「爺の剣」 - 4
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/19 22:16 投稿番号: [50099 / 73791]
投稿者:直子
「まさか...」
私は鏡の向こうの私を爺に見たて、昨夜の試合を実戦さながらに再現してみました。何度か繰り返す内に、ハッとしました。
打ち込む前に打ち気が一瞬早く出ているのです。爺はこれを読んでいたに違いありません。それに下段の構えは、正眼の構えに対して近間になればなるほど対応が後手になり不利です。私は爺が前へ出てくる圧迫感から、まだ爺が反応できる間合い、すなわち早めに反応していたようです。爺のあの足さばきもくせ者です。竹刀剣道の足さばきではありません。何年か前、たった一度だけ偶然に見た爺の演武をイメージしていました。
「おう早いな、もう来ておったか」
高木師範でした。いつからそこにいたのでしょうか、道場の奥で私を見ていたようです。まったく気配を感じませんでした。まもなく奥の戸が開いて爺も入ってきました。昨夜同様、私をチラリと見ただけで、正座すると面を着けはじめています。
私は、昨夜と同じように遠間で竹刀を爺の中心に構えました。爺の構えはやはり同じ下段の変則です。爺はダラリと構えたまま、出てきません。私から徐々に間を詰めました。一足一刀の間合いから、さらに私はジリッと間合いを詰めてみました。昨夜、私が先に反応した間合いになりました。面金の奥の爺の目がじいっと私を見ています。いいえ、私の心を読み取ろうとしているようでした。
この間合いでは、一瞬の迷いが命取りになります。私は全神経を集中させてさらに間合いを詰めてみました。すると、爺の竹刀がすうっと上がってきて、私の竹刀にすりよってきます。私は打ち込む絶好の機会を逃しましたが、爺の手の内を探ることが目的ですから、かまわずさらに間合いを詰めようとすると、逆に爺が私の出頭を捉えてすっと出てきました。竹刀が絡み、私も爺も打てません。つばぜり合いになった瞬間に、私は引き面から引き小手を出して一足飛びに後退し、すぐに正眼に構えました。私の引き技は、爺にはまったく通用しませんでしたが、爺は昨夜のようには出てきませんでした。その代わり、爺は正眼に構えたのです。
正眼に構えた爺からは、高段者との試合で感じるような鋭い気が、一瞬でしたが飛んできました。私は、遠間から一足一刀の間合いに詰めようとしましたが、詰められません。わずかに剣先が触れ合う間合いで爺の様子をうかがいました。機を見てすっと入って見ましたが、「あっ!」と思って一足飛びに後退しました。今度は、鋭く払ってみましたが、打ち込めません。爺の心の動きが見えないのです。
昨夜の爺の反応から、この間合いから打ち込むのは自殺行為に思えました。普通なら、相手は必ずいつか打ってきます。打ってくればそこにスキが見えます。でも爺は、正眼に構えたまま微動だにしません。
私は、爺の演武のような足さばきで、斜め左右前方にわずかに移動して見ました。すると爺の剣先が私の中心を追いかけるようにかすかに左右に動きます。いわゆる心の起こり、動作の起こりです。
私は、左足を斜め左前方にすうっと出して見ました。その時です、爺の剣先が私の中心に合わせて動く気配を感じた瞬間、右足で鋭く突っ込みながら爺の竹刀の中程を右に小さく払い上げ鋭く右小手に行きました。爺は鍔もとでしのぎましたが、私はかまわずそのまま突き、爺がわずかにのけぞったところを一気に面に行きました。でも、私の打ちは爺の面がねをかすっただけでした。私は、勢いのあまり道場の羽目板に激突してしまいました。爺はと見ると、右手に竹刀をダラリと下げて私を見ています。
「ほう...」
爺がそうつぶやいたように聞こえました。
でも、同じ手は二度と通用しませんでした。「強い!」と思いました。そんなとき、爺が初めて面を打ってきました。まるでスローモーションでも見ているかのような面でしたが、私は金縛りあったように身動きが取れません。やっとのことで竹刀で受けましたが、反撃できませんでした。
もう10分は、経っていたと思います。爺の心が一瞬迷っているように見えたのです。その瞬間、私は無意識のうちに爺の面に飛び込んでおりました。喉に激痛が走り、私は道場の床にいやというほど後頭部を強打し、呼吸が出来なくなりました。
