ユギオII - その17
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/04 21:09 投稿番号: [55076 / 73791]
投稿者:拓
<その17>
カンとの待ち合わせは、午前10時であった。
院長室で待つ榊原老人のもとにカンは看護婦に案内されて時間通りに来た。車椅子の顔はかなり頬がこけ、顔色も蒼白であったが、室内に一瞬目配せした眼光は鋭かった。どことなく気品が漂う年の頃30前後の女がカンの車椅子を押していた。榊原老人が目配せすると、院長はカンを案内した看護婦と部屋から出て行った。カンは、無言のまま榊原老人を見据えていた。榊原もカンを見据えていた。その昔、宿敵同士であった記憶がよみがえっていたのである。まもなく、榊原はカンに付き添ってきた女に視線を向けた。なかなか端整で理知的な顔立ちであった。
「紹介します、私の孫娘です。私の手足となって尽くしてくれている大事な孫娘です。おかげさまで孫に恵まれましてなあ..、ははは..」
そういうカンを榊原は無言で見つめていた。
「先生、時間がありませんから、要点をお話しいたましょう」
カンは、盗聴器でも探るかのような目つきでまた室内を見渡した。
「ん?
何も心配することはない。ここの院長はワシの娘の亭主じゃ」
老人がそう言うと、カンはやっと安心したらしく、背後の女になにやら目配せした。女は上着の中から一枚の紙きれを取り出すと、榊原に渡した。
そこには、日本海に面した北朝鮮の港の名と時間が記されていた。
<続く>
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