武原は、時計をチラッと見ると、
「ちょうど今から李大統領に会っていることでしょう...」
武原は、途方にくれている素振りであった。しかし、榊原には分かっていた。武原のこのようなもの言いは、決まって人にものを頼むときであった。
「それで、なんじゃ、ワシに頼みごとでもあるのかな? この老いぼれに、隠居老人なんぞに頼まんでも、他に人はなんぼでもおるじゃろ?」
すると武原は、照れ笑いを浮かべた。
「いやいや、まいりましたな。すっかりお見通しですな。あはははは..」
武原は、急に真顔になると、榊原に身を乗り出した。
「先生、カン老人はあなた様だけを信じているようです。私にすら何か隠しているような気がします。これでは、先が思いやられますが..」
「ん? 先が思いやられるとな?」
「ええ、勝俣をカン老人の担当にと考えたのですが、カン老人と勝俣はどうやら肌が合わないようです。勝俣は切れる男ですが、切れすぎて、まるで妖刀のような男ですからね。心が許せないのかも知れません」
榊原は「ふむ、カンのやつ何が何でもワシを担ぎ出したいらしい..」と察した。他に人選を考えてみたが、三枝をカンの息子に貼り付けた今、すぐには適任者が思い浮かばなかった。
「先生、これは、我が国の外交力が問われる重大事だと考えます。どう転んでもです..」
「ん、どう転んでもか?」
「ええ」
「ほう..」
「ですから、極秘裏に、それも至急に、防衛省はじめ、外務省やその他部署から使える人材を、それも精鋭を集め、特別タスクフォースを編成したいと思いますが、どうですかね? 何といっても時間がありません」
「どうですかねって、ワシに聞いておるのか?」
武原は、この榊原の質問には答えず、さらに話を続けた。
「韓米両国の大統領と密接な連携を取らなければならないことはもちろんですが、平行して中国の胡政権との根回しも重要になりましょう。どうやら、北の親中派は人民解放軍の江派の介入を期待しているように思われます。これで胡が孤立してしまうと一気に中国の介入となり、中国政権内部も激変するかも知れません。最悪は冷戦の再来となるかも知れません。今の中国の事情では、まだまだ北朝鮮の西側化は許さないでしょうからな。それと、これが一番肝心なのですが、最後はロシアの出方にかかると考えますが..」
「ふむ..」
榊原は、考え込むように空を仰いだ。そんな榊原を見透かしたかのように武原はソファから立ち上がると、榊原のそばに来て深々と頭を下げ、
「先生、この通りです。どうか今一度私に先生のお力を貸してください..」
と言った。
<その32>
武原首相は、官邸から程近い公館で榊原を待っていた。
榊原老人が部屋に入ると、武原は席を立って出迎えた。
「申し訳ありません、突然お呼び立ていたしまして..」
「いや、なに..」
榊原は、わざと不機嫌そうにして見せた。そんな榊原にまるで無頓着なように、武原は榊原にソファに座るよう促した。見ると、武原の顔色はどことなくすぐれず、疲労感が漂っている。「あまり寝てないようだな..」と、榊原は思った。
「実は、今回の北朝鮮の話があまりにも突飛でして..、どうしたものかと..」
武原は、こう切り出すと、苦慮する素振りを見せた。
「ま、ありえないことではないな。だからそのつもりで準備だけはしておいた方がよいと思うが..」
「ええ、昨夜、在日米軍からですが、カン老人の息子の情報は信頼できそうだとの連絡がありました。それで危機管理室の勝俣を急遽カン老人に会わせたのですが、カン老人はどうしても私に会いたいということで..。ま、榊原先生からのご助言もありましたから、会って話を聞いてみたのですが..、いやぁ、驚きましたなぁ。もしこのようなことが実際に起こるとしたら、大変なことですよ。それで、勝俣をすぐ韓国に派遣しました。ご存知ですよね、勝俣を..」
「まあ、二、三度会ったかな..」
武原は、時計をチラッと見ると、
「ちょうど今から李大統領に会っていることでしょう...」
武原は、途方にくれている素振りであった。しかし、榊原には分かっていた。武原のこのようなもの言いは、決まって人にものを頼むときであった。
「それで、なんじゃ、ワシに頼みごとでもあるのかな? この老いぼれに、隠居老人なんぞに頼まんでも、他に人はなんぼでもおるじゃろ?」
すると武原は、照れ笑いを浮かべた。
「いやいや、まいりましたな。すっかりお見通しですな。あはははは..」
武原は、急に真顔になると、榊原に身を乗り出した。
「先生、カン老人はあなた様だけを信じているようです。私にすら何か隠しているような気がします。これでは、先が思いやられますが..」
「ん? 先が思いやられるとな?」
「ええ、勝俣をカン老人の担当にと考えたのですが、カン老人と勝俣はどうやら肌が合わないようです。勝俣は切れる男ですが、切れすぎて、まるで妖刀のような男ですからね。心が許せないのかも知れません」
榊原は「ふむ、カンのやつ何が何でもワシを担ぎ出したいらしい..」と察した。他に人選を考えてみたが、三枝をカンの息子に貼り付けた今、すぐには適任者が思い浮かばなかった。
「先生、これは、我が国の外交力が問われる重大事だと考えます。どう転んでもです..」
「ん、どう転んでもか?」
「ええ」
「ほう..」
「ですから、極秘裏に、それも至急に、防衛省はじめ、外務省やその他部署から使える人材を、それも精鋭を集め、特別タスクフォースを編成したいと思いますが、どうですかね? 何といっても時間がありません」
「どうですかねって、ワシに聞いておるのか?」
武原は、この榊原の質問には答えず、さらに話を続けた。
「韓米両国の大統領と密接な連携を取らなければならないことはもちろんですが、平行して中国の胡政権との根回しも重要になりましょう。どうやら、北の親中派は人民解放軍の江派の介入を期待しているように思われます。これで胡が孤立してしまうと一気に中国の介入となり、中国政権内部も激変するかも知れません。最悪は冷戦の再来となるかも知れません。今の中国の事情では、まだまだ北朝鮮の西側化は許さないでしょうからな。それと、これが一番肝心なのですが、最後はロシアの出方にかかると考えますが..」
「ふむ..」
榊原は、考え込むように空を仰いだ。そんな榊原を見透かしたかのように武原はソファから立ち上がると、榊原のそばに来て深々と頭を下げ、
「先生、この通りです。どうか今一度私に先生のお力を貸してください..」
と言った。