<続きはまた明日^^;>
「まさか...」
私は鏡の向こうの私を爺に見たて、昨夜の試合を実戦さながらに再現してみました。何度か繰り返す内に、ハッとしました。
打ち込む前に打ち気が一瞬早く出ているのです。爺はこれを読んでいたに違いありません。それに下段の構えは、正眼の構えに対して近間になればなるほど対応が後手になり不利です。私は爺が前へ出てくる圧迫感から、まだ爺が反応できる間合い、すなわち早めに反応していたようです。爺のあの足さばきもくせ者です。竹刀剣道の足さばきではありません。何年か前、たった一度だけ偶然に見た爺の演武をイメージしていました。
「おう早いな、もう来ておったか」
高木師範でした。いつからそこにいたのでしょうか、道場の奥で私を見ていたようです。まったく気配を感じませんでした。まもなく奥の戸が開いて爺も入ってきました。昨夜同様、私をチラリと見ただけで、正座すると面を着けはじめています。
私は、昨夜と同じように遠間で竹刀を爺の中心に構えました。爺の構えはやはり同じ下段の変則です。爺はダラリと構えたまま、出てきません。私から徐々に間を詰めました。一足一刀の間合いから、さらに私はジリッと間合いを詰めてみました。昨夜、私が先に反応した間合いになりました。面金の奥の爺の目がじいっと私を見ています。いいえ、私の心を読み取ろうとしているようでした。
この間合いでは、一瞬の迷いが命取りになります。私は全神経を集中させてさらに間合いを詰めてみました。すると、爺の竹刀がすうっと上がってきて、私の竹刀にすりよってきます。私は打ち込む絶好の機会を逃しましたが、爺の手の内を探ることが目的ですから、かまわずさらに間合いを詰めようとすると、逆に爺が私の出頭を捉えてすっと出てきました。竹刀が絡み、私も爺も打てません。つばぜり合いになった瞬間に、私は引き面から引き小手を出して一足飛びに後退し、すぐに正眼に構えました。私の引き技は、爺にはまったく通用しませんでしたが、爺は昨夜のようには出てきませんでした。その代わり、爺は正眼に構えたのです。
正眼に構えた爺からは、高段者との試合で感じるような鋭い気が、一瞬でしたが飛んできました。私は、遠間から一足一刀の間合いに詰めようとしましたが、詰められません。わずかに剣先が触れ合う間合いで爺の様子をうかがいました。機を見てすっと入って見ましたが、「あっ!」と思って一足飛びに後退しました。今度は、鋭く払ってみましたが、打ち込めません。爺の心の動きが見えないのです。
昨夜の爺の反応から、この間合いから打ち込むのは自殺行為に思えました。普通なら、相手は必ずいつか打ってきます。打ってくればそこにスキが見えます。でも爺は、正眼に構えたまま微動だにしません。
私は、爺の演武のような足さばきで、斜め左右前方にわずかに移動して見ました。すると爺の剣先が私の中心を追いかけるようにかすかに左右に動きます。いわゆる心の起こり、動作の起こりです。
私は、左足を斜め左前方にすうっと出して見ました。その時です、爺の剣先が私の中心に合わせて動く気配を感じた瞬間、右足で鋭く突っ込みながら爺の竹刀の中程を右に小さく払い上げ鋭く右小手に行きました。爺は鍔もとでしのぎましたが、私はかまわずそのまま突き、爺がわずかにのけぞったところを一気に面に行きました。でも、私の打ちは爺の面がねをかすっただけでした。私は、勢いのあまり道場の羽目板に激突してしまいました。爺はと見ると、右手に竹刀をダラリと下げて私を見ています。
「ほう...」
爺がそうつぶやいたように聞こえました。
でも、同じ手は二度と通用しませんでした。「強い!」と思いました。そんなとき、爺が初めて面を打ってきました。まるでスローモーションでも見ているかのような面でしたが、私は金縛りあったように身動きが取れません。やっとのことで竹刀で受けましたが、反撃できませんでした。
もう10分は、経っていたと思います。爺の心が一瞬迷っているように見えたのです。その瞬間、私は無意識のうちに爺の面に飛び込んでおりました。喉に激痛が走り、私は道場の床にいやというほど後頭部を強打し、呼吸が出来なくなりました。
<続きはまた明日^^;>
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.